J1新潟の選手、指導者、フロント、裏方さんをインタビューする企画「アルビを支える人たち」(随時掲載)をスタートします。第1回はデータ面で支える分析担当の池沢波空テクニカルコーチ(25)。独自の視点と映像分析ツールを駆使して対戦相手の弱点を見抜く。若きアナリストに、試合に勝つ偵察術や仕事のやりがい、16位からの上位ジャンプアップへのポイントを聞いた。チームは6月1日、アウェーで首位FC町田ゼルビア撃破を狙う。
-間もなくリーグ戦は折り返しだが
「勝ちを取りこぼす、もったいない試合が多かった。失点を減らし、どうゴールを奪っていくか。攻守両面を改善して勝ち星を増やしたい」
-勝利を重ねるには
「ゴール手前まではボールを運べる。あとは最後3分の1への進入と精度。映像、データを用いて個人戦術にもアプローチし、日々の練習、試合に活用してほしい」
-分析は1人で
「チームと選手個々の振り返り、対戦相手の分析、試合のフィードバックなどがある。森田テクニカルコーチらと連携しながら進め、最終判断は僕がします」
-相手の分析方法は
「勝ち負けなど、さまざまなシチュエーションで7、8試合は見る。クリアにしないと気が済まない性格で周りからはよく完璧主義者といわれる。分析結果をスタッフ、選手に落とし込む時は編集映像と各種データを併用しながら『こういう傾向にある』と伝えています」
-アナリストとして大切にしていることは
「ミーティングはポイントを絞ってコンパクトに。限られた時間の中でどう伝えるか。説得力のある言葉のチョイスが重要です」
-志したキッカケは
「高校時代の外部コーチで分析にたけている方がいた。個別に教えてもらったり、一緒にJリーグを見に行ったり。身近にそういう方がいたことは大きかったです」
-5月は過密日程。6月も公式戦8試合が控える
「連戦中は普段2日かけて行う仕事を1日でやったり、同時進行したり。今は人間には戻れなさそうなほど忙しいです(笑い)」
-試合前のウオーミングアップ時に対戦チームをよく観察しているが
「メンバーリストの並びと、攻撃練習の立ち位置に違いはないかなど。先入観は持たずフラットな目線で見ますが、控え選手を含めたボールタッチの癖やテーピングを巻いている位置なども情報として集めます」
-試合中はスタンドからベンチとインカムをつないで情報を共有するのか
「そうです。アウェー戦では左耳にイヤホンを付けて(ベンチの)小倉コーチと連携し、新潟に残って映像を見ている達さん(田中コーチ)と右耳で携帯電話をつなぎ、僕の主観や映像で確認してもらいたいことなどを相談しながら助けてもらっています」
-今節対戦する町田をどう見る
「相手が嫌なことを徹底してやってくる。やるべき事がはっきりとしていて、交代選手を含めて全員が共通意識を持ったチームです」
-勝利のカギは
「たくさんあるが一番はセカンドボールの回収。前前線の選手が前から追ってロングボールを100%防げればいいが、全て蹴らせないことは厳しい。相手の良さを引き出さないためにも、いつも通りにボール保持率を上げ、相手の攻撃回数を減らしたいですね」
-攻撃のルートはどう奪う
「ウイークは見つけているが内緒(笑い)。外と中央。幅を使いながら、奥行きも出して行ければ相手が嫌がる攻撃はできる」
-いい準備はできているか
「週初めの段階で、スタッフ陣と話し合った内容と選手たちの目線が自然と一致していた。いい練習はできています」
-町田には元新潟の赤野分析担当コーチ(22、23年)と栗本コーチ(20、21年)が在籍する
「連戦でも手を抜かない2人だった。分析する上で同じ目を持っている部分もある。特に赤野さんには何度も言われたが、監督を納得させ、意思決定の後押しをすることは強く意識している」
-新潟をよく知る先輩方は丸裸にしているはず
「うちも丸裸にできるような仕事をしているし、新潟は分析されて良さが消されてしまうような選手たちではない。勝機はうちにあります」
◆池沢波空(いけざわ・なみと)1998年(平10)11月25日生まれ、神奈川県藤沢市出身。3歳上の兄の影響でサッカーを始める。鵠沼中から長野・創造学園高(現松本国際高)に進学し左サイドバックとして活躍。3年時に全国選手権出場。卒業後の17年にJAPANサッカーカレッジのサッカーコーチ研究科(4年制)へ入学。在学中に新潟のインターンシップで現場経験を積み、卒業後の21年にテクニカルコーチとして正式に加入。チーム在籍4年目。趣味は香水集め。
○…先発起用が濃厚なDF舞行龍ジェームズ(35)は、直線的にゴールに迫る町田の攻撃を警戒。「長いボールを跳ね返した後のこぼれ球をしっかりと拾い、攻撃に移したい。分析もしっかりと落とし込めている。選手間の距離感が重要になる」。攻撃ではボール保持率を上げながらチャンスを作り、確実に仕留めたい。「自分たちのスタイルをぶつけ、結果につなげたい」と気合を入れた。