予感的中の〝劇弾〟だ。広島は13日のヤクルト戦(マツダ)を延長11回、1―0で快勝。7月初の連勝を、今季2度目のサヨナラ勝利で飾った。

 ヤクルトとのカード2戦目は、両軍投手陣が要所で踏ん張り、スコアレスで延長戦へ。迎えた11回、途中出場でマスクをかぶった石原貴規捕手(26)が、ヤクルト6番手・田口麗斗投手(28)の2球目のスライダーを鮮やかに左翼席へ運び、決着をつけた。ダイヤモンド周回後には、ナインから手荒いウオーターシャワーでの祝福を浴びた。

 今季3本目のアーチが初のサヨナラ弾になったヒーロー・石原は「最高です! ピッチャーも頑張ってくれていましたし、野手の方もいい守りをしてくれていたので。最後、決めたのは僕なんですけど、皆さんがあっての打席だった」とニッコリ。

 大興奮の本人と同じか、それ以上に「(思考が)吹っ飛んだ!」にエキサイトしたのが、新井貴浩監督(47)だ。放物線の落下点を確認した途端、一塁ベンチを真っ先に飛び出して、何度も跳びはねた。

 試合後の指揮官は、石原の千金弾が頭の中で描いていた〝妄想〟が現実のモノとなった〝予感弾〟だった、と鼻息荒く告白。石原が先頭で打席に入るのを見つめながら、横にいた参謀の藤井ヘッドと「コイシ(石原のニックネーム)、スライダーをホームラン打ってくれないかなぁ~って。ちょうど2人で話していたところ、本当にパカーン!って」と〝願望〟がものの見事に目の前で起こったと打ち明けた。

 延長11回の攻防を制しただけでも濃厚な一日だが、この日の指揮官はそれ以上に〝野球〟にどっぷり浸った一日だった。

 この日の監督は早朝に広島から兵庫県の高砂へと移動し、次男・颯真さんが所属する甲南高の夏の甲子園予選の応援に参戦。試合終了直前まで、スタンドから息子の母校に声援を送ると、14時開始の本業の監督業を行うべく、広島へととんぼ返り。高校野球観戦と本業の仕事で、さまざまな意味で計20イニング「野球」にハラハラドキドキした。

 結果的にも息子の母校と自軍が「勝利」で締めくくり、試合後は「もうね、最高。全然、疲れてない。朝は高校野球に力をもらって、昼はうちの選手に力をもらって、ますます元気が出てきた。あと2試合連続でも大丈夫」と〝絶口調〟だ。

 2試合連続の1点差勝利で燕軍団を退け、7月初の連勝で、首位・巨人を1ゲーム差でピタリと追走。首位返り咲きへ、誰よりも〝テンションうなぎ上り〟となったのは他ならぬ、新井監督かもしれない。