ラグビーも、そのルーツはフットボールにある。むしろ、ラグビーもフットボール競技の1つと言った方が正しい。アソシエーション・フットボール(サッカー)やラグビー、さらにはオーストラリアのオージールールズやアイルランドのゲーリックフットボールまで、ボールを蹴り合う競技を総じてフットボールと呼ぶのである。
現在、イングランドで行われているワールドカップは、ラグビー・フットボールの一種で「ラグビー・ユニオン」。その起源は古く、FIFA(国際サッカー連盟)がサッカーの始まりを紀元前の中国と考えるのならば、ラグビーの起源も古代ギリシャまでさかのぼるのかもしれないが、競技としてルール化されるようになったのは19世紀のイングランドでのこと。
始まりは1823年、イングランド中部のウォリックシャーのラグビーという町にあるラグビー校で、フットボールの試合中に生徒がボールを手で持って走り出したことだとされている。当時の英国では、学校ごとにルールを設けてフットボールが行われていた。ラグビー校の当時のルールでは、ボールをキャッチするなど、一時的に手を使うことは認められていたが、ボールを持って前に走る行為は反則だった。そのルールを破り、ボールを手にして走り出した生徒の名はウィリアム・ウェブ・エリス。ラグビー・ワールドカップの優勝トロフィーが、ウィリアム・ウェブ・エリス・カップと呼ばれるのはこれに由来する。
実際にウェブ・エリスがラグビーの生みの親という証拠はなく、1876年にラグビー校のOBの1人が、「ある人に聞いた話」として彼の「ボールを持って走った事件」を学校誌に寄稿。するとラグビー校は1895年に「ウェブ・エリスがフットボールのルールを無視して初めてボールを手に持って走った」という石碑を作った。今でもラグビーの町には、彼の銅像、そして彼の名前の付いたラグビー博物館まである。
ウェブ・エリスの逸話はともかく、1845年に初めて「ラグビー」のルールを定めたのはこのラグビー校だ。そこから、フットボールと並んでラグビーも英国で人気スポーツとなっていく。そして他の学校やクラブチームでも“ラグビー風”のルール化が進み、1871年にその競技を統括する団体としてラグビー・フットボール・ユニオン(日本ではイングランド・ラグビー協会と呼ばれることもある)が発足された。初めてのラグビー代表戦、イングランド対スコットランドが開催されたのもこの年だった。
ちなみに、ラグビー・フットボール・ユニオン発足の8年前、1863年に設立されたのが「世界最古のサッカー協会」と言われるFA(イングランドサッカー協会)だ。同協会の設立時にサッカーのルールを統一する中で、ボールを持って走ることが“反則”となったのを受け入れられず、FAに加盟しなかった一部のクラブがラグビー・フットボール・ユニオン創設に関わっているのも興味深い。
その後、1895年にラグビー・フットボール・ユニオンから脱退したグループにより、13人制のラグビー、「ラグビー・リーグ」が発足されたため、ラグビー校で生まれたラグビーは「ラグビー・ユニオン」と呼ばれるようになり、英国で2つのラグビーが定着していったのだ。
ちなみに、ラグビーボールが楕円球なのは、豚の膀胱を膨らませてそこに皮を張り付けて使っていたからとされる。もちろんサッカーボールも昔は同じような手法で作られていた。実はラグビーボールも最初は球に近かったが、より手で持ちやすいように徐々に楕円球に変わっていったという。
(記事/Footmedia)