インバウンドコラム
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。世界で最初に新型コロナウイルスの感染が拡大した中国湖北省武漢で、1月23日より続いていた都市封鎖が8日、2カ月半ぶりに解除となった。中国メディアによると、市外に通じる高速鉄道や高速道路の利用も再開され、この日一日で、5万5000人が鉄道で武漢を離れたほか、約200便の航空路線が約1万人を市外へと運んだという。
コロナウイルスによる旅行制限で、未使用航空券3.7兆円分
国際航空運送協会(IATA)は7日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界の航空会社は2020年の6月30日までの第2・四半期の初めの時点で航空旅客は70%減少しており、四半期の損失は390億ドル(約4兆1900億円)に達するとする分析を発表。世界的に2500万人の雇用が喪失する恐れがあると警告した。また、第2四半期末までに約350億ドル(約3兆7600億円)相当の航空券の払い戻しが必要になるとみられているが、航空各社の財務状況は脆弱になっているため、バウチャーの発行、もしくは後日の払い戻し以上顧客に対する航空券の払い戻しは不可能との見通しを発表した。
世界の大手旅行会社が所属する業界団体である世界旅行ツーリズム協議会は、新型コロナウイルスによる影響がこのまま何カ月も続くと、全世界で7500万人の雇用と2.1兆ドル(約228兆円)の収益が失われると予測している。
利用者が激減する米航空各社、政府に援助を求める
米国労働省の4月2日の発表によると、米国では3月第4週の新規失業保険申請件数が前週から2倍の665万件に。既往最高水準だった前週の330万7,000件の2倍となり、既往最高水準を更新した。
また、新型コロナウイルス対策としての外出制限が強化される中、米国での航空便利用者数は過去3週間で急減、7日に全米の空港で保安検査場を通過した人は10万人の大台を割り込んだ。このような状況が続くことで経営が逼迫しているデルタ航空など航空各社は、政府に融資や補助金を要請、交渉が本格化している。
オーストラリア、600人の感染者を出したクルーズ船を警察が捜査
オーストラリアでは、先月19日にシドニー港に到着し、感染のリスクが低いと判断され、検査結果が出る前におよそ2700人の乗客全員の下船が認められたものの、その後、体調を崩す人が相次ぎ、これまでに乗客・乗員600人以上の感染が確認され、少なくとも10人が死亡しているクルーズ船「ルビー・プリンセス」に対して、警察が捜査を開始。当時の船内の状況や乗客の下船が認められたいきさつについて詳しく調べるという。同船は、「ダイヤモンド・プリンセス」と同じ会社が運航している。
英国ではDMOにたいしても政府が支援策
ボリス・ジョンソン首相もコロナに感染するなど、国内での感染が広がっているイギリスでは、5日、エリザベス女王(93)が国民に向けビデオメッセージを発表。「決意を持って結束すれば、この病気は克服できる。友人や家族と会える良い日々は戻ってくる」と呼びかけた。女王が毎年恒例のクリスマスのメッセージ以外に、テレビ演説をするのは異例で、故ダイアナ妃の死後や湾岸戦争時など過去4回のみとなっている。
英国政府は、休業を余儀なくされる従業員の給与の80%を、一人当たり月2,500ポンドを上限に政府が肩代わりするなど、次々と経済対策を打ち出しているが、観光による収入源が断たれ存続の危機に直面しているDMOに対して、130万ポンド(約1億7560万円)を財政支援を実施することを7日、発表した。
また、海外滞在中の英国人が加入している海外旅行保険を60日間、自動延長することを英国保険協会(Association of British Insurers)が発表している。英国では現在、厳しい制限を課すロックダウン(都市封鎖)が実施されており13日がその期限となっているが、感染拡大のピークに達したとは見られていないことから、数週間延長される可能性が高いとされている。
ドイツでは、「免疫パスポート」を持った人から職場復帰?
ドイツでは、感染したが回復して免疫を獲得したことが証明された者から、職場に復帰させる「免疫パスポート」の導入が、ロベルト・コッホ研究所やドイツ感染症研究センターなど、複数の研究所の研究者から提案されているという。また、ドイツの大手旅行会社TUIに対して、政府が18億ユーロの融資をすることを合意したことが発表になっている。
(執筆:やまとごころ編集部・外島美紀子)
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※最新版も更新されました
7/7 更新【新型コロナ:各国入国規制まとめ 】
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