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今回は、映画「ゴジラ」(1954年)の海外レビューを翻訳しました。
「ゴジラ」と言えば、説明は不要でしょう。1954年の公開以降、国内外で計30本以上の続編があり、今年になってからも海外版の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」が公開されて人気を集めているのですからね。
海外にも強い支持者を持つこのシリーズ、今回は映画批評サイト「IMDb」に投稿された初代ゴジラのレビュー(投票数:26,416件、平均点:10点満点中7.6点)を翻訳して、海外ゴジラファンの声をお届けいたします。
↓では、レビュー翻訳をどうぞ。
※ 2019/12/25:次回更新日時を変更しました
● 「最も重要な映画(私にとって)」 評価:★★★★★★★★★★
これは私が映画業界で働くきっかけを作ってくれた映画だ。鑑賞した当時の幼かった私にとっては、過去最高の映画だった。何度も何度も繰り返し観たものだ。そびえ立つような巨大な怪物に怖れを抱きながら、同時に強く惹きつけられた。心底恐れを感じ、憂鬱にさせられながら、熱くさせられもした。とにかく私の感情は激しく揺さぶられたのだ。ゴジラの登場する悪夢を何度か見ることになってしまったものだが、同時にこの映画のすべてを愛してもいた。後になってゴジラには続編があり、何本もの作品があることを知った時には狂喜したものだ。
今でも、スクリーンに登場するこの「ビッグG」のことはずっと愛している。ただし子供時代の私は、この作品の本当のメッセージは理解していなかった。その後、成長するにつれ、ゴジラが放射熱線を吐く単なる巨大モンスターでないことに気づいていった。 ゴジラは戦争の象徴だったのだ。このモンスターを生み出したのは我々であり、我々を破壊していたのは、実は我々自身だった…。そのことに気づいた時、ゴジラは私にとって真の傑作になった。
● 「巨大な傑作だ!」 評価:★★★★★★★★★☆
1933年の「キングコング」と共に、このオリジナルの「ゴジラ」も最も重要なモンスター映画だ。そして、すべての映画愛好家が少なくとも一度は鑑賞するべきと思える数少ないホラー映画でもある。
なぜかって? もちろん、この映画には安っぽいモンスター映画をはるかに超えるものがあるからに決まっているだろう!この映画は黙示録さながらの暗いSFの形を取りながら、核と新たな兵器への恐れが表現されているんだ。と言っても、私としてはゴジラの裏側に隠された深い意味に入り込むつもりはない。一番大事なのは、体にアドレナリンが駆け巡る圧倒的なアクションシーンを鑑賞することなんだから。理論武装をしてから観る必要なんて一切なしだ。 私がこの映画を深く愛する多くの理由の一つ(キングコングにも共通している)は、我々が見たくてたまらない巨大モンスターを目にするまで、長々と退屈なスピーチを聞かされたりして延々と待つ必要がないからなんだ!ゴジラの記念すべき初登場は、映画開始からたったの20分後だ。そして、そこから楽しくも忙しい狂乱のモンスター・パーティが始まるぞ! ただ、最初はちょっと不満を感じるだろう。というのも、ゴジラは海から来ることになっているので、最初の舞台は島だからだ。だが安心してもらいたい。ゴジラはすぐに大都市東京へ向かってくれる。もちろん、ヤツはあの圧倒的パワーと放射熱線で東京を破壊したくてたまらないからだ!そしてゴジラは期待通り日本の首都、東京で思う存分暴れまわってくれる。建物を破壊し、街を火の海にする姿は実に印象に残る。まさに伝説的なレベルだ。 モンスターのコスチュームを身に着けた役者は非常に良い仕事をしてくれた。個人的にはコンピュータで作られた特殊効果よりずっと好ましい。注意深く再現されたであろう東京のミニチュアセットにも魅力がある。そしてあの力強い音楽も忘れちゃいけない。あのおかげで、ゴジラの恐ろしさも一層引き立つというものだ。スタッフたちはみんな最高だ! ゴジラには山のように続編があるが、それも初代のゴジラがあれほど素晴らしい作品だったからこそだ。それらの続編も観ていくつもりだが、どの程度期待していいかは分からない。まあ、初代ゴジラの半分くらいの出来であってくれたなら、十分満足できるんだが。
● 「ゴジラ:圧倒的な日本映画」 評価:★★★★★★★★★★
この作品は傑作だ。昔からゴジラシリーズの大ファンで、この初代ゴジラを観たのは12歳くらいのころだったと思う。心から感銘を受けた最初の作品だった。その頃、周りの友だちは日本について知っているのはポケモンくらい、観ている映画は普通のハリウッド映画くらいといったものだったんだが、僕はその時すでに良い映画を見極めるセンスを持っていたわけだ。最近になってからもう一度ゴジラを鑑賞したけれど、最初に観た時の強烈な印象は何も失われていなかった。
