◇ 巨額のコストは誰が払うのか = 東北電力の女川原発2号機(宮城県)が29日、東日本大震災で停止して以来13年7か月ぶりに再稼働した。いま日本にある原発は33基。このうち大震災のあと再稼働した12基の原発は、すべてに西日本に所在するもの。東日本で原発が再稼働するのは初めてのことである。経済産業省は「原発を出来るだけ活用する」という政府の方針に沿った動きと自画自賛。マスコミもだいたいは歓迎しているようだ。女川...
経済問題の分析、解説。特に政府の政策に対する批判。いくつかの大学で教科書代わりに利用されています。
最近の例では、1000円高速料金やエコポイントへの批判。景気回復の芽をいち早く探し出しています。またアメリカのGMやクライスラーが破産法の申請しか可能性がないことも、数か月前から予想しています。 原則として祝日以外は、記事を更新。株価の上昇、下落も毎日予想しています。これまで3年間の騰落予想では、勝率が約7割。証券マンの読者も少なくありません。
◇ 消費者庁は手ぬる過ぎる = 悪質な誇大広告が、テレビやSNSで野放しになっている。全く効果がないのに、飲むだけで痩せるとか、病気が治るとか。こういう広告がよく使う表現が「何万個売れた」とか「業界一の売り上げ」とか。消費者庁ではこうした事例を規制するために、景品表示法を改正。悪質な事例に対しては、罰則を強化する方針だ。しかし摘発には時間と人手がかかるため、措置命令を出す件数はごく僅か。実効はきわめて...
◇ 岸田内閣はバラマキ依存症 = ガソリン補助金は延長せず、代わりにトリガー条項の凍結を解除したらどうか。トリガー条項というのは、ガソリン価格が高騰した場合に、ガソリン税の暫定上乗せ分の約25%分を免除できる仕組み。現在は東日本大震災の復興財源とするため凍結されている。国民民主党がこの方式を強く主張、予算の成立に協力までして自民党に迫ったが、結局は“裏ガネ問題”で霧消してしまった。この交渉の自民党の責任...
◇ 予算規模は防衛費並みに膨張 = 岸田首相は先週の参院予算委員会で、ガソリンに対する補助金について「国民経済や経済活動への影響を考慮して、検討して行くことが重要だ」と述べ、4月末で終了する予定の補助金政策を延長することに前向きな姿勢をみせた。この制度で、たしかにガソリンの小売り価格は1リットル=175円程度に抑えられている。しかし反対論も多いなかで、補助金はまたしても延長されることになりそうだ。ガソリ...
◇ 早ければ4月にも円高へ向かう可能性 = 日銀がマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げに踏み切った。一方、FRBは金利を据え置いたから、日米間の金利差はわずかに縮小。したがって理論的には、円高が進むはずだった。ところが実際は円安が進行。円の対ドル相場は151円台にまで下落している。株式市場はこれを好感して日経平均は先週、史上最高値を更新した。この円安は、いつまで続くのだろうか。アメリカのインフレは予...
◇ 日米市場で最高値更新ラッシュ = ダウ平均は先週761ドルの値上がり。水曜日と木曜日には、ダウ・ナスダック・SP500の3指数がそろって史上最高値を更新という素晴らしい記録を作っている。FRBが政策金利を据え置き、さらに年内3回の利下げ可能性を維持したことを好感した。ニューヨーク市場では「当面の懸案事項はすべて消滅した」という感じが広まっている。高値警戒感はあるが、4万ドルを狙う勢いは衰えていない。日経...
◇ 香港・シンガポール・韓国に及ばず = UNDP(国連開発計画機関)が、各国の‟豊かさ”を測る24年度版「人間開発指数」の世界ランキングを発表した。それによると、日本は2年前よりも2つ順位を下げて24位となった。1位はスイス、次いでノルウェー、アイスランド、香港、デンマークが続いている。アジアでは香港のほかシンガポールが9位、韓国が19位となっており、日本はアジアで4番目にランク付けされた。この「人間開発指...
