4月27日に行われる韓国・文在寅大統領と朝鮮民主主義人民共和国・金正恩委員長の会談で、朝鮮戦争(1950年~53年休戦)の終結(終戦宣言・平和協定締結)に向けた動きが一気に加速しそうです。
金委員長は一貫して「朝鮮戦争の休戦協定を平和協定へ」と主張してきましたが、トランプ米大統領が17日(米時間)、「朝鮮戦争はまだ終わっておらず今も続いている。南北は終戦に向けて協議する予定で、私も賛成している」と応じました。
これを受けて文大統領も19日、「終戦宣言を経て平和協定の締結へと進まねばならない」と言明しました(写真中)。
「平和協定締結」は2007年の「南北会談」を前にした韓国・廬武鉉大統領と米・ブッシュ大統領の会談でも「一致」したことがありますが、中国が難色を示して進展しなかったと言われます。
その中国も今回は、「朝鮮半島が戦争状態を早く終息させ平和を構築することを支持する」(20日、華春螢報道官)と賛意を示しています。
これで「朝鮮戦争休戦協定」当事国4カ国がいずれも「終戦宣言・平和協定」に賛同したことになります。きわめて重要な前進です。
そんな中で取り残され、逆に「終戦宣言・平和協定」に水を差す言動をしているのが、日本の安倍首相です。
今回の「日米首脳会談」で安倍氏が口を極めたのは「拉致問題」でした。会談後の共同記者会見(日本時間19日)でも、「拉致問題」を「なによりも重要」とし、「北朝鮮が新たな道を歩むなら不幸な過去を清算することができる」などと朝鮮敵視を強調しました。
そもそも安倍氏が「拉致問題」を強調するのは、「森友・加計問題」さらに「財務省問題」などで政権発足以来最悪となっている「支持率」を少しでも回復しようという政治的思惑にからです。
「安倍首相が拉致問題を唯一強調する背景には、自身がこの問題に対する強硬姿勢を強調し、政治的に急成長したためだ。…(小泉内閣の官房副長官時代―引用者)拉致問題に対する強硬論を主導した安倍首相は政治的スターになり、2006年には52歳で戦後最年少の首相になった。安倍首相はその後も北朝鮮に対する圧迫を主導して、拉致問題への言及を常に欠かさなかった」(20日付ハンギョレ新聞=韓国)
前田朗・東京造形大教授は「拉致問題」には「国外移送目的誘拐罪」の側面があるが、日本軍が「多数の朝鮮女性を『慰安婦』という名の性奴隷とした」ことも「国外移送目的誘拐罪」にかかわる、としてこう指摘しています。
「多数の朝鮮女性を国外移送した事実がありながら、被害者が朝鮮人であれば捜査も立件もせず、今日に至るもなお責任を認めようとしない。…『拉致疑惑』をタテに日朝国交正常化を妨げ、遅延させることは…日本国家が犯した膨大な国外移送目的誘拐罪の免責を図ることである」(「世界」2001年4月号)
「慰安婦」とともに、「朝鮮人強制連行」もこれに加えるべきでしょう。
安倍氏が一貫して「慰安婦」や「強制連行」の責任・犯罪性を認めない一方で「拉致問題」を強調するのは、自らの保身を図る政治利用とともに、日本が朝鮮に対して犯した歴史的犯罪の隠ぺいを図るものと言えます。
日本は、朝鮮戦争の「終結宣言・平和協定」を対岸視できる立場ではありません。
そもそも朝鮮半島の分断(朝鮮戦争の背景)の元凶は、明治以降の日本の朝鮮侵略・植民地支配です。
朝鮮戦争自体にも、日本はアメリカの後方基地として、また元日本軍兵士が「機雷除去」に参戦する形で直接かかわりました。
さらに、「朝鮮戦争特需」によって日本の大企業は”死の商人“として今日の基盤を築きました。
アメリカの傀儡である「朝鮮戦争国連軍司令部」は現在も首都・東京の横田基地にあります。
朝鮮半島の平和・統一に逆行・妨害する歴史修正主義者・安倍首相は1日も早く退陣させる必要があります。
同時に、朝鮮半島に対する日本の歴史的加害責任を銘記し、朝鮮戦争の「終結宣言・平和協定」を、”当事者“の一員として凝視・支持するのは、私たち「日本国民」の責任でもあります。