インバウンドコラム
米ニューヨーク市、「ワクチンツーリズム」で観光客を呼び込み
米ニューヨーク市は、市外から訪れた観光客を対象に、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を開始した。デブラシオ市長は5月6日、セントラルパークやタイムズスクエアなど、同市の観光地に会場を設けたり、ワクチンバスを随所に設置したりして、1回の接種で済む米ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチン接種を観光客に無料で提供する構想を発表した。これまでは、市内在住者および市内勤務者に限られていたが、ワクチンを接種する人が頭打ちとなり、規制を緩和したことになる。
NYの観光客は新型コロナウイルス感染症の拡大によって昨年は前年比の3分の1に激減したため、ワクチンで観光客を呼び戻す狙いもある。国内外の観光客はニューヨーク市内の薬局で簡単な書類に記入するだけで、すぐにワクチンの接種を受けることができる。
▲ニューヨークの街頭の無料PCR検査所、今はこれがワクチン接種所へと変わりつつある
アラスカ州でも6月1日より、主要空港で観光客がワクチンを打つことができるようになる。アメリカではこの他にも、カリフォルニア州、テキサス州、アラバマ州、アリゾナ州など、少なくとも22州で観光客にワクチン接種を提供しているため、メキシコなどの国々からワクチン接種目当ての旅行者が殺到。これにより、再び感染が拡大する可能性も指摘されている。
米デルタ航空、新入社員にワクチン義務接種を付けへ
デルタ航空の最高経営責任者(CEO)のエド・バスティアン氏は、新入社員に対してワクチン接種を義務付けることを明らかにした。同氏はさらに、デルタ航空の従業員の60%がすでに少なくとも1回目の接種を受けており、最終的には80%の従業員が接種を受けるとの予想を発表。今後は長距離国際線においても、ワクチン接種済みの乗務員のみで運航することも検討しているという。
米国内で若年層へのワクチン接種加速、キャンペーン実施で接種を訴求
アメリカでは、政府が民間と連携し、あらゆる手段を講じてワクチン接種を奨励している。バイデン大統領は7月4日の独立記念日までに成人の70%が少なくとも1回の接種を終えることを目指しているが、ワクチンに忌避感を抱いている国民が一定数いるため、彼らに対していかにアプローチできるかが課題となっている。そこで考案されたのが、民間との連携だ。
例えばニューヨーク州のクオモ知事は、大リーグのニューヨークヤンキースかニューヨークメッツが試合を行う際にスタジアムでワクチン接種を行うと発表した。しかも、スタジアムでワクチンを打てば、ヤンキースかメッツの無料観戦チケットがもらえるという仕組みだ。ニューヨークのアメリカ自然史博物館もワクチン接種会場となっており、接種すれば無料のチケットを受け取ることができる。コネティカット州はレストランと提携し、ワクチンを接種すれば無料のドリンクを提供すると呼びかけた。ワシントン州もビールを1杯無料で提供。また、大手食品会社のクリスピー・クリームは、ワクチン接種カードを提示すれば、ドーナツ1個を無料でプレゼントしている。カイザー・ファミリー財団が行なったワクチン接種の意識調査によると、18歳から29歳までの米国人のうち、およそ15%が「様子を見る」と答え、13%が「絶対に打たない」と回答している。
米国では、10代のワクチン接種も開始
米国では5月13日、12歳から15歳の子供を対象にしたファイザー製ワクチンの接種が開始した。これまでは16歳以上を対象に使用が許可されていたが、ファイザー社が行った12歳から15歳までの子供を対象とした臨床試験で、ワクチンが100%有効であり、忍容性が高いことが示されたため、接種対象年齢が引き下げられた。
米CDC ワクチン接種で一部例外除き、原則マスク不要の新指針発表
こうした中、アメリカのCDC(疾病対策センター)は新たなガイドラインを公表し、ワクチン接種を完了した場合は、原則としてマスクの着用の必要はなく、他人とのソーシャル・ディスタンスも取らなくて良いという新指針を発表した。国内旅行においては、事前の検査や自己隔離も必要ないとしているため、航空需要がさらに回復するとみられている。一方で、航空機を含む公共交通機関や病院などでは引き続きマスクの着用が求められる。
ワクチンの世界的普及に向け、特許権放棄指示を表明
バイデン大統領は5月5日、世界貿易機関(WTO)で提案された、新型コロナウイルス感染症ワクチンの特許権放棄を支持すると表明。米国がワクチンを独占しているという批判がある中、ワクチンの世界的な普及に取り組む姿勢を見せた。通商代表部(USTR)のタイ代表は、このバイデン大統領の発言後に声明を発表し、新型コロナウイルス感染症のパンデミック対応で各国を支援するため、特定の知的財産権を一時放棄する措置を支持すると表明。タイ氏は、特許放棄に向けてWTOで文書を通じた交渉に参加するとしたが、WTOには全会一致の原則があるため「交渉には時間がかかる」とも指摘している。
米国の死者数は過去10カ月で最低レベルに
ワクチン接種が進む米国では、新型コロナウイルス感染症による死亡者数が1日あたり平均約600人にまで減少し、過去10カ月で最低レベルに達した。新規感染者数も1日あたり平均約3万8,000人に減少し、9月中旬以来の最低水準となっている。1月上旬のピーク(1日25万人)から85%減少している。
最新記事
国内観光が回復する中国、海外との往来も活発化。日本政府 中国からの入国規制を緩和 (2023.03.01)
インバウンド誘致に積極的な東南アジア、マレーシア・ベトナムなどインド観光客取り込みへ (2023.02.22)
中国で団体旅行一部解禁も日本は含まれず、東南アジア諸国は中国からの旅行需要取り込みへ (2023.02.08)
韓国の旧正月で国民の半分が国内移動、MZ世代にリベンジ海外旅行熱。東南アジアが一番人気 (2023.02.02)
春節で観光需要急増の中国、人気の旅先は香港・タイ、訪日は限定的 (2023.01.25)
タイ、2023年の外国人旅行者2500万人予測。春節には中国から10万人訪タイか (2023.01.18)
【徹底予測】2023年の春節の旅行動向 訪日旅行は回復するのか? (2023.01.13)
香港、中国との往来制限緩和初日に3.5万人が越境、春節の「大移動」再開へ (2023.01.11)