私が「自分は一生入院の予定だった」と知ったのは退院する直前か直後であり、それまでは来る日も来る日も退院を夢見て過ごしてきた。
週に一度の診察の時、先生の口から「退院」の2文字が出てくることに一番の期待を持って何百回も診察を受けてきた。
そんな入院中、刑務所は刑期があっていいなあと何十回思ったことだろうか。
なぜか気が合ったB先生が、院長に私の退院を打診したが反対されて没になったこともあった。しかし熱心なB先生の説得にようやく院長も折れたらしい。
その後、院長最側近のベテラン看護師Iさんから「院長が主治医のままだったら退院は出来なかったんだよ」と言われたのは退院直前か直後のことだった。
奇跡的にも私はカンオケ退院を免れたのだが、長い歴史のあるT里病院で無念の生涯を送った人がいなかったと誰が言えようか。