2024年02月02日

約50年逃亡していた桐島聡容疑者の生活は、日本人の老後の近未来の姿

ここ最近に印象に残っているのは、交番などで指名手配の写真をよく見かけた桐島聡容疑者だと名乗る男が、亡くなったというニュースです。

亡くなるまでの約50年の間、どのような生活を送っていたのかが気になるところですが、その一端がわかる記事が令和6年(2024年)1月29日の東京新聞に掲載されていました。

記事のタイトルは「桐島聡」名乗る男が死亡…真相明かすことなく 約40年暮らした藤沢市のバーで「うーやん」と親しまれていたになりますが、一部を紹介すると次のようになります。

『1974〜75年に起きた連続企業爆破事件で、爆発物取締罰則違反容疑で指名手配されている桐島聡容疑者(70)を名乗る男が29日、入院先の神奈川県鎌倉市の病院で死亡した。捜査関係者への取材で分かった。末期の胃がんで、重篤な状態だった。

警視庁公安部はDNA型鑑定で男の身元確認を急いでいる。男が本人と確認されれば容疑者死亡のまま書類送検する方針で、50年近い逃亡生活の全容解明は難しくなる。

捜査関係者によると、男は「内田洋(うちだひろし)」と名乗り、80年代から神奈川県藤沢市の工務店で住み込みで働いていた。

金融機関の口座を持っておらず、給料は現金で受け取っていた。事件後の海外への渡航歴は確認されていないという。

1年ほど前から胃がんを患い、今月入院。免許証や健康保険証は持っておらず、自費で診療を受けていた。

入院当初は内田を名乗っていたが、25日に突然、「私は桐島聡だ」「最期は本名で迎えたい」と病院関係者に伝えた。

公安部が25日から任意で事情を聴いたところ、桐島容疑者しか知り得ない話をしていたという』

以上のようになりますが、「事件後の海外への渡航歴は確認されていない」と記載されているため、約50年に渡って日本にいた事になります。

また冒頭で紹介した東京新聞の記事や、他の新聞の記事に記載された情報を整理してみると、桐島聡容疑者は次のような生活を送っていたようです。

・1980年代あたりから、神奈川県藤沢市にある工務店で働いていた
・自分ではアパートなどを借りられなかったので、勤務先に住み込みだった
・65歳になっても年金を受給できなかったので、死亡する直前の70歳まで働いていた
・健康保険や国民健康保険には加入していなかったので、保険証は持っていなかった
・歯科医院で診療を受けるのは金銭的に難しいので、歯がなくなってしまった
・がん治療を受けるのは更に難しいので、末期状態になるまで放置していた

歌手や役者して活躍し、現在は日本維新の会に所属する参議院議員を務めている、中条きよしさんの国民年金の未納問題が、令和5年(2023年)1月頃に話題になりました。

国民年金の保険料には納期限(納付対象月の翌月末日)から2年という時効があり、これを過ぎると本人が納付したいと思っても、納付できなくなってしまうのです。

また国民年金に加入するのは今のところ、20歳から60歳になるまでの40年間になります。

未納問題が話題になった当時の中条きよしさんは76歳であり、国民年金に加入する年齢の上限である60歳から16年が経過していたため、すべての保険料が時効を迎えていたと推測されます。

こういった事情があるため、未納問題は何も解決せずに、うやむやのまま終わってしまったのです。

ただ昔は徴収が厳しくなかったので、中条きよしさんと同じように国民年金の保険料を未納にしていた方は、けっこう存在していたと思います。

そうすると65歳になっても、国民年金から支給される老齢基礎年金を受給できない場合が多いため、桐島聡容疑者と同じように70歳になっても、働き続ける必要があるのです。

厚生年金保険に加入している方は老齢基礎年金に上乗せして、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金を受給できます。

こういった方であれば、年金と貯蓄の取り崩しで生活できると思いますが、将来的にはわからないのです。

その理由としては平成16年(2004年)に、マクロ経済スライドという制度が創設されてからは、年金制度を維持するために毎年少しずつ、年金額を減らすようになったからです。

例えば令和5年(2023年)度はマクロ経済スライドによって、前年度より0.4%年金額が減りました。

また令和6年(2024年)度もマクロ経済スライドによって、前年度より0.4%年金額が減る見込みです。

これによって70歳になっても働かないと生活できない方が、将来的には増えていく可能性があります。

また年金額が減ったため、生活費に余裕がなくなり、国民健康保険の保険料の納付を長期に渡って滞納すると保険証が没収され、短期被保険者証や資格証明書が発行されます。

後者の資格証明書を病院などの窓口に提示した場合、いったんは医療費の全額を負担し、後日に還付を受けるという形になります。

そのため還付を受けるまでの間は、自費で診療を受けていた桐島聡容疑者と変わりがないのです。

こういった点から考えると桐島聡容疑者の生活は、日本人の老後の近未来の姿なのかもしれません。
posted by FPきむ at 20:43 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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