チコちゃんに叱られるの声を担当している木村さん(キム兄)のインタビュー記事がありました。
「チコちゃんの毒舌は老婆心なんですよね。人との信頼関係があって、もっとこうした方がいいよというような、こうであってほしいというような、修正というか依頼というか。」
なかなか、興味深いですね。
【独占】人気爆発「チコちゃんに叱られる」声担当、キム兄が初めて語る「チコちゃんの自由さ」
「チコちゃんに叱られる!」(NHK)が絶好調だ。7月14日(土)に放送された再放送は視聴率13.9%と番組史上最高を記録。7月9日-15日の視聴率ランキングでは、堂々の11位(ビデオリサーチ調べ、関東地区)に入った。
金曜夜に本放送、土曜午前に再放送と週2回の放送だが、常に再放送の視聴率が上となっている事態を「珍現象」と報じられたり、18日のNHK放送総局長定例記者会見では拡大スペシャルの放送(8月17日)が発表されたり。
メディア注目の「局の顔」になりつつある番組だが、簡単に言うならクイズ番組。「パンダはなぜ可愛いのか」など、素朴な疑問を5歳児のチコちゃんが出題、答えられない大人の回答者に「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と喝を入れるところが、多くの日本人の心を鷲づかみにしている模様。
そんなチコちゃんの声を担当するのが、タレントの木村祐一さん。「チコちゃん人気」についてじっくり語るのは、このインタビューが初めてだ。
「取り繕ったり」「作る」ことがないんです
——NHK放送総局長会見でも取り上げられました。
それはもう見過ごすわけにはいかんくらいの状況ですもんね。
どこ行ってもチコちゃんのこと言われて、僕は肌で感じますからね。友達、親戚、親も当然そうなんですけど、どこか店に入っても「なんや、チコちゃん」って言うてくれはったりね。隠してないから、「ありがとー」って言ってるんですけど。
まだ「叱ってください」って言われるのは、ないです。木村祐一の時には、何回もありますけど。「考えられへん」って言ってくださいって何回も言われるんですけど。
——人気の秘密はどこにあるのでしょうか?
「取り繕う」ことと「作る」ことがないんですね。「番組作り」はあるんですけど、取り繕ったり、作ったりはしてません。
なんというか、任されてますから、全部。正解、不正解の判断もVTRにいくタイミングも、指示を仰がずに完全に僕がやってますんで。そういうところが伝わるのかな、「枷(かせ)」がないところが。
自由に5歳のチコちゃんが、スタジオを表情豊かに走り回ってね。それはCGチームのおかげなんですけど、見ている人はまるで生きているチコちゃんのドキュメンタリーのように感じられるんじゃないでしょうか。
ネットに答えがない質問を出すってすごいことですよ
でも、一番は質問ですよ。映画の世界で「1筋、2抜け、3動作」って言うんですけど、筋は本、脚本、抜けは美術で、ロケ地とか背景、動作は三つ目で、ここでやっと役者の動きが入る。この番組は、その順番になってるんじゃないかと思いますよね。
身近でありながら、わからない。「考えたことなかった」って街の人のVTRでも必ず出ますよね。「筋」つまり質問がよくて、チコちゃんの存在は2つ目の「抜け」にもかかわっていて、最後の「動作」を担ってるのかな。
だってネットがなんでも答えてくれる時代にですよ。ネットに答えがない質問を出すってすごいことですよ。スティーブ・ジョブズが生きてたら、呼んでこなきゃあかんくらいですけどね、「ボーっと生きてんじゃねーよ」って。死にはったけど(笑)。
——チコちゃんの毒舌が人気で、叱られたい人続出とか。
なんとなくですけど、みんな叱れられたいのかなって、思いますね。頑固オヤジとかみんな好きでしょ、怒られる寿司屋とか。褒められるのも気持ちええけど、褒められ続けると飽きるじゃないですか。
チコちゃんの毒舌は老婆心なんですよね。人との信頼関係があって、もっとこうした方がいいよというような、こうであってほしいというような、修正というか依頼というか。ゲストに対して「VTR中に『違うんじゃないかなー』とか言うな」とか言いますよね。でも本当に黙ってしまうと「そんなん、ちょいちょい言え」って言うし。そういう変わり身の早さも、隠れみのにしながらの老婆心。
チコちゃんには母性本能があって、それも受け入れられる要素でしょうね。キャラクター作りは僕やったり、僕の周りの人の女の人がモデルになったり、です。
——チコちゃんは粗挽きウインナーが好きで、筒香嘉智選手(横浜DeNA)が好き、と。
筒香を「娘の夫にしたい」という女の人がいて、そういう好きさなんです。 僕もどっちかいったら女子ですからね。それはいろんな人に聞いてください、板尾(創路)さんとかYOUとかに。「キム兄は女子だよね」って言いますから。女子会に参加できるタイプなんです。それがおっさんと合わさって、うまいこといってんのかなって勝手に思ってますけど。
最初の演出の方との打ち合わせで、「時に5歳に戻りながら、あとはもう木村さんでいいです」ってことで、旧知の方(共同テレビジョン小松純也氏。フジテレビ時代に木村さんも出演した「ごっつええ感じ」などを制作)だったので、すぐに狙いは理解しました。
だから笑いの量がきちんと取れるというのをベースに、岡村(隆史=番組MC)との絡みがうまくいけば面白い番組になるだろうと思っていましたが、こんなにすぐに反響があるとは思っていませんでした。
ボール持っている人が自由にパスを回していきます
——桂文珍師匠が落語会の枕で「ボーっと生きてんじゃねーよ!」を言ってらっしゃいました。
文珍師匠がですかー。お礼、言っとかんと(笑)。この前、松尾貴史さんからLINEきて、「居酒屋の向こう側で、えらいチコちゃんの話をしてる人がいる、見たら甲斐よしひろやった」って。どんだけ甲斐さん、チコちゃん、好きなんだって。甲斐さんからは最初の頃に電話かかってきましたからね、「面白いねー」って。
事件ですよね。社会現象ってやつですか。怖いようでもありつつ、視聴者からのメールと手紙が1万通を超して。この前も手紙来て、息子3人連れて買い物に行くけど、いつも喧嘩になったり駄々こねたりするんだけど、レジでチコちゃんの話になって、「チコちゃん好き好き」って、その日は気持ちよく買い物できました、みたいな。お母さん(5歳)からの手紙です。泣きそうになりますね。
——チコちゃんは、これからどこへいきますか?
5歳児のまま変わりません。あとはサッカーですから。ボールを持ってる人の自由ですから。これからもパスを回していくんでしょうね。
——チコちゃんは、キャプテンですか?
違います。うーん、なんだろうなー。ミッドフィルダーですかね。ゴールキーパーにもなったりね、ストライカーにもなったりね、自由なポジションですね。
マラドーナですよ、マラドーナ。チコちゃんは、マラドーナです(笑)。
(聞き手・構成、矢部万紀子)
(Bisiness Insider Japan 矢部万紀子 [コラムニスト]より)