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一地方クラブを欧州の舞台へ…マインツ指揮官が“戦える集団”を作り上げた秘訣

2016.04.18

マインツを率いるマーティン・シュミット監督 [写真]=Bongarts/Getty Images

 17日のブンデスリーガ第30節でFW大迫勇也が所属するケルンに2-3の逆転負けを喫してしまった、日本代表FW武藤嘉紀所属のマインツ。しかしながら順位は依然6位をキープし、ヨーロッパリーグはもちろんのこと、理論上ではチャンピオンズリーグ出場権獲得の可能性も残している。

 一地方クラブにすぎなかったマインツが上昇気流に乗り、欧州カップ戦という晴れ舞台へ近付きつつある現状は、やはりマーティン・シュミット監督の手腕によるところが大きい。リヴァプールのユルゲン・クロップ監督、日本代表MF香川真司が所属するドルトムントのトーマス・トゥヘル監督など、マインツは優秀な指揮官を輩出しているクラブであるが、シュミット監督の今シーズンの成績は、彼らに匹敵、もしくはそれ以上のものである。

 では、いかにして同監督はマインツを“戦える集団”に変えたのか――ドイツ紙『ビルト』が、シュミット監督の言葉を引用し、その秘密を報じている。

1:協調性
 シュミット監督は「例えば朝食の時に、(スペイン語圏の)FWパブロ・デブラシスとMFハイロ・サンペリオを、そして(ドイツ語圏の)GKロリス・カリウスとDFダニエル・ブロシンスキを近くに座らせるのではなく、カリウスとハイロをくっつけたりしている」と話している。「チーム内に仲の良いグループができることは当然のこと」と同監督も考えているが、ある選手が“仲良しグループ”以外の選手とも積極的にコミュニケーションを図れるよう、席の割り当てにも気を使っている。

2:栄養
 できるだけ、クラブハウスで選手が一緒に食事を摂るように定めている。「ドネルケバブ(トルコのファストフード)やハンバーガーなどではなく、もっと体に良いものを摂取する」ことが、その狙いだ。

3:キャラクター
「新たに選手が加入した際には、とにかく対話を繰り返すことが重要」だという。また、あまりサッカーのことは話さず、多くの“ささいなこと”にも気をつけているようで、「例えばその選手がどんな車に乗っているか、チームでの現状を鑑みてその選手がどういう態度を取るか、という点も注視しなければならない」とコメントしている。さらにチーム作りにおいては「腕全体にタトゥーを入れているような選手は、決して物静かなタイプではない。また奥さんや子どもがいて、夜はあまり外出をしないような選手はだいたい落ち着いた選手だ」という考えを持ち、それら異なるタイプがミックスされた、いわゆる偏りがない集団を目指している。

4:ミスを受け入れる
 シュミット監督には「もちろん試合前に『ミスしてもいい』と言うことはないが、仮に致命的なミスをしたとしても交代させることはない。そんなことをしたら、その選手は立ち直れなくなってしまう」という考えが根本にあり、試合で出来が悪かった選手に対しても、「ビデオで一緒にそのシーンを確認するという作業を行う。選手によっては(修正までに)時間がかかる場合もある。ただしその選手がくよくよ考えすぎてしまわないように注意しなければならない。(指摘が)逆効果になってしまうからだ」と、その扱いにも細心の注意を払っている。

 U-23マインツから現職に内部昇格した14カ月前は、指示を出し過ぎて喉を潰すなど、いわゆる“熱血漢”というイメージが強かったシュミット監督。しかしその実、選手心理を巧みに読み解き、地道な作業を積み重ねる緻密な戦術家であるようだ。

文=鈴木智貴

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By 鈴木智貴

ドイツ在住。ライター兼サッカー指導者

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