アラカジュで合宿を行うリオ五輪日本代表。興梠(手前中央)はランニングで常に先頭を走る [写真]=JFA
地位や環境が人をつくると言われるが、オーバーエイジ(OA)としてリオデジャネイロ・オリンピック日本代表に招集され、チーム最年長となる29歳の興梠慎三(浦和レッズ)も普段と違った姿を見せ、リーダーシップを発揮している。
チームバスの中では年下の選手たちに積極的に話しかけ、ランニングでは早川直樹コンディショニングコーチのすぐ後ろ、まるで若い選手たちをけん引するかのように、いつも先頭を走っている。そんな興梠の姿を見て、霜田正浩日本サッカー協会ナショナルチームダイレクターが微笑む。
「A代表だったら絶対に先頭なんて走らないからね、慎三は(笑)。これまで世界大会に出たことがなかったでしょう。やっぱり出たかったんだろうね。そうした気持ちをしっかり出して、頑張ってくれている」
アラカジュ合宿4日目の25日の夜、選手だけで食事する親睦会が開催されたが、それを発案し、手倉森誠監督から許可を取り付けたのも、興梠だった。
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もともと興梠、塩谷司(サンフレッチェ広島)、藤春廣輝(ガンバ大阪)のOA組が初めてチームに合流した19日、20日の千葉合宿で手倉森監督に提案したが、まだ合流できていない選手が多かったこともあり、持ち越しとなって、この日ようやく開催された。
「選手だけで話したいこともたくさんあるから、スタッフがいないなかで食事会をしたいって言ったら、テグさんがこういう時間を設けてくれた」
向かった先は、美味しいと評判の地元のシュラスコハウス。長テーブルに背番号順に座り、興梠の乾杯の音頭で宴がスタートした。全員と話せたわけではなかったが、近い席の選手たちとざっくばらんにサッカーの話、サッカー以外の話をしたことで、若い選手たちのことをよく知ることができたという。
「何人か、変わっているなっていうやつがいて。ゆとり世代だなって(笑)。誰とは言えないですけど、いろんな人間がいるんだなって思いました」
7月1日にオリンピックのメンバーに正式に選ばれたあと、興梠は「リオ五輪世代はのちのちA代表で活躍しなければいけない選手たちだと思っているので、一人ひとりが100パーセントの力を発揮できるようにサポートしていきたいと思う」と語っていたが、そうした思いを改めて強めたようだ。
「一人ひとり、将来的には海外でサッカーがしたいとか、目指しているところがあったので、それにはこの大会で活躍することが近道だと思う。一人ひとり熱いものを感じたというか、なおさら、みんなのためにも結果が大事になると思いましたね」
「僕の若い頃の話もして、いい話ができたかなって思います」と語った興梠は「積極的に話さないとね、一番年上だから」と笑い、囲み取材を切り上げた。ボールを収める能力が高く評価され、指揮官の思い描くスピーディな攻撃を生み出すキーマンとして期待されるストライカーは、ピッチの外でもチームが一丸となるために大きな役割を演じている。
文=飯尾篤史