ソフトバンク・和田毅投手(42)の〝プロテクト漏れ騒動〟が一向に収まらない。西武からFAで獲得した山川穂高内野手(32)の人的補償として、最終的に甲斐野央投手(27)が移籍となった。今オフは、広島からオリックスにFA加入した西川龍馬外野手(29)の人的補償で2年目の日高暖己投手(19)も移籍。こちらのケースは果たしてどうだったのか。両球団とも守りたくても守れなかった選手を失った形だが、編成担当者が見たチームに与える影響は――。

 MLB時代を除き、鷹一筋で腕を振ってきた和田が人的補償候補に挙がるなり、球界内は大混乱に陥った。当事者のソフトバンクと西武以外の球団にとっては〝対岸の火事〟ではあったが、他球団の編成担当者にとっても特大級の衝撃で「本当なのか?」と即座に情報収集に奔走したという。

 球団がプロテクトで守れる選手の人数は28人までと限りがある。一方、今オフは西川のオリックス移籍に伴い、人的補償で高卒1年目を終えたばかりの日高が広島に籍を移す。2件の人的補償で、ある編成担当者が着目したのはベテランの扱いだ。複数の球界関係者の話によると「オリックスは低迷期からチームを支えてきた功労者の面々をきっちりとプロテクトしていたようだ」と声を潜める。

 28人枠では平野佳寿投手(39)や比嘉幹貴投手(41)、安達了一内野手(35)、T―岡田外野手(35)らが含まれていたとみられる。その一方、無限にプロテクトできるわけではないため、結果的に広島へ移籍することになった日高ら複数の有望選手をリストから外さざるを得なかったという。日高はまだ一軍での実績こそないものの、将来性を高く評価していたオリックスサイドにとっては大きな痛手だ。

 もちろん、トップシークレットでリストを作成する球団側にとっても苦渋の決断。リストから外した結果、獲った側と獲られた側にとってどの選択が「正解」だったかは今後の活躍次第となる。ただ、別の編成担当者によると今回のソフトバンクのような選択をした場合、フロントと選手の間に〝隙間風〟が吹く公算が大きいという。

「特に、これからFA権を取る選手には影響はある。選手心理からすれば、現制度ではドラフトで球団を選べない。必死に球団の戦力になろうと頑張って、やがてFA権を取って球団を選べる立場にもなっても、その球団に残って引退まで頑張ろうという意思のある選手がプロテクトから外されるとなると『ああ、最後はこういう形で切られるのか…』と。もちろん、今回のソフトバンクのフロントの選択が『間違いだった』とは言い切れないけど…」

 オリックスでは毎年のように若手が台頭する好循環で、今季はパ4連覇を目指す。かといってベテランを冷遇することもなかったようだ。人的補償を巡り、ある意味では対照的な〝血の流し方〟となった両球団。この流れはシーズンの戦いにどう影響していくのか。