◇ 巨額のコストは誰が払うのか = 東北電力の女川原発2号機(宮城県)が29日、東日本大震災で停止して以来13年7か月ぶりに再稼働した。いま日本にある原発は33基。このうち大震災のあと再稼働した12基の原発は、すべてに西日本に所在するもの。東日本で原発が再稼働するのは初めてのことである。経済産業省は「原発を出来るだけ活用する」という政府の方針に沿った動きと自画自賛。マスコミもだいたいは歓迎しているようだ。女川...
経済問題の分析、解説。特に政府の政策に対する批判。いくつかの大学で教科書代わりに利用されています。
最近の例では、1000円高速料金やエコポイントへの批判。景気回復の芽をいち早く探し出しています。またアメリカのGMやクライスラーが破産法の申請しか可能性がないことも、数か月前から予想しています。 原則として祝日以外は、記事を更新。株価の上昇、下落も毎日予想しています。これまで3年間の騰落予想では、勝率が約7割。証券マンの読者も少なくありません。
◇ NYは最高値、東京は波乱含み = ダウ平均は先週250ドルの値上がり。終り値は4万2353ドルで、またまた史上最高値を更新した。ここ3週間で1968ドル上昇、利益確定売りをこなしながら着実に値を切り上げている。物価や景気に関する重要な指数の発表がないため、市場は‟軟着陸”に対する期待を変えていない。過熱感は全くなく、IT関連株も内需株も業績のいい企業が選別されて買われている。日経平均は先週2106円の大幅な値上が...
◇ 次の首相はどう判断するのか = 間もなく10月。政府は電気・ガス代に対する補助金を、10月分にも適用することになった。一方、ガソリン料金に対する補助金は年末まで延長する。どうして、こんなチグハグなことになってしまったのか。理由は財源がないから、である。財源は24年度の補正予算1兆円から支出するが、ガソリンだけで7730億円かかる。だから電気・ガス代への補助金は1か月分、2124億円しか出せなかった。ウクライナ戦...
◇ 働く7人に1人は65歳以上 = “敬老の日”にちなんで、政府が高齢者に関する2つの人口推計を発表した。その1つは、厚生労働省が9月15日時点で推計した100歳以上の人口。総計9万5119人で、前年より2980人増えた。女性は8万3958人、男性は1万1161人。圧倒的に女性が多い。人口10万人当たりの人数をみると、全国平均は76.49人。最も多かったのは島根県の159.54人で、12年連続の1位。最も少なかったのは埼玉県の45.81人で、なんと3...
◇ 大幅利下げでも円安になった理由 = FRBは先週18日、政策金利を0.5%引き下げた。通常は0.25%刻みなのに0.5%も引き下げたのは、FRBが景気の先行きを心配しているからに違いない。市場がこう解釈したため、当日の株価は下落。ドルは売られて、円高が進行した。ところが、あくる19日になると、状況は一変した。ダウ平均は500ドル以上も値上がりして、史上最高値を更新。ドルは買われて円安になったため、日経平均も大き...
◇ 利下げに乗じて最高値を次々と更新 = ダウ平均は先週670ドルの値上がり。FRBは水曜日に0.5%の利下げを決定したが、株価はその前から期待して上昇、そのあとも満足して上昇。連日のように史上最高値を更新した。終り値は4万2000ドル台に乗せている。SP500も2か月ぶりに最高値を更新した。インフレが予想より鎮静してきた半面、景気がそれほど落ち込まない見通しになったことで、市場には明るさが広がっている。日経平均は先週...
◇ 経済政策なら目標・方法・財源に分けてみる = いま自民党9人、立憲民主党4人、計13人の政治家が全国を回って、政見の発表に汗を流している。いずれも総理大臣になる可能性を秘めた人たちである。だから投票権のない一般人にとっても、関心は高い。ところが発言の内容は千差万別、なかなか評価が難しい。そこで経済政策を例にとって、政治家を採点する方法を考えてみた。まず発言内容を、その目標・実現するための方策・必要な...
◇ 重大な3つの副作用 = SNS上では、すでに定年引き上げに対する反対論が飛び交っている。いちばん多いのは、若者による痛切な批判。というのも定年が延長されれば企業の採用人数が減少し、就職難がさらに厳しくなると考えられるからだ。この7月の16-24歳の失業率は、学生を除いても17.1%と高い。定年の延長で、これが1.3-2.2ポイント上昇するという試算も公表されている。企業側も、あまり乗り気ではない。定年間際の高齢者...
