読者はすでにお気付きのようにこのブログは時々文章の終わりなどを(笑)で締めくくっている。
たとえば、前回のブログでは、
「いまさらタンノイなんて・・」という気もするが、そこはそれ、破格的な安いお値段だったらと、少し食指をそそられたのも事実(笑)。
といった調子。
なぜ「(笑)」を付けるのかと、訊ねられたとしたら「音楽やオーディオなどの記事はとかくシリアスな内容になりがちなので、その雰囲気を少しでも和らげたいため」と答えるしかないが、はたしてその意図はちゃんと読者に伝わっているのかな・・。
たとえば「己の卑しさ、醜さ」を「(笑)」でごまかしているんじゃないかと勘繰られたりして‥(笑)。
折しも、格好の本があった。
本書の「297頁」に「(笑)でこの笑いは伝わるのか」(武田砂鉄)というエッセイがあったので、そっくり引用させてもらおう。
「インタビューをしたり逆にインタビューを受けたりする仕事なので、とにかく繰り返しインタビュー原稿のチェックをしている。
自分が参加しているわけではない対談やインタビューを読むと「この人たち、とってもスムーズに会話をしているな」と感心するのだが、実際にスムーズだった場合とそうではない場合があるはずで、おおよその「スムーズ」は編集作業によって作り出されている。
たとえばこんな発言があったりする。
「いや、だから、そうですね、その社会の今っていうのは、正直なところ、ちょっとあんまり良い方向に向かっていないってところっていうか、でもそれが、どこからきてどこに向かっているのかが、あんまりよく見えない、ってところはあるという風な感じじゃないですか」
話が下手くそな人だと感じるかもしれないが、人が誰かに向かって話す様子を正確に文字起こししてみると、これくらいのものである。
でも掲載されるときには、
「今、この社会を見渡していると、正直、あまり良い方向には向かっていないですよね。そして、どこから来て、どこへ向かっていくのかさえ見えない、これが不気味なのです」
などとスムーズに読める文章になる。こういう作業が繰り返され、掲載される原稿が出来上がっていくのだ。
<感情表現は繊細>
いまだに慣れないのが「(笑)」の扱いで、送られてきた原稿に入っていても、自分がまとめる原稿に入れても「果たしてここに「笑」を入れていいのだろうか」と悩む。
この(笑)に基準はない。その場でこれくらいの笑い声がしたから入れる、これくらいでは入れるべきではない、なんてものはない。
どんなにささいなことでもニコニコ笑ってくれる人がいれば、仏頂面で淡々としゃべり、そんな人が少しだけ歯を出してニコリとする場合もある。
後者のニコリのほうが貴重なのだが、その笑いを「そんなことないですよ(笑)」などと表現すると、あたかもそこだけ興奮しながら面白がったように読まれてしまう。
対談やインタビューの盛り上がりを伝えたい気持ちはあるので、どこかに「(笑)」を入れたくはなる。「ワッハッハ」や「アハハハハ」と、具体的な笑い方が伝わるように表記されている場合もあるが、こうなると今度は緊張感が崩れる気がして、あまり好きではない。
インタビュー原稿をまとめながらそもそも笑うってなんだろうと考え始める。大笑い、高笑い、愛想笑い、苦笑い、含み笑い、薄ら笑い・・・、笑いにはいくつもの種類があるが、目の前で起きた笑いがどれに該当するかは、明確にわかるわけではない。
とっても楽しそうに笑っているつもりでも、相手からは含み笑いだと思われたり、相手の大笑いを愛想笑いと受け止めていたりする可能性もある。~中略~
新聞にしろ、雑誌にしろ、記事に「(笑)」とあると、これはどういう意味合いなのだろうかと考え込む。
特に意味はなく、ただただ大きな声で笑ったのかもしれないが、ではその場で起きていたすべての笑いが表記されているかといえばそんなことはないはずなので、その「(笑)」は恣意的に選び抜かれている。ならば、その意図とは何だろうと考え込む。そんなの健全な読み方ではない。
<雰囲気表すには>
インターネットの記事や動画配信の場合、そのインタビューや対談の全編を確認できる場合も多い。それはそれでうれしいのだけれど、限られたスペースに詰め込むようにまとめ上げた記事を読むのが好きだ。
その日の話の要素が凝縮されていて、長い話をコンパクトにまとめた苦労を想像する。「(笑)」のような装飾も最低限で、二人が心地よく話し合っているのが伝わってくる。
削ぎ落しながらスリムなボディーを作り上げる、そんなインタビューや対談を読みたい。そういう記事には「(笑)」が多用されていない、というのが自分なりの調査結果である。
コレ、誰かにわかってもらえるだろうか。誰も分かってくれなかったりして(笑)。
とまあ、以上のような内容でした。
どうやら総じて「(笑)」には否定的のようだと受け止められますね。
たしかに「感情表現は繊細」なので、このブログにおいてもなかには「(笑)」はどういう意味なんだろうと考え込む方がいらっしゃるかもしれません。
でも、けっして他意はなく冒頭に述べたように「和やかな雰囲気を醸し出す」ためだけのものですからね・・、念のため申し添えておきます(笑)。
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