2024年 09月 29日
9月最後の土曜日に |
起床後、よたよたと犬と散歩に出た。
"Fear The walking Dead"のゾンビみたいな歩き方だと思った。
戻ってきてドイさんがくれたポトスを一回り大きな鉢に移したり、昨日から遅々と編んでいるスカートの裾のばしをしたり。
麻のスカートで長いのは長いけれど、脹脛のいちばん太いところで止まる長さなので野暮ったく見えるのだ。もうほんの少し長くしたくて、すでに細い糸でレース編みしている裾なので、下手なりにそれをさらに編んで延ばしている。
きょうはジムに行きたくないなあ、とぐずぐずしていて、行きたくないときこそ行くべきだ、と決めて行った。
あきらよりもいくつか年下の顔なじみの男の子がカウンターにいて、人懐こく話しかけてくる。
この子は最初メンバーとして来るようになって、人見知りだったのに、このおばさんは害がないと安心したようだ。
夏が終わったのにまだいるから、ここの大学に行ってるの、と訊いたら、行きたいのはテキサスの大学なんだけど行くほどのお金の余裕がないからオンラインで受講していると言った。
こないだ、彼は聖書を読んでいた。
読み終った本は、”A Tree Grows in Brooklyn"
Betty Smith.
1900年初期のニューヨーク、ブルックリンに住む家族の物語である。
当時の貧しい庶民の暮らしが描写されている。
Semi-autobiographical novelというから、著者自身の生い立ちそのものではないが、体験ををもとにした小説だ。
ほかに貧しい生い立ちを書いた作品”Angela's Ashes(by Frank McCourt)” はアイルランドはリムリックを舞台にしたバイオグラフィーであった。
こういう類を好む。
Netflixの新しいドラマシリーズ、ニコル・キドマン主演のミステリーの第一話を観始めて、ああ、こういうのはいやだ、とやめたのは、いかにも上流社会のひとばかりが集う結婚式だかで物語が始まったから。
皆そつなく着飾って、自分ばかりでなく、連れや子息までが完璧な装いをしていて、ナルシストであることに留まらず、周りのすべてのひとを鑑定していて、彼らと自分を常に比較している類のひとたち。
いくら財産があるのか知らないが、なんと卑しいことだろう。
貧しいひとは、その日を暮らすのが手いっぱいで人の目を気にする余裕がない。
うわべをつくろうほどの気持ちの余裕がないから、嘘をつくこともない。
なりふり構わず、がむしゃらに生きている。
こういうひとの物語には嘘がない。
そういう姿に心打たれることがあるから、富んでいるひとの話を読むより、貧しいひとの話を知りたい。
わたしの父もまた貧しい家に育ったから、そんな暮らしの苦労話を知ることが、父への供養になるという思いもある。
父とともに当時を生きていれば苦しかろうことが、永いときを超えれば喜劇を観るように笑えることもあるが、辛苦を忘れているのではなかった。
例えば、父の少年時代。
電気代支払いができなくて、賢い父が細工をして隣人の配線を拝借したとか、祖父母が飯屋を営んでいたころ、きれいな女給がいて、ときどき客と二階に上がっていったとかいう話を、父の晩年になってやっとわたしに話をして聞かせた。
父が飄々と穏やかに話をするのを寝床のとなりで聞いていると、どちらの話の犯罪臭さも生々しさもしなかった。
富んでいるのが悪いのではない。
こつこつと働いて築いた富を誇らしく思うことが悪いというのではない。
彼らには彼らの物語があろう。
夏が枯れていく。
霧の濃い朝もある。
かといって、まだコーデュロイを着るほどでもない。
もうそろそろ麻は仕舞う季節だろうけれど、もうしばらくは、いいだろう。
この夏はスカートを着ると決めて、ほんとにスカートばかり着ていて、その快適さがすっかり気に入っている。
これから寒くなってもスカートのままでなんとかならないかしら。
むかしの写真のなかのロシアのおばあさんみたいな恰好をして寒い季節を過ごすのも楽しそうな気もする。
by ymomen
| 2024-09-29 07:24
| アメリカの季節
|
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Comments(6)
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nanamin_3 at 2024-09-29 13:36
ロシアのおばあさんファッション、憧れる。原色の花模様のスカーフを頭から被って、たくさん着込んで着膨れて。リアルマトリョーシカみたいな感じ。ふふふ。
1
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macchi73 at 2024-09-29 20:52
うわー、ちょっと色の違うレースの縁取り、素敵ですね!
一手間かけた手直しが良い感じにできた衣服って、着てるとなんだか温かい気分になりますよねえ
一手間かけた手直しが良い感じにできた衣服って、着てるとなんだか温かい気分になりますよねえ
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ricabando at 2024-09-30 00:13
ニコール•キッドマンの連続ドラマ
我慢して観たのだけれど、思いがけずのドンで返しがあって、面白かったですよ。
それと。。始まりの結婚式ダンス
あれは魅力的です、あれを観たいが為に
最終回まで観た気がします。
何故か?惹かれるですよね。笑
我慢して観たのだけれど、思いがけずのドンで返しがあって、面白かったですよ。
それと。。始まりの結婚式ダンス
あれは魅力的です、あれを観たいが為に
最終回まで観た気がします。
何故か?惹かれるですよね。笑
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ymomen at 2024-09-30 01:33
ななみんさん
着ぶくれると動きにくいのが難ですけど。
マトリューシカのあの独特の色合い、好きなんですが、自分が着れば、くらくらしそうです。
KENZOさんのコレクションには、そういう雰囲気のドレスもありましたね。
着ぶくれると動きにくいのが難ですけど。
マトリューシカのあの独特の色合い、好きなんですが、自分が着れば、くらくらしそうです。
KENZOさんのコレクションには、そういう雰囲気のドレスもありましたね。
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ymomen at 2024-09-30 01:38
macchiさん
わたしが長さを足すまではレースでしたが、わたしが編み始めた先は、ただ糸が絡まっているというふうにしか見えません 笑。
こういう糸があったからこういうことをしましたが、なかったら、似た色の布を縫いつけていたと思います。
あるものでなんとかなれば。。。。
わたしが長さを足すまではレースでしたが、わたしが編み始めた先は、ただ糸が絡まっているというふうにしか見えません 笑。
こういう糸があったからこういうことをしましたが、なかったら、似た色の布を縫いつけていたと思います。
あるものでなんとかなれば。。。。
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ymomen at 2024-09-30 01:45
りかさん
そうでしたか。
どんでん返しですか、
そういうの、好きなので、いつかやっぱり観たいかな?
ゲイラのような場所、上流社会のあらたまった場所に行くと、身の置き所がありません。
一対一で対面するとなればそう悪くもないのですが、大勢でこういう類のひとたちが群れていると不気味な体臭を発する獣になるような気がするのです。
そうでしたか。
どんでん返しですか、
そういうの、好きなので、いつかやっぱり観たいかな?
ゲイラのような場所、上流社会のあらたまった場所に行くと、身の置き所がありません。
一対一で対面するとなればそう悪くもないのですが、大勢でこういう類のひとたちが群れていると不気味な体臭を発する獣になるような気がするのです。