◇ 将来の労働力不足に備えて = 中国が将来の労働力不足を緩和するため、とっておきの対策を打ち出した。それは定年の延長。政府が提案、日本の国会に当たる全国人民代表大会が承認した。その内容は「男性の定年を現行の60歳から63歳に。女性は50歳から55歳に引き上げる」というもの。25年1月から段階的に引き上げ、15年後に完了する。対象は公務員や国営企業の社員、さらに民間企業の社員すべて。労働者は定年延長に応じなくて...
◇ 最大の関心事は11月と12月の下げ幅 = FRBはあす18日のFOMC(公開市場委員会)で、政策金利の引き下げを決める。利下げは20年3月以来4年半ぶりのこと。FRBは22年3月からインフレ対策のため金利を上げ続け、現在の政策金利は5.25%となっている。引き下げ幅については0.25%という見方が7割強、0.5%が3割弱となっている。したがって0.25%の利下げなら、市場は完全に織り込み済み。0.5%の場合は、軽い衝撃が走るかもしれ...
◇ NYは完全回復、東京は小反発 = ダウ平均は先週1048ドルの大幅な値上がり。8月の消費者物価がやや落ち着く一方、失業率は改善した。要するに経済は“軟着陸”の方向にあるというわけで、半導体から内需株まで広範に買われている。18日の利下げは織り込み済み。終り値は4万1394ドルで、8月30日に付けた史上最高値まであとわずか169ドル。株価は9月に入ってからの急落を、完全に取り戻したと言えるだろう。日経平均は先週190円の値...
◇ 日本でも導入の動きが広まる = イギリス政府が「週休3日制を促進するための法案」を議会に提出する。たとえば現在は1日8時間×週5日間働いているのを、1日10時間×週4日間働くことにする。どちらも週労働時間は40時間で変わらず、給料にも変化はない。働く人が自由に選択でき、企業側は拒否できない。大規模な実証実験で、生産性が上がることも確認されており、14年ぶりに労働党が政権の座についたことから一気に実現する動き...
◇ 中国製EVが独走態勢に = フォルクスワーゲンを経営不振に陥れた最大の原因は、中国車との競争に敗れたことだろう。もともとワーゲンにとって、中国は最大の海外市場だった。ところが中国車が台頭し、ワーゲンの販売台数は過去4年間で2割以上も減ってしまう。さらに本拠地のドイツにも攻め込まれ、顧客を奪われた。ワーゲンのブルーノCEOが「新たな競争相手の参入で、状況は深刻になった」と述べたのは、このことを指している...
◇ フォルクスワーゲンがEV工場閉鎖へ = ドイツの中軸企業であるフォルクスワーゲンが「国内に10か所あるEV(電気自動車)工場のうち、1-2か所を閉鎖する計画」を発表。世界中の自動車産業に、強い衝撃が走った。労働組合などは猛反対しているが、もし工場閉鎖が実現すれば1937年の創業以来はじめてのこと。ブルーノCEOは「新たな競争相手の参入でヨーロッパの車産業は深刻な状況にある」と説明した。さらにフォルクスワーゲ...
◇ 半導体+米景気+円高+α = ニューヨーク株式市場が、大荒れに荒れた。半導体大手のエヌビディアが急落、時価総額が1日で41兆円も消失した。ダウ平均は1週間で1217ドルも下落している。なんだか株価は大暴落したような印象だ。ところが先週末のダウ平均はまだ4万ドル台を維持、史上最高値からの下げ幅も1400ドルにとどまっている。IT関連銘柄は大幅に下げたが、内需株などが買われたためだと思われる。日本株への影響は、予...
◇ NY主導で下げ基調に = ダウ平均は先週1218ドルの値下がり。それでも終り値は4万ドル台を維持している。火曜日にはナスダックに上場しているエヌビディアが10%も急落、時価総額が1日で41兆円も減少する“事件”も起こったが、その割に平均株価の下げ幅は小さい。ダウ平均は8月30日の史上最高値から、わずか1500ドル下がっただけである。半導体が売られる一方で、内需株が買われたためだと思われる。日経平均は先週2256円の大幅...