◇ 90ドル台が続けば影響が大きい = 北半球はこれから行楽シーズン入り、ガソリンの消費が増える。このため専門家の間では「原油の国際価格は90ドル台に乗せるかもしれない」という見方が強い。仮に90ドル台になると、直近の安値60ドル台に比べて5割高。その日本経済に与える影響は、決して無視できない。電気やガス代、それにガソリン価格が急騰。物価の上昇は加速する。日銀はマイナス金利政策を解除、17年ぶりの利上げに踏...
◇ OPECプラスの自己減産延長で = 原油の国際価格が上昇してきた。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)の先物相場は、3月に入ってから1バレル=80ドル台を維持している。昨年秋からはずっと60-70ドル台で推移していたが、ここへきて値を上げた。直接のきっかけは、OPEC(石油輸出国機構)プラスと呼ばれる産油国連合が自主減産を6月末まで延長したこと。この措置で、世界の原油見通しが供給過剰から不足へと...
◇ 「インフレなら利上げ」ではダメなのか? = 日銀はきょう19日に開く政策決定会合で、マイナス金利の解除を決定する。同時にイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を停止、またETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)の買い入れも終了する。これまで17年も続けてきた金融の超緩和政策を、引き締めの方向へ転換するわけだ。だが、これで日銀が何を目指しているのか。説明がどうもすっきりとは呑み込めない...
◇ マイナス金利解除は織り込んだが・・・ = ダウ平均は先週わずか8ドルの値下がり。週の前半は先々週に下げた反動もあって反発。特に火曜日は注目のエヌビディアが7.2%も上昇、SP500が最高値を更新した。しかし後半はだらだらと下げている。2月の消費者物価が予想を上回って上昇、利下げが遠のいたという推測が強まって金利が上昇。株式市場は、これを嫌気した。ただ終り値は、3月23日に付けた最高値を400ドルしか下回ってい...
◇ 一時停止かUターンかは、この株しだい? = 日米の株価が大きく揺れ始めた。ダウ平均は2月23日に3万9132ドルの新高値を付けたあと、下げに転じた。日経平均も3月4日に4万円台乗せを達成したあと、11日にはことし最大の下げを記録している。これまで株価の大幅高を主導してきた半導体関連銘柄が、反落でも主役も演じた。そして、その半導体銘柄を先導したのがエヌビディアだ。市場では「エヌビディア・ショック」という言葉が...
◇ 大きな社会問題に発展する可能性 = 高齢化の進展で、福祉関係の費用が急激に増大している。たとえば、この20年間で医療費は6割、年金は5割も増えている。しかし介護費は別格、なんと4倍に跳ね上がった。00年の3兆3000億円が、23年には13兆5000億円に膨張している。この勢いは今後も衰えず、要介護者は00年の218万人から、40年度には2100万人に増大する見込みだ。当然、必要な介護職員の数も急増する。厚労省によると、21年度...
◇ 来年は32万人も不足する見込み = 「22年ショック」という言葉が、介護関係者の間で定着している。この年、介護職員を辞めた人が61万人に達し、新たに就職してきた人を6万3000人も上回った。職員の数が純減したのは初めてのことで、ショックが業界を駆け巡った。主な原因は、給与の伸び悩み。物価が大幅に上昇したため、生活が苦しくなってしまった。しかし介護職員の給与は、政府が決める“公定価格”。財源が厳しく、思うよ...
◇ 各種の金利はすでに上昇してきた = 日銀は来週18-19日に開く政策決定会合で、マイナス金利政策を解除する可能性が大きい。植田総裁が2月29日に国会で「現状はデフレではなく、インフレの状態にある」と発言。内田副総裁も講演で「仮にマイナス金利を解除しても、緩和的な政策を維持して行くことになるだろう」と述べた。こうした日銀幹部の発言から、市場では解除の予想が急速に拡大した。実現すれば、なんと17年ぶりの金利...
