ボルボ、30年までの全新車EV化を撤回 需要低迷で
【ロンドン=湯前宗太郎】スウェーデンの高級車メーカー、ボルボ・カーは4日、2030年までに全新車を電気自動車(EV)とする目標を撤回すると発表した。EVへの需要の伸び悩みや各国政府の補助金の打ち切りなど、事業環境が厳しくなっていることが背景にある。
従来目標では30年までに新車をすべてEVにするとしていた。今回、30年までに販売する新車の9割以上をEVかプラグインハイブリッド車(PHV)とし、最大1割をハイブリッド車(HV)とする新たな目標を設定した。
「電動化への移行が一直線で進まないのは明らかだ。現実的かつ柔軟に対応する」。ボルボのジム・ローワン最高経営責任者(CEO)は、4日の声明で目標の見直しに関してこう述べた。
ボルボは全新車をEVにする目標を21年に公表した。伝統的な車メーカーの中で初めて完全EV化を掲げたとされる。だが、当初見込んでいたほどEV化が進まない中で、EV一辺倒だった戦略の見直しを迫られた。
EVは、足元では需要が想定ほど伸びない状況に直面している。
依然としてガソリン車やHVに比べ、価格が高い。需要は各国政府の補助金に支えられてきた面があったが、主要国では打ち切りの動きも出ている。23年末にEVの購入補助金を打ち切ったドイツでは、足元でEVの販売台数が激減している。充電ネットワークの整備が進んでいないことも普及に向けた課題になっている。
新車開発のスピードに勝り車載電池の供給網も握る中国勢が攻勢に出ており、ボルボなど欧州メーカーの事業環境は悪化している。独メルセデス・ベンツグループも今年2月、「顧客の準備が整っていない」として、30年までの「EV専業化」目標を撤回した。