「外国人だから雑に‥」親族間暴力で避難の女性 生活保護決定も支給大幅遅れ 桐生市は不手際認める

2023年12月12日 13時17分
 群馬県桐生市が生活保護費を分割して満額支給しなかった問題をめぐり、今年9月から生活保護を利用している市内に住む外国籍の60代の女性が、本紙の取材に応じた。最初に窓口を訪れた際は申請ができず、保護決定後は支給が大幅に遅れたと明かし、「助けてもらう立場なので文句を言えなかったが、もう少し親身に対応してほしかった」と振り返る。市も対応が一部不適切だったことを認めた。(小松田健一)

桐生市役所

◆担当者「荷物の移動完了までは‥」

 女性によると、夫が昨年1月に病死後、同居する夫の親族から暴力を受けたり、台所や風呂、トイレなど共用部分へ通じる部分に鍵付きのドアを取り付けられて使用できなくされたりした。「知的障害がある長男は精神的に不安定となってしまった」と語る。
 5月に最小限の身の回り品を持って桐生市内のアパートへ避難した。収入は自身の年金や長男の障害年金だけで生活に困窮し、8月初旬に市役所へ生活保護の相談に行った。しかし、担当者から「旧宅から荷物の移動が完了するまで生活保護は実施できない」と告げられ、申請できなかった。
 女性を支援する上村昌平弁護士は、この対応について「親族間暴力からの避難は旧宅に荷物を残しているのが通常。あたかも二重の居住実態があるかのように、受給ができないかのような説明をしたのは問題だ」と指摘する。

◆市は「水際作戦」を否定

 上村弁護士が市とやりとりして9月26日に申請。10月25日に保護決定が出たが、9月分の保護費が支給されたのは23日後の11月17日と大幅に遅れた。10、11月分の支給は11月27日だった。
 市は支給が遅れた理由を「年金額が未確定のため、収入認定額を確定できない状態で支給すると後日に保護費の返還の問題が生じる」などと説明したという。上村弁護士は「女性にしてみれば、いつになったら保護が受けられるか分からない不安定な状態で長期間放置された」と話す。女性には持病があり就労は困難な状態で、生活保護が頼りだ。「外国人だから雑に扱われたのだろうかという気持ちはあります」とため息をついた。
 桐生市の小山貴之福祉課長は、支給が遅れた点について本紙に対し「保護決定が出たら速やかにお支払いしなければならなかった。不手際があった」とコメントした。その上で「事情を聴いた上で他の支援制度が良いと判断すれば、そちらを案内することもある」として、窓口で申請を拒むいわゆる「水際作戦」は否定した。

◆日割りの支給など行わないよう通知 県が福祉事務所に

 県健康福祉課は県内17の福祉事務所に対し、生活保護費の利用者が毎日来所しての支給や、一部を預かるといった運用をしないよう求める通知を出した。7日付。
 また通知では、真に分割支給が必要な利用者に対しては、毎週、半月ごとなど適切な頻度で1カ月分が満額となるような金額を設定し、口頭ではなく書面に目的と頻度、金額を明記して利用者の同意を得ることとしている。
 このほか、窓口で保護費を支給する場合、何らかの条件を付けたような誤解を与えることは厳に慎むよう求めた。桐生市が50代男性に1日千円を支給する際、ハローワークでの毎日の求職活動を条件としたことを念頭に置いたとみられる。(小松田健一)

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