◇ 日米ともに足取りは重い = ダウ平均は先週365ドルの値下がり。終り値は3万9000ドルを割り込んだ。高値圏で利益確定売りが出たことが、値下がりの主な原因。水曜日にはパウエルFRB議長が議会で証言。「利下げはそう遠くないうちに始めるのが適切」と述べたが、株価は小幅な上昇にとどまった。また金曜日には予想を上回る雇用者の増加が発表されたが、株価は小幅に下げただけ。方向感に乏しくなっている。日経平均は先週222...
◇ 少数民族になる白人の不安 = 11月の大統領選挙に向けた共和党の指名争いで、トランプ前大統領が圧勝した。世論調査では、バイデン現大統領よりも支持率が高い。トランプ氏はいま4つの刑事事件を抱え、計51の罪で起訴されている。決して‟清廉潔白の士”とは言えないだろう。それなのに、なんで圧勝するのか。その根本的な理由は、アメリカが直面している歴史的な流れのなかに求められる。米国勢調査局によると、白人がアメリカ...
◇ またもバラマキ、若者への配慮なし = 厚生労働省の発表によると、昨年の出生数は75万8631人で戦後最低。前年に比べて5.1%の減少、8年連続で前年を下回った。この減少率は想定を上回っており、少子化の進行が加速していることを示している。また昨年は婚姻数も48万9281組で、前年を5.9%下回った。岸田首相ならずとも、こうした現実には危機感を抱かざるをえない。そこで政府が打ち出した少子化対策。はたして効果があるのだ...
◇ 国民の負担は実質ゼロなのか = 政府は「こども未来戦略」に盛り込んだ少子化対策の実現に必要な関連法の改正案を国会に提出した。その最大の柱は、児童手当の思い切った拡充。所得制限を撤廃し、支給対象の上限を現行の中学生から高校生にまで拡大する。また第3子以降に対しては、月額3万円を支給することになった。法律が成立すれば、ことし12月から実施する。岸田首相は「スピード感を持って実行に移して行く」と言明した...
◇ バブルなのか、バブルでないのか = 「ついに」と言うべきか、それとも「やっと」と言うべきか。とにかく日経平均株価が4万円の大台に跳ね上がった。3万円台に乗せてから、ちょうど3年かかっている。だが、ことしの年初は3万3000円台、そこからは超特急で上り詰めた。2月22日には1989年12月に記録した史上最高値を更新、そこから7日間で4万円に到達したことになる。34年前には新高値のあとバブルが崩壊、株価は急落した。今回...
◇ 日経平均はついに4万円台へ = ダウ平均は先週44ドルの小幅な値下がり。高値圏で利益確定売りが続出したが、なんとかこなして終り値は3万9000ドル台を死守した形。相変わらず半導体関連には買いが入り、IT関連銘柄の多いナスダックが木曜日、2年3か月ぶりに最高値を更新した。一方、債券市場では長期金利が上昇。このため外国為替市場ではドルが買われ、円安が進んでいる。日経平均は先週812円の値上がり。終り値は3万9911...
◇ 「インフレ」とは何なのか? = 植田日銀総裁は先週22日、衆院予算委員会で「消費者物価は昨年までと同じように右上がりの動きが続くと予想している」「いまはデフレではなく、インフレの状態にあると考えている」と発言した。野党議員から「現在はデフレなのか、インフレなのか」と質問され、答えたものだ。市場はこの発言を受けて「日銀は3月にもマイナス金利の解除に踏み切る」と了解している。だが日銀総裁のこの発言は、...
◇ 東京市場は自信満々だが・・・ = 「日経平均4万円は確実、その後の上昇も当たり前」--東京市場では、こんな強気がまかり通っている。じっさい予想される高値の水準について、大和証券は4万3000円、JPモルガン証券は4万2000円に上方修正した。こんな強気を生み出した大きな原因の一つが、史上最高値を付けた34年前との株価の比較。アメリカは14倍、英独仏などは3-5倍。これに対して日本は元に戻っただけ。つまり1倍でし...
