R.I.P.横田年昭さん
日本におけるジャズフルートの草分けと言われた横田さん。
実際には、ジャズというよりはジャズロックのジャンルで一世を風靡されたフルーティストでした。
1970~71年にかけて立て続けにリリースされた「フルート・アドヴェンチュアー」「原子共同体」は、2000年代に入ってからレア・グルーヴとして海外でも再評価され、オリジナルのLP盤は中古市場で数十万という高値で取引されていたこともありました。
カバー曲が中心の「高翔」「エキサイティング・フルート」も一聴して横田さんの演奏と判る珠玉のフルートアルバムです。
これらリーダーアルバムの他にも、「猪俣猛とサウンドリミテッド」のソロフルーティストとしても素晴らしい演奏を残されています。
その印象的なソロは、バップ的なものではなく、選び抜いた音を息の持つあらゆる表現とともにひとつのコード上に叩きつけるもの。
エモーショナルにして過激。
しかしどれほど荒ぶる演奏をしても、決して端正な美しさを失わない、唯一無二のフルートパーフォーマンスでした。
「フルート・アドヴェンチュアー」より Reza
「エキサイティング・フルート」より SPINNING WHEEL(Blood, Sweat & Tears)
の2曲をお聴きください。
師匠は・・・と言っても、私は弟子ではなく、いわば"押しかけ助手"でした。
Yahooにブログを持っていらして、私が書いたCD評を読まれ、また宅録に興味をお持ちのようでした。
それで、初めてライブにお伺いした際に宅録の方法とホームページについてのご相談を受けたのをきっかけに、2008年から数年間、伊豆のご自宅にお伺いして録音のお手伝いをするようになり、さらに作りかけで放置されていたホームページやYouTubeサイトの制作と運用をすべて引き受けました。
この頃の横田さんは、長い白髪に白髭、和服に地下足袋といったいでたちで、"伊豆の仙人"と呼ばれたりしていました。
年齢を重ねて、演奏も穏やかなものに変わり、和笛や手作りの楽器をも駆使した新しい独自の音世界を紡いでおられました。
笛については何も教えてくださいませんでしたし、私の方からも教えを乞うたことはありません。
ただ、録音助手として至近距離で第一級の音を聴き、奏法を目の当たりにしたことは、この上なく貴重な体験でした。
横田さんからいただいたものの大きさは計り知れません。
制作のお手伝いをしたCDの第一作「海童房の日々Ⅳ」より「亡き王女のためのパヴァーヌ」です。
近年は次第に音楽から遠ざかられ、私がお手伝いする機会も無くなっていました。
1年ほど前にお電話いただき、
「フルート・アドヴェンチュアーのLPが新しく出たんだよ。あげるから遊びにおいでよ。」
「伺いたいのはやまやまなんですけど、四国で母の介護をしているんですよ~」
などとお話したのが最後になりました。
先に旅立たれた奥様と猫ちゃんたちと一緒に、師匠が天国で幸せに暮らされることを願ってやみません。涙
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