三浦瑠麗氏の「夫の会社とは無関係」は通用する? 成長戦略会議では太陽光発電推しの発言していたが…

2023年1月24日 06時00分

成長戦略会議の初会合に臨む三浦瑠麗氏(右)=2020年10月16日、首相官邸で

 「国際政治学者」として活躍する三浦瑠麗るり氏の夫・清志氏が経営する太陽光発電投資会社が、詐欺容疑で東京地検特捜部の家宅捜索を受けた。「夫の会社とは無関係」と三浦氏はコメントしているが、過去に政府の「成長戦略会議」で太陽光発電を推す発言を繰り返しており、利益相反を指摘する声も上がる。問題はないのか。(西田直晃)

◆太陽光発電施設建設に10億円出資させたが…

 この会社は、2014年に設立された「トライベイキャピタル」(東京都千代田区)。兵庫県での太陽光発電施設の建設を名目に、港区の投資会社から10億円の出資を受けたが、実際に建設の動きはなく、出資金をだまし取ったとして刑事告訴されたという。
 同社の所在地は、三浦氏が代表を務める「山猫総合研究所」の事務所と同じ。さらに、清志氏は過去に同研究所の取締役に名を連ねてもいた。三浦氏はホームページで「報道は事実」と認めたものの、「夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ないこと」とコメントした。
 ただ、この三浦氏。20年に菅義偉前首相が設置した「成長戦略会議」のメンバーで、自前の資料を用意し、複数回にわたり太陽光発電を推進する発言をしてきた。議事要旨によると、21年6月の第11回会議で「荒廃農地の太陽光発電に対する転用の件について、ぜひやっていただきたい」と主張。同年9月の第13回会議でも「非常にポテンシャルの高い、例えば屋根のせの太陽光と、小規模の荒廃農地に対する太陽光パネルの設置などに関しては、もう少しスピードアップしていかないと」と述べている。

◆身内に利害関係者がいる人が政策決定に参画するなんて

 無関係を強調する割には、太陽光発電推進に関心があるように見える。言うまでもなく、こうした国の政策決定にかかわる場で利益誘導があってはならず、省庁の審議会では委員について利益相反に関する規定を設けているところもある。成長戦略会議の後継組織に当たる「新しい資本主義実現会議」事務局の担当者は取材に「人選については、議論の中身に沿った専門的知見を有する人を選んでいる。利害関係の有無などは個別具体的に判断している」と答えるにとどまった。
 今回のケースは、夫婦は別人格であり、夫の会社の内実を知らなかったという主張も通らなくはないが、やはり外形的には経緯に疑問が残る。明治大の西川伸一教授(政治学)は「驚きを隠せない。身内に利害関係者がいることは事務局も知っていたはずだ」と話す。「政官上層部の連携プレーで、知名度の高い三浦さんが選ばれたのだろう。だが、民間委員は選挙を経ずに政策決定に参画するのだから、国民から見た公正さが何よりも大事なはずだ」

◆政策会議のあり方、人選、見直すべきでは

 ノンフィクション作家の森功氏も「そもそも、三浦氏は政策のスペシャリストではない。世間に受けのいい女性識者として、政権の広告塔を担っていた感じがある。『私は関係ない』と言っても、会議での発言を振り返れば、夫の事業への協力に利用したと見られても仕方ない」と断じる。
 さらに、政策会議自体のあり方について、「根深い問題がある」と指摘。小泉政権以降の自民党政治に触れつつ、「人材派遣会社トップの竹中平蔵氏に労働法制の提言を任せるなど、時の内閣が進めたい政策を実現するために、政権寄りの姿勢が色濃い財界人の意見を反映させて国策を動かしてきた。その過程で我田引水的な献策も素通りされてきた」と強調する。
 「政策会議が時の政権に近く、お墨付きを与えるPR機関になっていることが問題だ。三浦氏は選ばれるべきではなかった。今回の騒動を機に、メンバーの選出方法を抜本的に見直す契機にしたほうがいい」

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