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◇ 巨額のコストは誰が払うのか = 東北電力の女川原発2号機(宮城県)が29日、東日本大震災で停止して以来13年7か月ぶりに再稼働した。いま日本にある原発は33基。このうち大震災のあと再稼働した12基の原発は、すべてに西日本に所在するもの。東日本で原発が再稼働するのは初めてのことである。経済産業省は「原発を出来るだけ活用する」という政府の方針に沿った動きと自画自賛。マスコミもだいたいは歓迎しているようだ。女川...
◇ 早くも「財政悪化→金利上昇→ドル高・円安」 = 来週11月5日はアメリカの大統領選挙。ハリス、トランプ両候補の勢いは全く伯仲と伝えられるが、ニューヨーク金融市場は早くもトランプ氏の返り咲きに備えて動き始めた。ただし金融市場はもともと共和党寄り。法人税の減税や所得減税を公約するトランプ氏の復活は歓迎されるはずだが、今回はやや様子が違う。どちらかと言うと、警戒感の方が前面に浮き出ているようだ。議会筋の計...
◇ 石破政権は国民と連立するしかない? = 自民・公明の与党が大敗、議席数を215に減らした。過半数に18議席も足りない。石破首相の早期解散戦術で、野党は9割の選挙区で候補者の調整が出来なかった。それでも立憲民主党など野党が議席を伸ばせたのは、それだけ自民党の‟裏金”問題に対する有権者の怒りが大きかったために違いない。石破首相は、この事態をどう打開しようとしているのか。とりあえずは、無所属で当選した議員に自...
◇ 「選挙は売り」に変わった日米株式市場 = ダウ平均は先週1162ドルの大幅な値下がり。5日間の続落だったが、終り値は4万2000ドルをなんとか維持した。アメリカの景気はゆっくりと下降しているが底堅い面も見せていて、経済の軟着陸に対する期待はいぜん高い。にもかかわらず株価が続落したのは、大統領選挙の結果に対する心配。特に政治的な混乱と分断が加速するのではないかという心配が、急速に強まったことが響いているよう...
◇ 日本人が締め出されて行く悲劇 = 観光局の集計によると、1-9月期の外国人観光客数は累計2688万0200人になった。早くも23年の年間客数2506万人を超えている。ことし中には3500万人に達するとみられ、過去最多になる見通し。また観光庁の発表によると、1-9月期の訪日外国人による消費額は5兆8582億円。こちらも23年の消費額を抜いて、過去最多になった。円安で訪日客が増え、高騰している宿泊費などが消費額を押し上げている...
◇ 投資の対象としては最高の実績 = 金に対する需要は①宝飾・アクセサリー②中央銀行による買い付け③投資④産業用--の4つに分けられる。WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)によると、23年の実績では宝飾・アクセサリーが全体の49%を占めて最大。次いで中央銀行が23%、投資用が21%、産業用が7%となっている。このうち宝飾用としての個人の購入は、中国とインドが圧倒的に多い。最近になって増えたのが、中央銀行によ...
◇ 結局は“不安”の集大成なのかも = 金(きん)の値段が、着実に上昇している。国際価格の指標となるニューヨーク市場の先物相場は先週17日、1トロイオンス=2712.7ドルの最高値を記録した。年初来の上げ幅は630ドルを超え、年間の上げ幅としても過去最大。ニューヨーク市場の株価よりも、上昇率が大きくなっている。国際価格の上昇を反映して、日本国内の相場も高騰している。東京市場では22日の小売価格が1グラム=1万4567円...
◇ 景気が回復しなければバブルは崩壊 = 中国の不動産不況は厳しく、景気の回復はまだ見えてこない。統計局が18日に発表した7-9月期のGDP速報によると、前年同期比の実質成長率は年率4.6%。1-3月期の5.3%、4-6月期の4.7%から低下する傾向がまだ続いている。1-9月期でみると4.8%の成長率。政府が目標としている「5%前後」に、ぎりぎり収まっている状態だ。同時に発表された主要指標をみると、鉱工業生産は1-9月期に5...