この映画はすべてが完璧だ。まずはあの独特の雰囲気。映画の出だしは最高のホラー映画としての価値がある。観客が目にするのは破壊、恐怖、苦しみ、そしてこれから何が起こるのか分からないもどかしさだ。観客は身を乗り出してスクリーンに釘付けにならざるを得ない。そしてゴジラが登場した時の、背筋が凍るようなあの感覚。この醜い巨大生物は、たとえ外見が似通っていようとも、平凡なアメリカ映画に出てくるモンスターとは比べ物にならないほど恐ろしい。 この映画のもう一つの強みは役者たちの演技だ。風変わりで孤独な芹沢博士は、最後には温かい心を持つヒーローとなる。このキャラクターは実に印象的で、芹沢博士を演じる平田昭彦の演技には心をつかまれた。最後は泣きそうな気持ちにさせられたものだ。好奇心旺盛だが頑固者の山根博士を演じる志村喬、そして彼の美しい娘を演じる河内桃子も素晴らしい。これに宝田明が演じる尾形秀人が加わった4人の関係は、とてもうまく描かれている。彼ら4人を結ぶのは単なる愛と尊敬ではなく、もっとずっと深いものがあるんだろうなと感じさせてくれるんだ。 彼らが登場するのは1時間半ほどに過ぎないが、同時代の3時間や4時間のハリウッド映画に登場するキャラクターたちよりもよっぽど本物らしくて、多様で、強い印象を残してくれる。日本のほうがはるかに先へ進んでいたようだ。また、通常とはだいぶ異なる見せ方ではあるけれど、日本文化の一端を垣間見せてくれるという意味でも興味深い作品だった。また、この時代の作品としては特殊効果も優れていたし、それをとらえるカメラワークも実に緻密かつアーティスティックなものだったと思うね。 東京湾に現れたゴジラは電車を破壊し、送電線を断ち切り、長い時間をかけて組み立てられたであろうミニチュアの街を一瞬で踏み潰してゆく。個人的にはゆっくりと倒れていく塔の描写が好きだったが、これらのシーンはどれも強烈に心に残った。忘れがたさという意味では、今の技術を使っても、これほどのものを作り出すことは出来ないだろう。 第二次世界大戦の直後で戦争の記憶が生々しく残っていた頃だったからこそ、こんなマジックを生み出せたのかもしれない。また、サウンドトラックも忘れちゃいけない。暗く不気味な音楽だけど、同時に堂々としていて、どこか威厳のようなものを感じるメロディでもある。そして、一度聞いたら耳から離れない。だからこそ、何十年もの間、繰り返し繰り返し使われ続けてきたんだろう。モンスターの叫び声も、同じように耳に残り続けている。 この作品は四部構成になっていて、互いのバランスも良い。最初は大惨事を扱うホラー映画として始まり、続いて科学と政治を扱うシリアスなドラマになり、次には凄まじい破壊が描かれる。そして最後は人間性と哲学的なメッセージで締めくくられるわけだ。 4つの素晴らしい映画を1つにまとめたこの傑作には、退屈する瞬間がない。僕は毎月観続けることだってできる。まだ観たことがない人はぜひ観るべきだね。あなたの傑作リストに新たな一本が加わることは確実なんだから。
● 「嬉しい驚き」 評価:★★★★★★★☆☆☆
授業でゴジラのオリジナルを観ることができて、とっても興奮したよ。まあ、特殊効果が陳腐なものだったと感じたことは認めざるを得ない。とは言え、僕が特殊効果について語るのは適切じゃないのかな、とも思う。僕は映画学校に通っているから、最先端技術を駆使した映像を普通の人よりはるかに見慣れている。そんなわけで、ゴジラの特殊効果を安っぽいとか言うのはアンフェアかもしれない。
この初代ゴジラは単なるモンスター映画ではなく、ドラマからサスペンスまで幅広いジャンルをカバーしている。トーンは終始一貫して暗く悲劇的だ。そんな中、キャラクターの三角関係は実に効果的な味付けをしてくれている。全体としても役者たちは内面の葛藤を非常にうまく表現できていた。
そしてなんと言っても素晴らしいのは、今に至るまで続く長いシリーズをここで確立させたということだ。映像で反核兵器のメッセージを表現できたことも素晴らしい。今の時代にも十分に通用するメッセージだ。ゴジラは人間の無知と油断を象徴するものだが、そういった意味では、監督の本多 猪四郎は本当の意味でのグロテスクなモンスターを作り出してくれたのだと思う。その視点から見ると、最近の作品に出てくるゴジラは初代ほどには生々しくも感じられないし、恐ろしくもない。街を破壊するモンスターを真剣に受け止めようという気持ちになかなかなれない。
ただ、これほど長い旅を続けて大きな支持を受けているゴジラについて、僕なんかが批判めいたことを言うのもどうかな、という気持ちがあるのも確かだ。少なくともオリジナルのゴジラは、世界で最も認知された日本文化のシンボルだった。そして、その地位に値する存在だとも思う。改めて、監督の本多猪四郎は素晴らしい仕事をやってのけたのだと感じる。 最近のゴジラだって、やっぱり最初のゴジラがあってこそだし、ゴジラは後に続く他のSF映画の基礎ともなった。僕は皆に鑑賞されるべき作品だと思う。最近のゴジラを観たことのある人は多いだろう。でも、このモンスターがそもそもどこからやってきたのか、どれほど長い道のりを経てここにいるのか、ぜひ自分の目で確かめるべきだ。
