PK獲得に直接フリーキックと圧巻の活躍を見せたソン・フンミン [写真]=Getty Images
AFCアジアカップカタール2023・準々決勝が2月2日に行われ、オーストラリア代表と韓国代表が対戦した。
今大会の準々決勝では、過去に優勝経験を持つ2チームの対決が実現した。今大会はグループBに入ったオーストラリア代表は、第1節でインド代表を2-0で下すと、第2節ではシリア代表を1-0で破り、早々と決勝トーナメント進出を決めた。第3節ではウズベキスタン代表との一戦を1-1のドローで終えたものの、2勝1分と無敗でグループステージを終了。決勝トーナメント1回戦(ラウンド16)では1月28日の1試合目に振り分けられ、日本代表と同じグループDを3位通過したインドネシア代表を4-0を粉砕。5大会連続でベスト8入りを決めていた。
一方、韓国代表はグループEで苦戦を強いられた。第1節こそ苦しみながらバーレーン代表を3-1で下したものの、第2節ではヨルダン代表と2-2のドロー。最終節ではマレーシア代表との一戦を撃ち合いの末に3-3で終え、最終的に1勝2分の2位でグループステージを通過した。30日に行われたラウンド16ではサウジアラビア代表と激突。FIFAワールドカップカタール2022出場国同士の対戦は、サウジアラビア代表が後半立ち上がりに先手を取ったものの、試合終了間際にチョ・ギュソンが劇的同点弾。延長戦で決着はつかなかったものの、PK戦でGKチョ・ヒョヌが2本ストップ。4-2でPK戦を制し、8大会連続で準々決勝へ進んでいた。
オーストラリア代表はインドネシア代表戦からスターティングメンバーを4名変更。ミッチェル・デュークやクレイグ・グッドウィンらが先発に復帰した。一方の韓国代表はサウジアラビア代表戦から3名を入れ替え。パク・ヨンウとチョ・ギュソンがスターティングメンバーに戻ってきたことに加え、ケガの影響で出遅れていたファン・ヒチャンが今大会初の先発に名を連ねた。
試合は立ち上がりから韓国代表がボールを握り、オーストラリア代表は4-4-2で構えながら受ける姿勢で試合に入る。韓国代表はロングボールを交えながらも、基本的にはオーストラリア代表のブロックの外でボールを繋ぎ、サイドを中心に前進。対するオースラリア代表は、ボールを持たせる前提のもと、ゴール前で仕事をさせないことを徹底する様子が感じられ、動きがないまま15分ほどが経過する。
この試合最初のシュートを放ったのはオーストラリア代表。敵陣中央でのデュークのポストプレーから右サイドへボールが渡ると、高い位置を取った右サイドバックのナサニエル・アトキンソンが中央へ繋ぐ。ペナルティエリア手前で前を向いたコナー・メトカーフがミドルシュートを放ったが、シュートはゴールの右へ。
1つ攻撃の形を作ったオーストラリア代表は続く19分、最終ラインでボールを持ったキー・ロールズからのロングフィードを、左サイドに流れたデュークが収める。中央へボールを落とすと、パク・ヨンウとの奪い合いを制したグッドウィンがボックス左から左足で狙う。このシュートがGKチョ・ヒョヌに弾き出されると、こぼれ球にメトカーフが詰めたが、シュートはジャストミートせず、枠を捉えきれない。
対する韓国代表は21分、敵陣へ押し込んだ状態でボールを握る中、キム・ヨングォンが左足で中央を破るスルーパスを通す。抜け出したファン・ヒチャンがボックスへ侵入したが、フィニッシュに至る前にハリー・サウターに寄せられ、左足を振ることはできない。32分には敵陣中央で前を向いたイ・ガンインが左足で背後のスペースへ浮き球のボールを送ると、抜け出したソル・ヨンウがダイレクトで折り返し、最後はファン・ヒチャンがダイレクトで押し込む。韓国代表が先手を取ったかに思えたが、ソル・ヨンウのポジションがオフサイドだったため、得点は認められなかった。
スコアレスで前半も終盤に差し掛かったが、42分には韓国代表にミスが発生。自陣ペナルティエリア手前でクリアボールを拾ったファン・インボムが横パスを出すも、鋭い出足でグッドウィンがボールを奪う。グッドウィンは急がずにマイナスへ繋ぐと、デュークを経由してパスを受けたメトカーフがボックス右へスルーパスを供給。オーバーラップしたアトキンソンが浮き球の折り返しを送ると、デュークがパク・ヨンウをブロックしたことで、ボールはフリーのグッドウィンへ。左足でボレーシュートを叩き込み、オーストラリア代表が先手を取った。