◇ 株価が11日間で58倍に大暴騰 = 9月20日には1220円だった株価が、10月8日には7万0400円になった。営業日にしてわずか11日の間に、なんと58倍に大暴騰したことになる。その銘柄は東京証券取引所に上場している中国株ETF(上場投資信託)のうちの「One ETF 南方」という銘柄。中国政府が株価対策を実施するというニュースが上昇のきっかけ。ところが中国本土は10月1-7日が国慶節で市場はお休み、売り物が全く出ない状態で買い...
◇ ダウは底堅く、日経平均は軟弱 = ダウ平均は先週412ドルの値上がり。6週連続の上昇で、終り値は4万3276ドル。またもや新高値を更新した。しかし10月に入ってからは946ドルしか上げていない。高値圏での利益確定売りをこなしながら、着実に値を切り上げているわけだ。先週も予想を上回る小売り売上高の発表があったが、これで経済の軟着陸が確実になったという見方が強まり、FRBの利下げが遠のくという心配を抑え付けた。ニ...
◇ 日本再生のラスト・チャンス = 日本人が発明した、薄くて曲げられるプロブスカイト型太陽電池。中国ではすでに量産体制に入っている。たとえば極電光能は江蘇省に100万㌔㍗級の工場を建設中、大正微納は福建省で25年に量産を始める予定。このほか数社が大工場を建設中だという。生産するのは薄くて曲げられる電池と、従来型のガラス製基盤にプロブスカイト型を張り合わせた改良型に分かれた模様。この改良型は発電効率はいい...
◇ これでは‟曲がる太陽電池”も中国にやられる = 総選挙を前に7党首の討論会が12日、日本記者クラブの主催で開かれた。その内容を詳細に報じた大新聞の記事を見て、びっくり仰天。それは7党首の誰もが、ひと言も「日本経済の将来を左右する産業育成政策」に触れなかったことだ。みなさんはどちらかというと、減税や補助金などバラまき型の政策を主張するばかり。日本経済を強くする発想は、お持ちではないようだ。こんな人たち...
◇ 次の利上げは出来るのか = 「日銀の金融政策に対する政府の口先介入は厳に慎まなければならない。ただし期待を申し上げることはありうる」--石破首相は先週12日に行なわれた日本記者クラブ主催の7党首討論会で、こんな弁明をした。石破氏は首相に選出された直後に植田日銀総裁を官邸に呼んで会談、そこで「金利の引き上げは慎重にしてほしい」と圧力をかけたのではないかと推測されている。ちなみに赤沢経済再生相は記者会...
◇ 日米ともに選挙が次のカベに = ダウ平均は先週511ドルの値上がり。5週間の連騰で、終り値は4万2844ドル。またまた史上最高値を更新した。9月の雇用統計が予想より強く、消費者物価が予想より弱かったことから、経済の‟軟着陸”に対する期待がより高まっている。このため利益確定売りや中東情勢の緊迫があっても、株価は崩れない。長期金利は4%台に上昇、ドル高・円安が進んだ。日経平均は先週970円の大幅な値上がり。終り値は...
◇ 経済政策の独自色をすべて消去 = 石破新首相は7日の国会答弁で、金融所得課税について「現時点で具体的に検討することは考えていない」と言明した。またアベノミックスについても「GDPを高め、雇用を増大した」と、前向きに評価する発言を行っている。これまでの「金融所得課税を検討する」「アベノミックスには副作用も多い」という主張を、公式の場で改めて修正したことになる。石破茂氏が自民党総裁に選出された9月27日...
◇ 毎年89円の賃上げはとても出来ない = 「2020年代に全国平均1500円という高い目標に向かって努力を続けます」--石破新首相は所信表明演説のなかで、最低賃金についてさらりとこう言ってのけた。岸田前首相は「30年代の半ばまでに1500円にする」と公約していたが、それを5-6年早めることになる。最低賃金というのは、パートやバイトを含むあらゆる労働者に対して、使用者が支払わなければならない最低の時給額。その引き上...
