就任2年目を迎えた新井貴浩監督(46)率いる広島が早くも「打倒・阪神」へ士気を高めている。チームを「家族」と評する指揮官の信条通り、昨季日本一に輝いた猛虎を今季こそ攻略するため、現場と背広組が一体となるのは必然の流れと言っていい。

 まずは現場だ。今季から対阪神戦に向け、先乗り視察は複数人のスコアラーを派遣していくという。その目的は当然ながら、昨季の直接対決で9勝15敗1分けと唯一負け越した阪神戦の戦績を逆転させること。これは新井監督ら現場首脳陣のアイデアによるもので、より客観的かつ多角的な視点で天敵の弱点を洗い出すことが狙いだ。

 ここまで広島はシーズン中に総勢4人の先乗りスコアラーが各自の担当球団を持ち、自軍と直接対決前の1カード、あるいは2カード先の対戦相手の試合に赴き、各球団を分析することが通例のパターンとなっている。

 一方で近年のケースで言えば2021、22年シーズンでセ連覇を成し遂げたヤクルト、昨季は巨人を重点的なターゲットに定め、複数のスコアラーが入れ替わる形で情報収集を行った。今季は、その複数担当制の球団を阪神に設定。チームとして総力を結集させ、対阪神戦の苦手意識を払拭させる方針を固めた。

「打倒・阪神」を猛烈に意識して新年を迎えたのは、現場にかかわる〝実戦部隊〟だけではない。球団の営業および広告セクションに携わる〝後方支援部隊〟も同様だ。

 昨年末に球団側はファンに対して、感謝の意を示す1面広告を地元紙に掲載。ベンチ前で跳びはねて喜ぶ新井監督をモデルに「アレからコレへ。」のキャッチコピーを入れ「『よー頑張った』と褒めて下さる方もありますが、最後はやっぱり悔しかったです。来年こそは、優勝を目指して『アレから、コレへ』 家族一丸、よろしくお願いいたします」(原文ママ)とつづっている。阪神・岡田監督の「アレ」を意識した文面となっているのは説明するまでもない。

 昨季は2位で5年ぶりにクライマックスシリーズへ進出し、公式戦観客動員数も4年ぶりに200万人を突破した。久々に盛り上がった地元・広島をさらに盛り上げるべく、新井カープは〝家族一丸〟となって虎にファイティングポーズをとっている。