インバウンドコラム

【コロナ:世界の動きまとめ】世界の観光業が注目する新しい旅の基準「ニューノーマル」、「免疫パスポート」の有効性。タイ航空、経営破綻

2020.05.20

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前回の当コラム でも厳しい状況にあることをお伝えしたタイ航空が、ついに経営破綻。更生手続きに入った。 世界の動きを追いかけている中で、最近よく目にする言葉が新しい旅の基準「ニューノーマル(New Normal)」。そして最近日本でも語られるようになった「免疫パスポート(Immunity Passport)」など、世界の話題となっている動きをお届けする。

 

政府系エアライン、タイ航空が経営破綻

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、世界が国境を閉ざし行動を制限する中、各国の航空会社は厳しい状態が続いている。タイのナショナル・フラッグ・キャリアであるタイ航空も、運航停止の長期化に耐えることができなくなり、19日タイ政府は破産法に基づき会社更生手続きを裁判所に申し立てることを閣議で決定した。政府系エアラインとしては、新型コロナウイルスの影響による初めての経営破綻となる。

タイ航空はタイ政府が筆頭株主として51%の株を保有しており、同政府は一時は経営救済に乗り出す姿勢を示したものの、国営企業にありがちな高コスト体質や、政治家との癒着、庶民には馴染みが薄い高額の国際線の航空会社である企業を観光業全体が大きな打撃を受けている中で救済することに、強い反発の声が広がり断念した。

同日、タイ航空は「破産ではないため平常どおり事業を続ける」との声明を発表。プラユット首相は「政府は経営再建を全力で支援する」と記者会見でコメントしている。

 

大幅な人員削減をする航空業界、各社

4月21日に経営破綻した豪州ヴァージン航空の買い手候補は現在4社に絞られており、6月末までに最終的な買い手との契約終結を目指し動いている。株主の9割が外資である同社は豪政府の支援を受けることができなかった。

アラブ首長国連邦のエミレーツ航空は、各国による厳しい入国制限によって、旅客需要が大幅に減少したため、いち早く旅客機での貨物輸送に対応するなど、貨物部門が健闘しているものの、全体的な減収は避けることができず、従業員の約3割に相当する3万人規模の人員削減を計画しているという。同社の総従業員数は約10万5000人。実行されれば、新型コロナウイルスの感染拡大で休止状態に追い込まれている世界の航空業界で、過去最大規模の人員削減となる。

カナダ最大の航空会社エア・カナダも、従業員2万人をレイオフ(一時解雇)することが明らかになった。同社の総従業員は約3万8000人のため、半数以上が一時解雇されることになる。パンデミック拡大を抑制するために、エア・カナダは大半の国際線の運航を停止している。

参考までに、日本航空の従業員数1万2750人(関連会社含め3万4000人)、全日空の従業員数1万4242人(2019年発表)であることを知ると、どれだけのインパクトであるかより実感できるだろう。

 

全米旅行産業協会が考える新しい基準『旅のニューノーマル』

現在、世界各国の観光関連機関が、新しい旅の基準となるガイダンス「ニューノーマル」の作成を進めていることは、5月11日の当コラムでもお伝えした。今回はジェトロが伝えた全米旅行産業協会の旅行業における新しい基準となる「旅のニューノーマル(Travel in the New Normal)」を下記にお伝えする。

・旅行業は、従業員と顧客の保護を目的に、作業手順や従業員の習慣の変更、公共スペースの使い方を再設計するなど柔軟な対応をすべきである。

・旅行業は、安全な旅行体験を提供できるよう、ウイルス感染の機会を制限するため非接触方式のソリューションの導入を検討すべきである。

・旅行業は、新型コロナウイルス感染に対抗するための高度な衛生手順を導入し、履行する必要がある。

・旅行業は、従業員の健康状態を把握することを推進し、従業員が新型コロナウイルスで陽性の可能性がある場合は従業員を隔離し、顧客に対し医療措置を提供する必要がある。

・旅行業は従業員が新型コロナウイルスで陽性の場合、米国疾病予防管理センター(CDC)のガイドラインに沿った一連の措置をとる必要がある。

・旅行業は従業員と旅行客の健康のため、飲食サービスにおいて最善の手段で対応する必要がある。

 