◇ 予算1000億円が2000億円に増えるだけ = 石破新首相の所信表明演説を報じた新聞の紙面に「地方交付金を倍増」という大見出しが踊っていた。一瞬「これはすごい。でも財源はどうするのだろう」と心配してしまう。地方交付税交付金は政府が国税の一部を原資として、都道府県や市町村の財政を支援する制度。24年度予算でも17兆7863億円が計上されている。だから倍増するには17兆円が必要。そこで心配したわけだが、誤解はすぐに解...
◇ 反発力が弱くなった日本株 = ダウ平均は先週40ドルの小幅な値上がり。それでも終り値は4万2353ドルで、最高値をまた更新した。9月16日以来、実に8回も史上最高値を更新している。市場がアメリカ経済の‟軟着陸”を確信しているためで、高値警戒の売り物をこなしながら緩やかな上昇を続けた。金曜日には9月の雇用統計が発表され、非農業雇用者の増加数が予想をはるかに上回った。これでFRBによる次の利下げは遠のいたという見...
◇ 日本は巨大な恩恵を受けるだろう = OPECプラスは9月5日「主要8か国が続けてきた日量220万バレルの減産を11月末まで延長する」と発表した。これを受けてWTIの先物相場は、1バレル=70ドル台に戻している。しかしその直後の10日に、世界の原油需要がやや減少するという予測が発表されると相場は65ドル台、1年4か月ぶりの安値に落ち込んだ。これはウクライナ戦争が始まる前の水準である。またイスラエルがレバノンに攻め...
◇ 減産ではなく増産で失地回復へ = ロイター通信は先週26日「OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどの産油国が、12月から原油の増産を始める」と報道した。またフィナンシャル・タイムズ紙も同じ日「サウジアラビアが12月から増産を始めるための準備を開始した」と報じた。こうした報道を受けて、ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)の先物相場は1バレル=66ドル台にまで下落した。本当なら日本経済も非常に大きな好影響を...
◇ 減税の評判が悪いのは、なぜ? = マスコミ各社の世論調査で、岸田内閣の支持率がガタ落ちとなった。トップを切った日経新聞の調査では、支持率が33%で政権発足以来の最低。またNHKの調査では36%だったが、テレビ朝日の調査では26.9%にまで落ち込んでいる。与党内では「これでは解散はムリ」の声も出始める始末。岸田首相は「減税までやるというのに、どうしてなんだろう」と、頭を抱えているに違いない。調査によると、...
◇ 次の焦点はゼロ金利の解除 = 日銀は31日に開いた金融政策決定会合で「長期金利が1%を超えて上昇すること」を容認した。これまでは上限としてきた1%をメドに改め、一定限度なら超えてもいいというように修正している。ただ短期金利をゼロに抑える政策やETF(上場投資信託)の買い入れなど、金融緩和の姿勢は崩さない。このように形としては政策のわずかな修正に過ぎないが、これが金融引き締め政策への第1歩となる可能性...
◇ 量的引き締めはまだ1兆ドル = パウエルFRB議長が「経済は金利の影響を受けにくくなっているのかもしれない」と嘆き節。珍しいことである。FRBは昨年3月からインフレ退治のために金融政策を引き締めに転換、政策金利をゼロから5.25%まで引き上げた。しかしアメリカ経済は堅調を維持し、物価はなかなか下がらない。パウエル議長の嘆きは、まだまだ続きそうである。金利がこれだけ上昇すると、ふつう経済には強いブレー...
◇ あさって1日のパウエル会見待ち = ダウ平均は先週710ドルの値下がり。2週間の続落で、この間の下げ幅は1200ドルを超えた。長期金利の上昇、中東情勢の緊迫、それに長引く自動車ストなど、株式市場には次々と逆風が吹き込む。7-9月期の実質GDP成長率が4.9%と予想をはるかに上回ったことも、金融引き締めを止められない原因になるという理由で悪材料視された。いまはあさって1日に行なわれる、パウエルFRB議長の記者会...