◇ 象徴的な存在となったエヌビディア = ニューヨーク株式市場では3日、半導体最大手のエヌビディア株が10%も急落した。これにより同社の時価総額は2800億ドル(約41兆円)も減少。1日の減少額としては史上最大となった。エヌビディアは5-7月期の好決算を発表したばかり。この‟異変”は全世界に波及、ヨーロッパでもアジアでも半導体関連株が急落した。いったい、何が起きたのだろうか。同じ3日、半導体銘柄の少ないダウ平均株...
◇ 現行制度の改善も必要に = 最低賃金が最も上がったのは、徳島県。なんと一気に84円も上昇した。1日8時間、月20日間働いたとすると、月給は1万3440円も増えるのだからバカにはできない。いま日本中が人手不足、給料を上げないと働き手が大都会や近隣地域に流出する心配が強まったのだろう。おそらく「お隣りは○○円ぐらい上げそうだ」などという情報が飛び交ったに違いない。このためか四国と九州の県は、すべて賃上げ幅が国の...
◇ 人手不足の緩和か、中小企業の倒産か = 全都道府県の新しい最低賃金額が確定した。厚生労働省によると、全国平均は1055円。現行より51円高くなる。最も上げ幅が大きかったのは徳島県で、現行より84円も引き上げられた。次いで岩手県と愛媛県が59円、島根県が58円の引き上げ。これまで1000円を超えていたのは東京都など8都府県だったが、これが改定後は16都道府県に増える。最低賃金というのは、バイトやパートなども含めたあ...
◇ 最高の決算発表でも株価が急落 = ニューヨーク株式市場で、全く奇妙な現象が持ち上がった。世界最大のIT企業にあっという間にのし上がったエヌビディアが、その主役。28日の取引終了後に、5-7月期の決算を発表した。その内容は売上高が300億4000万ドル(約4兆3000万円)、前年同期比で2.2倍。純利益は168億9900万ドルで、前年比2.7倍。いずれも市場の事前予想を大きく上回った。なんとも素晴らしい業績である。ところが株価...
◇ IT株が下落しても、ダウは最高値を更新 = ダウ平均は先週388ドルの値上がり。終り値は4万1563ドルで、史上最高値。週間の上げ幅はそんなに大きくないが、月・火・木・金の4日にわたって最高値を更新した。これまで常に相場をリードしてきたIT関連株が下落。しかし利下げで恩恵を蒙る不動産や中小型株などが買われて、平均株価を引き上げた。また景気の堅調が見込まれることから、内需関連株にも資金が流入している。日経平均...
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◇ 巨額のコストは誰が払うのか = 東北電力の女川原発2号機(宮城県)が29日、東日本大震災で停止して以来13年7か月ぶりに再稼働した。いま日本にある原発は33基。このうち大震災のあと再稼働した12基の原発は、すべてに西日本に所在するもの。東日本で原発が再稼働するのは初めてのことである。経済産業省は「原発を出来るだけ活用する」という政府の方針に沿った動きと自画自賛。マスコミもだいたいは歓迎しているようだ。女川...
◇ 早くも「財政悪化→金利上昇→ドル高・円安」 = 来週11月5日はアメリカの大統領選挙。ハリス、トランプ両候補の勢いは全く伯仲と伝えられるが、ニューヨーク金融市場は早くもトランプ氏の返り咲きに備えて動き始めた。ただし金融市場はもともと共和党寄り。法人税の減税や所得減税を公約するトランプ氏の復活は歓迎されるはずだが、今回はやや様子が違う。どちらかと言うと、警戒感の方が前面に浮き出ているようだ。議会筋の計...
◇ 石破政権は国民と連立するしかない? = 自民・公明の与党が大敗、議席数を215に減らした。過半数に18議席も足りない。石破首相の早期解散戦術で、野党は9割の選挙区で候補者の調整が出来なかった。それでも立憲民主党など野党が議席を伸ばせたのは、それだけ自民党の‟裏金”問題に対する有権者の怒りが大きかったために違いない。石破首相は、この事態をどう打開しようとしているのか。とりあえずは、無所属で当選した議員に自...