前半はこのままオーストラリア代表の1点リードで終了。AFC(アジアサッカー連盟)の公式スタッツでは、韓国代表が70%のボール支配率を記録しながら、シュートは0本で終わり、ボールを持っていたよりも持たされていたような構図だった。一方のオーストラリア代表は自分たちが前への圧を強めた時間帯にうまく先制に成功し、上出来の45分間となった。
後半に入っても韓国代表は横幅を活かした攻めがメインだが、両サイドバックを押し上げることで攻めの形を増やしていく。48分には左サイド高い位置でパスを受けたソル・ヨンウが、切り返しから縦へ突破してクロスボールを送る。ファーサイドで待っていたイ・ガンインがファーストタッチから左足を振るも、シュートは威力がなく、GKマシュー・ライアンの正面へ。
一方、前半と同じく受ける姿勢で試合に入ったオーストラリア代表だったが、53分にはシンプルなサイド攻撃で決定機を創出。左サイド高い位置でロングフィードを受けたグッドウィンがアーリークロスを送ると、ボックス右でフリーになっていたマーティン・ボイルが頭で合わせる。強烈なヘディングシュートがGKチョ・ヒョヌに弾き出されると、こぼれ球をボイル、さらにデュークが狙ったが、GKチョ・ヒョヌの体を張ったセービングもあって仕留めきれなかった。
その後、1点を追いかける韓国代表がサイド攻撃でゴールに迫る場面を作るが、中央を固めるオーストラリア代表を崩し切るには至らない。イ・ガンインがボックス右の狭いスペースでボールを引き出し、なんとか打開を試みるも、同点弾は挙げられずに終盤へ向かっていく。
オーストラリア代表は守り切る中でカウンターで追加点を試み、83分にはデュークに決定機が到来したが、ヘディングシュートは枠の外へ。一方、7分間のアディショナルタイムは韓国代表が攻め込む展開となると、5分を経過した頃に韓国代表に絶好のチャンスがやって来る。ペナルティエリア手前でボールをキープしたソン・フンミンが巧みなターンからペナルティエリア左へ侵入し、ルイス・ミラーのファウルを誘発。韓国代表にPKが与えられた。このPKをファン・ヒチャンがゴール左上へ叩き込み、韓国代表が土壇場で試合を振り出しに戻した。
このままタイムアップの笛が吹かれ、試合は延長戦に突入。こうなると、中5日のオーストラリア代表に対して。中3日かつラウンド16でも120分間の死闘を戦った韓国代表は疲労の色が見えるかに思われたが、勢いを失うことなく敵陣へ侵入する回数を増やしていく。95分には右からの折り返しをファン・ヒチャンがダイレクトで狙ったが、シュートはGKライアンに阻まれる。こぼれ球に詰めたソン・フンミンのヘッドもGKライアンに防がれた。
韓国代表は延長前半ほとんどの時間を敵陣で過ごすと、102分にはセカンドボールを拾ったファン・ヒチャンが強引に突破を試み、ペナルティエリア外左寄りの位置でフリーキックを獲得する。ボールの前に立つのはイ・ガンインとソン・フンミン。先に一歩を踏み出したソン・フンミンが右足を振り抜くと、綺麗な弧を描いた一撃がゴールネットに吸い込まれた。韓国代表が遂に試合を振り出しに戻した。
完全に劣勢を強いられたオーストラリア代表は延長前半アディショナルタイム、ピッチ中央でのルーズボールをめぐって、エイデン・オニールがファン・ヒチャンへ遅れてスライディングタックル。足裏を見せてのスライディングへ行ったオニールに、当初はイエローカードが提示されたが、OFR(オンフィールドレビュー)を経て判定が変更。カードの色が赤に変わり、オーストラリア代表は10人で延長後半を戦うこととなった。
追い込まれたオーストラリア代表は、延長後半になかなか効果的な攻撃を見せることができず、試合はこのままタイムアップ。この結果、16大会ぶりのアジア制覇を目指す韓国代表が、2試合連続で劇的な勝利を成し遂げ、2大会ぶりの準決勝へ駒を進めた。一方、母国開催で優勝を飾った2015年大会以来、2大会ぶりの優勝を目標としていたオーストラリア代表はここで終戦。2大会連続のベスト8敗退となった。
勝利した韓国は準決勝は2月6日の18:00(日本時間24:00/7日0:00)にキックオフ。初のベスト4入りを果たしたヨルダン代表と対戦する。
【得点者】
1-0 42分 クレイグ・グッドウィン(オーストラリア代表)
1-1 90+6分 ファン・ヒチャン(PK/韓国代表)
1-2 104分 ソン・フンミン(韓国代表)
By サッカーキング編集部
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