◇ 高利回りにはリスクが伴う = アメリカの長期金利が16年ぶりの高さに上昇している。10年もの国債の利回りは先週5%台に乗せた。雇用や物価などが予想以上に堅調で、FRBの引き締め政策が長続きするという見方。政府の財政支出増加で、国債発行額が急増。そして議会が空転し予算成立のメドが立たないことが、長期金利を引き上げる原因となっている。最も信用度が高い国債でさえ、年5%の金利が付かないと売れない。その他の公...
◇ 日本はこの50年間なにをやったのか = ちょうど50年前の1973年10月6日、エジプトとシリアが共謀してイスラエルを奇襲。いわゆる第4次中東戦争が始まった。結果はイスラエルの勝利に終わったが、OPEC(石油輸出国機構)はイスラエル寄りの先進国を牽制するため、突如として原油の輸出価格を4倍に引き上げた。これが石油ショック。各国の物価は急騰、景気は下降を余儀なくされた。日本でもトイレット・ペーパーの買い占め騒...
◇ ガザ戦争で高まる危険性 = 原油の国際価格は、いま高止まりしている。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物相場は、このところ1バレル=90ドルを前に足踏み状態。しかしイスラエルのガザ地上作戦が、本格的に始まったらどうなるか。ごく短期で決着すればともかく、もし長引いてレバノンやイランなどの近隣アラブ諸国が巻き込まれれば、価格は確実に100ドルを突破するに違いない。それが世界経済に及ぼす悪影響は...
◇ 国民の知りたい点をすっぽかした = 「経済、経済、経済」と連呼した岸田首相の所信表明演説。経済を‟一丁目一番地”にしようという意欲は、よく伝わった。だが結論から言うと、残念ながら落第点を付けるしかない。というのも、その結果として日本経済はどんな姿になるのか。国民の生活は、どうなるのか。みんなが知りたいと考えている点に全く触れなかったからである。だから演説は空回り、岸田首相の独りよがりになってしまっ...
◇ 期限付き減税の危うさ = 岸田首相は20日、自民・公明党の幹部に対して「所得税の期限付き減税と低所得者への給付金支給」を検討するよう指示した。これを受けて政府・与党は、政策懇談会を26日に開いて議論を始める。税制改正法案を通常国会に提出、年度内の成立を図る方針だ。減税については与党内からも疑問の声が出ているが、岸田首相は所信表明演説でも明言。強行突破する姿勢を見せている。減税の規模はまだ不明だが、5...
◇ 長期金利の上昇が波乱要因に = ダウ平均は先週543ドルの値下がり。週の前半は9月の雇用・消費者物価・小売り売上高がそろって予想を上回ったにもかかわらず、株価は上昇。ところが水曜日になると、長期金利が4.9%にまで上昇し株式市場には警戒感が走った。そこへパウエルFRB議長が講演で「さらなる引き締めが正当化されることもありうる」と言明、木曜日には金利が5%と16年ぶりの水準に到達した。イスラエル情勢なども悪...
◇ 現状判断では「きわめて微妙」 = 中国統計局の発表によると、7-9月期の実質成長率は前年同期比の年率で4.9%だった。前4-6月期の6.3%から大きく減速。不動産不況に改善の兆しが見られず、個人消費や輸出も伸び悩んだ。地方政府は財源難で景気対策を打ち出せず、北京政府はもっぱら金融緩和で需要を喚起しようとしている。だが今後の見通しは厳しく、習近平政権が目標としている「23年の5%成長」を達成できるかどうか。微...
◇ 政府は鈍感すぎる = 機械化・ロボット化・AI化、女性と高齢者の活用、外国人の招聘、それに生産性の向上。--人手不足を解消するための方策は、これしかない。だから政府・自治体・企業・個人は、これらが進展するように地道な努力を重ねるしかない。たとえばロボット・AI化減税、リスキリング、年収のカベの撤廃、外国人労働者に対する優遇策、週休3日制の推進・・・。しかし、こうした努力を重ねたとしても、今後に予...
