勝利を喜ぶ横浜FM主将の喜田拓也 [写真]=兼子愼一郎
横浜F・マリノスは30日、明治安田生命J1リーグ第33節で川崎フロンターレに4-1と完勝し、15年ぶりの優勝に王手をかけた。キャプテンの喜田拓也は「みんなの頑張りの賜物」と試合を振り返った。
他会場の結果次第では今節で優勝が決まる可能性もあったが、「チームとしては目の前の川崎に勝つことを考えて臨んだ」。その言葉通り、積極的な姿勢で試合に入った横浜FMは開始8分に仲川輝人のゴールで先制。後半に入ると49分と69分にエリキがネットを揺らし、試合を決定づけた。その後1点を返されたものの、終了間際には遠藤渓太がダメ押しゴール。FC東京が引き分けたため優勝決定は最終節に持ち越しとなったが、王者相手の快勝に喜田は「戦う姿勢も出ていたし、ここに向けた準備もしっかりピッチの上で出ていたので、みんなの頑張りの賜物かなと思います」と満足気だった。
昨季、アンジェ・ポステコグルー監督を招へいした横浜FMはハイラインを敷いた攻撃的サッカーへとスタイルを変えたが、残留争いの末に12位と苦戦。魅力的なサッカーを披露してリーグ2位タイの56得点を記録した一方、守備面の脆さを露呈して失点も56と、安定感を欠いた。
それから1年。チームは今、優勝に最も近い位置にいる。得点は昨季を上回る65、失点は38と大幅に減らすことに成功した。ただ、急激に何かが向上したわけではないと喜田は言う。
「最初から(チームが良くなると)信じていたので、いつからとかはないです。ちょっとずつ、勝った試合でも何が良くてもっと上げていけるのか、負けた試合でも良かったところはどこか。本当に小さなことを積み重ねてきての今なので。そこに関してはスタッフの人の努力も選手に伝わっていますし、受け取った選手はより良くしていくために一生懸命取り組んでいる。そこは信頼し合えています」
喜田は今季、天野純(現ロケレン)、扇原貴宏とともにチームのキャプテンに就任した。「もちろん特別なもので、誰もがつけられるものではない」。中村俊輔(現横浜FC)や中澤佑二ら名手が務めてきた大役を任され、「偉大な先輩を見てきて、選手としても一人の人間としても、どうあるべきかを考えてきました」と少なからずプレッシャーもあったはずだ。
それでも、「思い入れや責任もありますけど、チームメイトもスタッフも一緒に進んでいく仲間として信頼しているので、頼れるときは頼って。ただ、苦しいときは自分が先頭に立つ覚悟はもちろん持っていますし、それだけの覚悟が必要なポジションだと思います」と自身の役割を全うしてきた。
残りは1試合。「来年も全員同じメンバーでっていうのは現実的には難しい」と言うように、最終節のFC東京戦は現メンバーで戦える最後のゲームだ。「でも、試合に出る、出ないに関わらずみんながチームに対する思いや姿勢を持ってくれているからこそ、今の位置にいると思うし、やっぱり報われるべきだと思います。キャプテンとしては最後、タイトルを取ってみんなにいい思いをさせてあげたいです」。育成組織からマリノス一筋の生え抜きが、主将として15年ぶりのリーグ制覇へ導く。
取材・文=本間慎吾