決勝を争った市立船橋と流経大柏はどちらもプレミアリーグEASTに所属している [写真]=川端暁彦
「高校サッカーの戦国時代」に、ある種の終わりが近づいてきているのかもしれない。少なくとも全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会(インターハイ)においてその傾向は明確になりつつある。
ここで過去5大会の優勝校と準優勝校を思い出してみたい。
2012年:三浦学苑、武南
2013年:市立船橋、流経大柏
2014年:東福岡、大津
2015年:東福岡、市立船橋
2016年:市立船橋、流経大柏
(左が優勝、右が準優勝)
5年間で、のべ10チームがファイナリストとなっているわけだが、そのうち7チームは「市立船橋、流経大柏、東福岡」の3チームによって占められていることがわかると思う。もちろん三浦学苑の快進撃のようなサプライズも確かにあるのだが、総じて上位陣が安定してきているのは傾向としてあるのではないだろうか。
2011年から高円宮杯U-18サッカーリーグプレミアリーグが創始され、年間を通したリーグ戦という高校年代の新たなチャレンジが始まった。従来の強化日程の中に年間リーグをどう組み込んで、どういうチームを作り、そして高校サッカーの大会とどう戦い分けていくのかという課題と、強豪校は格闘してきた。当初は混乱もあり、リーグ戦の戦い方とカップ戦の戦い方が揺れる中で、足をすくわれるチームも続出していた。
ただ、近年この傾向が変わってきたと感じている。初年度からプレミアリーグを戦ってきた青森山田の黒田剛監督もそうした見方を首肯する。「プレミアはポゼッションと耐えてカウンターを狙うことの両方できるチームでないと生き残れない」と位置づけて、複数の戦い方を使い分けるチームとして成長を見せた。準々決勝で当たった城市徳之総監督(米子北)は「この数年で(青森山田の)カウンターが本当にうまくなった」と舌を巻いていたのが、これは昨年の第94回全国高等学校サッカー選手権大会を制した東福岡を含め、プレミアリーグを戦う高校サッカーのチームに共通して起こっている変化のように思う。
もちろんサッカーというスポーツの性質上、番狂わせは起こるものではある。今大会もそれはあった。ただ、リーグ戦での強化を通じて、その確率をかなりのパーセンテージまで削るだけの地力を備えた高校が着実に育ってきているのも、また確かではないだろうか。優勝した市立船橋の戦いぶりは何とも圧倒的で、その市船に「後半は堪え忍ぶだけのサッカーをさせられた」(朝岡隆蔵監督)のが決勝の対戦相手・流経大柏だったのもまた示唆に富んでいる。
高校サッカーは指導者の世代交代期と重なって「どの高校にも優勝のチャンスがある」と言われた混沌の時代から少し経ち、強豪校が時代に適合した方法論を手に入れて安定的な巨大勢力になりつつある。2016年のインターハイは、そんな時代の変わり目をあらためて意識させられる大会となった。
文=川端暁彦
By 川端暁彦