◇ 「働き方改革」で働く時間が減少 = 「人口が減っているのだから、人手不足はやむをえない」と考える人が多い。だが、これは間違い。たしかに日本の人口は減り始めたが、働く人は増えている。つまり遊んでいる人が少なくなったわけだ。たとえば労働力調査で就業者数をみると、13年には平均6311万人だったのが直近の4-6月期には6747万人に増えている。実に430万人以上も増加した。この10年間、日本のGDPはあまり大きくなっ...
◇ 35年には最大1190万人が不足 = これまで運輸・建設・介護・サービス業について人手不足の実情をみてきたが、他の多くの業種も人手が集まらずに苦しんでいる。たとえば医師・看護師、学校の先生や技師、消防士から官僚に至るまで。人が余っているのは、一部の事務系の職場と国会議員ぐらいなものではないか。しかも今後の見通しも、非常に厳しい。三菱UFGコンサル&リサーチ社の推計。少子・高齢化の進行で、労働力人口は...
◇ ユダヤ的な視点が強いNY市場 = イスラエル地上部隊のガザ進攻は、どんな結果をもたらすのだろうか。一般的な見方は、3つの可能性に集約できるだろう。①イスラエル軍は短期決戦に成功。1か月以内にハマスを完全排除する②ハマスがゲリラ戦で抵抗、レバノンのイスラム教シーア派ヒズボラが参戦して長期化する③イラクやイランが参戦、第5次中東戦争になる--このうち①の可能性が大きく、②もありうる。③は可能性が小さい。と...
◇ 東京市場ははしゃぎ過ぎ? = ダウ平均は先週263ドルの値上がり。4週間ぶりの上昇となった。雇用や物価が予想より強く、イスラエルの緊迫も加わって金利が上昇。環境は芳しくなかったが、FRBが発表した9月のFOMC議事録で「利上げに慎重な意見が多かったこと」が判明。市場はこれを頼りに買い進んだ。その根底には、過去3週間で1200ドル下げたことへの反動がある。押し目買いの力は、まだまだ強い。日経平均は先週1321円...
◇ 倒産に直結してしまう業種 = サービス業は基本的に、人手がなければ成り立たない業種だ。だから人手不足は命取り。倒産してしまう企業も多い。なかでも人手不足に苦しんでいるのは、飲食業と宿泊業。コロナ規制で離れて行った従業員が帰ってこない。高齢化が進む一方で、新規参入が少ない。この業種は季節や時間で繁忙期が異なるから、バイトやパートなどの非正規従業員は必要不可欠。その人たちも集まりにくくなっている。総...
◇ 要介護者の増加に追い付かない = 介護保険制度は2000年に発足した。当時の介護職員は55万人。それが現在は230万人に増えている。常に不足気味だが、なんとか伸びてきた。ところが、これからが大変。25年には団塊の世代が、全員75歳以上に達する。このため厚労省によると、介護職員は32万人も不足する。これが介護の「2025年問題」だ。さらに40年には69万人が不足する見通しだが、それが埋まる見込みはほとんどない。労働条件...
◇ 大阪万博は象徴的な出来事 = 建設業界の人手不足も深刻だ。総務省によると、建設業の従業員数は22年で479万人。ピークだった97年に比べると、3割以上も減少した。人手が足りないと、工期が遅れる。人手を増やせば、人件費が増える。どっちにしてもコストは上がってしまう。そこへ来年4月からは、残業時間が年720時間に制限される。いま大阪万博の建築契約が進まず問題となっているが、この傾向は全国に広がり始めている。昔は...
◇ 減税論が飛び交う永田町 = コトの発端は9月26日の閣議。岸田首相は新経済対策の作成を指示したが、この席で「税や社会負担の軽減など、あらゆる手法を動員する」「成長の成果である税収増を国民に適切に還元すべきだ」と強調した。所得税か法人税か消費税か? 永田町ではその日から、減税論が飛び交っている。自民・公明党が減税に傾いたため、野党はお株を盗られた形で意気消沈することとなった。岸田首相はしばしば「賃上...