● 「緊迫感があり、よく練り込まれた物語」 評価:★★★★★★★★☆☆
ゴジラが初めてにこの世界に解き放たれたのは1954年、もう60年以上も昔の話だ。ゴジラは一つのジャンルを作った作品だった。そして、同じジャンルの他の作品を評価する基準にもなった。公開当時の時代を反映した作品でありながら、同時に時代を超えて人々の心をとらえ続ける稀な作品でもある。
数あるゴジラ映画の中でも最高なのが、この初代ゴジラだ。モンスターの全体像を見せるまでにかなりの時間をかけるという手法も興味深く、スピルバーグがジョーズで同じことをやったのは、ゴジラから20年も経った後だ。今の映画でも、この手法は観客の緊張感と期待を高めるうえで非常に効果がある。物語を積み重ねた上でようやく登場したゴジラの全体像は、これぞ本物の驚きと言えるものだった。 強烈な印象を残すゴジラだが、実際にゴジラが登場するシーンの長さは、映画全体が100分未満であることを考えても、実はかなり短い。モンスターの存在感を高めるために登場シーンを長くするのではなく、逆に短く抑えるというやり方は実に面白い。 この映画は、あの時代としては素晴らしい特殊効果でも人々の記憶に残っている。もちろん、今日の映画と比べれば時代遅れには違いない。ゴジラは明らかに着ぐるみをつけた人間だし、ミニチュアを使ったセットも、万人を納得させられるようなものではない。とはいえ、あの時代において印象的なものであったのは確かだ。製作者たちが試みたのは、観客が想像力を働かせられる映像を提供することだ。そして結果として、観客の頭から離れない伝説的な映像が出来上がった。さらに、足りないものを埋め合わせるだけの物語もあった。 ゴジラはモンスターが暴れまわる映画であると同時に、暴走した科学技術と、そこから生まれた結果を描いたものでもある。これはある意味、映画が製作された時代が反映されたものでもあるのだろう。第二次大戦末期、アメリカは日本に二発の核兵器を投下した。また、通常兵器による大規模な爆撃も行った。この映画は、まだその余波が残る頃に作られたのだ。また、冷戦の初期段階において核実験が繰り返されていた時期でもある。この映画はその時代の感覚が強く感じられるものになった。そして感情を掻き立てる力もある。こうした要素が、同じジャンルの他の作品から感じられることはほとんどない。 この要素のおかげで、ゴジラは驚くほど知的な映画にも感じられる。同じ1950年代にイギリスのBBCによって制作されたナイジェル・ニール脚本の「クオーターマス・シリーズ」にも匹敵するシナリオだ。両者に何らかの具体的な関係があるとは思っていないが、世界を襲う恐怖に科学で立ち向かうという点において、両者のシナリオはかなり似通ったものになっている。 ゴジラの基本的なアイデアは、失われたはずの古代の力が科学の発達によって今の世によみがえり、現代の世界を恐怖に陥れる…というものだが、これもニールの脚本に極めて近いものを感じる。そして脅威の正体を見極めようと努力する科学者が登場し、権力者たちと衝突するというのも、やはり「クオーターマス・シリーズ」を思い起こさせる部分だ。実際、1950年代のその他のSFには比較的頻繁に登場した要素でもあった。だが、ゴジラほど思慮深い作品になっているものは稀だ。 おかげで、ゴジラは時代を反映した作品でありながら、同時に時代を超えて鑑賞され得る作品となった。過去の恐怖が現代に甦るという要素は決して今も色あせていないものだし、原子力もまだ我々を脅かし続けているではないか。 ゴジラにどう対処するかという議論は、ある脅威をストップさせるために、さらに恐ろしい兵器を使うことが正当化されるのかということでもある。これは冷戦時代の軍拡競争を思い起こさせるだけではない。無人機による戦争行為は許されるのか?大量監視社会は許されるのか?つまり「結果は手段を正当化できるのか?」という現在の我々が抱く根元的な疑問とダイレクトに繋がりを持っているのだ。 だからこそ1954年に作られたゴジラは、公開当時同様、今も観るべき映画としての価値を持っており、数多くの続編やリメイクが作られた後でも独創的な映画としての地位を占めているのだ。この映画はとてもよく練り込まれたSF作品であり、今後数十年は鑑賞し続けられるだろうと思う。
(翻訳終わり)
なお、次回の更新は 1月17日(金曜日)です。よかったら、また見に来て下さいね。
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