世界で議論される免疫パスポートの有効性

新型コロナウイルスに対する免疫をもつことを証明する、いわゆる「免疫パスポート(Immunity Passport)」の導入が、米国やドイツ、英国などの国で検討。チリ政府は世界で初となる「免疫パスポート」の発行を計画している。

日本政府も、抗体検査やPCR検査によって非感染が確認された渡航者に「陰性証明書」を発行することを検討していると、時事通信が15日伝えている。中国や韓国などへのビジネスでの往来再開を求める国内企業の声を受けての対応となるが、時期などは国内外の感染状況をみて慎重に探るとしている。

経済活動を休止させないための手段として、新型コロナの免疫を持つことが確認できた人の仕事や移動の際に証明することができるというものだが、再感染の可能性や免疫検査の精密度に懸念を示す専門家の声も多い。

WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルスの免疫については不明瞭な部分が多く、一度感染した人に免疫があると断定できる証拠はないとして、免疫パスポートなどの証明書を発行する計画に反対。「感染拡大のリスクが増大する可能性がある」として、抗体検査の結果を利用しようとする各国の動きに警告している。

 

自然を求め国立公園に多くの人が押し寄せるイギリス

ロックダウンが一部解除されたイギリスでは、国立公園やビーチなどへ多くの人が足を運んだ。観光局はこうした場所を訪れる際は「慎重に検討した上で」と注意を促しているが、ある国立公園では駐車場が満車になりそうなほど人が押し寄せていたという。

 

6月3日、EUからの入国を解除するイタリアへは観光客が来るのか?

EUでは観光地が続々と再開しており、イタリアでも6月3日からEU諸国からの入国を解除するなど、大幅に制限が緩和される予定だ。しかし一方で、ヨーロッパにおける新型コロナウイルスの「震源地」となった同国には旅行者が当分戻ってこないのではとの懸念もある。また、オーバーツーリズムによって地元住民の生活に影響が及んでいたヴェネツィアは、これを機にマスツーリズムからスローツーリズムへと切り替え、持続可能な観光地を目指すべきではとの声も上がっている。

同じく、新型コロナウイルスによって深刻な被害を受けたスペインでも、政府が6月下旬から観光客を受け入れると発表した。同国の経済は、GDPの約12%を占める観光業に大きく依存している。

 

中国、イタリアに対しオンラインで国際博覧会出展誘致

毎年11月に上海で開催される輸入をテーマとした博覧会「第3回中国国際輸入博覧会(CIIE2020)」は、イタリアからの出展者誘致に向けたプロモーションをオンラインで開催した。新型コロナウイルス感染拡大防止のため中国とイタリアの両国で協力し、「非接触」「クラウド誘致」の方式で行われ、150人近くの関係者が参加した。

 

インド政府は、観光業への救済をしないことを発表

インド政府はこのほど、新型コロナウイルスの影響による経済的な打撃を支援するために、20兆ルピー(約28兆2300億円)の経済対策の詳細を発表したが、観光業への救済はその中に含まれていなかった。インド観光・ホスピタリティ協会協会(FAITH)は、インドにおける観光・ホスピタリティ業界はGDPの約10%を占めていることを主張し、政府に強く反発した。

インドでは3月25日のロックダウン以前から、旅行制限による打撃を受けている。外国人の入国拒否によるインバウンドビジネスへの影響のみならず、ウイルス感染へのリスクを回避するために国内旅行を控える人も増えた。インドのホテル協会は財務大臣に書簡を送り、観光・ホスピタリティ業界では来年には5兆ルピー(約7兆円)の収益損失が見込まれており、間接的な雇用を含む3500〜4000万人が職を失う可能性があると指摘した。

このような事態の際には、対外的な対応が求めらることはもちろんのこと、内側の組織に対しても、どれだけ自分たちの組織が不可欠な存在であるかを、数字と共に示していくことが重要であるとされるが、それが成されていないと何が起こるか、わかりやすい形での例となってしまった。

(やまとごころ編集部:外島美紀子、深谷昌代)

 

やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
詳細はダウンロードしてご覧ください。

各国・地域の入国規制まとめ

 

※最新版も更新されました
7/7 更新【新型コロナ:各国入国規制まとめ 】

 

 

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