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東響第720回定期(5月12日)

2024年05月12日 | 東響
今回の指揮者ジョナサン・ノットはこれまでも幾度か武満徹作品をプログラムに含めたことがあった。音楽監督就任の2014年にマーラー9番と「セレモニアル」を、2016年にドビュッシーの「海」+ブラームスの1番と「弦楽のためのレクイエム」を組み合わせた。他にもあるかも知れないが記憶にあるのはこれだけだ。どちらの演奏も私としては曲想との親和性を感じて興味深く聴いた記憶がある。今回一曲目の武満徹作曲「鳥は星形の庭に降りる」も、しなやかなで繊細な進行と透明な音感が曲想に合致していてとても心地よく聴いた。二曲目はソプラノの高橋絵里を加えてベルクの演奏会用アリア「ぶどう酒」。こちらはボードレイルの詩のドイツ語訳三篇に曲をつけたものだが、どうも多彩なテクストの内容に比較して曲調が変化乏しくノッペリと出来ていてあまり面白く聴けなかった。残念ながら高橋の歌唱もそんな曲調を反映していて単調に聞こえてしまった。休憩を挟んでテナーのベンヤミン・ブルンズとメゾ・ソプラノのドロティア・ラングを迎えてマーラーの「大地の歌」だ。こちらはかなりの名演だった。ブルンズの声質は明朗闊達で、I「酒興の歌」、Ⅲ「若さについて」Ⅴ「春に酔った者たち」にピタリと合っていたし、一方ラングの柔らかく温かい声質はⅡ「秋、孤独な男」、Ⅳ「美しいものについて」、Ⅵ「別れ」を包容力を持って描いた。つまり何よりノットの歌手選びの妙が功を奏したということだ。ノット率いる東響の音量的なバランスは実に見事で歌がかき消されることは無かった。(サントリー一階L側後部)そしてノットは繊細な感性で柔軟に東響を牽引し、どちらかと言うと室内楽的な密度の高い品格漂う演奏だった。それに貢献した東響の精度の高い弦楽、ニュアンス豊かな木管・金管セクションは正に会心の出来だったのではないか。ラングからより深い歌が聞ければなと、これは無い物ネダリで、十二分に感動したマチネだった。

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