◇ 「選挙は売り」に変わった日米株式市場 = ダウ平均は先週1162ドルの大幅な値下がり。5日間の続落だったが、終り値は4万2000ドルをなんとか維持した。アメリカの景気はゆっくりと下降しているが底堅い面も見せていて、経済の軟着陸に対する期待はいぜん高い。にもかかわらず株価が続落したのは、大統領選挙の結果に対する心配。特に政治的な混乱と分断が加速するのではないかという心配が、急速に強まったことが響いているよう...
◇ 日本人が締め出されて行く悲劇 = 観光局の集計によると、1-9月期の外国人観光客数は累計2688万0200人になった。早くも23年の年間客数2506万人を超えている。ことし中には3500万人に達するとみられ、過去最多になる見通し。また観光庁の発表によると、1-9月期の訪日外国人による消費額は5兆8582億円。こちらも23年の消費額を抜いて、過去最多になった。円安で訪日客が増え、高騰している宿泊費などが消費額を押し上げている...
◇ 投資の対象としては最高の実績 = 金に対する需要は①宝飾・アクセサリー②中央銀行による買い付け③投資④産業用--の4つに分けられる。WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)によると、23年の実績では宝飾・アクセサリーが全体の49%を占めて最大。次いで中央銀行が23%、投資用が21%、産業用が7%となっている。このうち宝飾用としての個人の購入は、中国とインドが圧倒的に多い。最近になって増えたのが、中央銀行によ...
◇ 結局は“不安”の集大成なのかも = 金(きん)の値段が、着実に上昇している。国際価格の指標となるニューヨーク市場の先物相場は先週17日、1トロイオンス=2712.7ドルの最高値を記録した。年初来の上げ幅は630ドルを超え、年間の上げ幅としても過去最大。ニューヨーク市場の株価よりも、上昇率が大きくなっている。国際価格の上昇を反映して、日本国内の相場も高騰している。東京市場では22日の小売価格が1グラム=1万4567円...
◇ 景気が回復しなければバブルは崩壊 = 中国の不動産不況は厳しく、景気の回復はまだ見えてこない。統計局が18日に発表した7-9月期のGDP速報によると、前年同期比の実質成長率は年率4.6%。1-3月期の5.3%、4-6月期の4.7%から低下する傾向がまだ続いている。1-9月期でみると4.8%の成長率。政府が目標としている「5%前後」に、ぎりぎり収まっている状態だ。同時に発表された主要指標をみると、鉱工業生産は1-9月期に5...
◇ 株価が11日間で58倍に大暴騰 = 9月20日には1220円だった株価が、10月8日には7万0400円になった。営業日にしてわずか11日の間に、なんと58倍に大暴騰したことになる。その銘柄は東京証券取引所に上場している中国株ETF(上場投資信託)のうちの「One ETF 南方」という銘柄。中国政府が株価対策を実施するというニュースが上昇のきっかけ。ところが中国本土は10月1-7日が国慶節で市場はお休み、売り物が全く出ない状態で買い...
◇ ダウは底堅く、日経平均は軟弱 = ダウ平均は先週412ドルの値上がり。6週連続の上昇で、終り値は4万3276ドル。またもや新高値を更新した。しかし10月に入ってからは946ドルしか上げていない。高値圏での利益確定売りをこなしながら、着実に値を切り上げているわけだ。先週も予想を上回る小売り売上高の発表があったが、これで経済の軟着陸が確実になったという見方が強まり、FRBの利下げが遠のくという心配を抑え付けた。ニ...
◇ 日本再生のラスト・チャンス = 日本人が発明した、薄くて曲げられるプロブスカイト型太陽電池。中国ではすでに量産体制に入っている。たとえば極電光能は江蘇省に100万㌔㍗級の工場を建設中、大正微納は福建省で25年に量産を始める予定。このほか数社が大工場を建設中だという。生産するのは薄くて曲げられる電池と、従来型のガラス製基盤にプロブスカイト型を張り合わせた改良型に分かれた模様。この改良型は発電効率はいい...
◇ これでは‟曲がる太陽電池”も中国にやられる = 総選挙を前に7党首の討論会が12日、日本記者クラブの主催で開かれた。その内容を詳細に報じた大新聞の記事を見て、びっくり仰天。それは7党首の誰もが、ひと言も「日本経済の将来を左右する産業育成政策」に触れなかったことだ。みなさんはどちらかというと、減税や補助金などバラまき型の政策を主張するばかり。日本経済を強くする発想は、お持ちではないようだ。こんな人たち...
◇ 次の利上げは出来るのか = 「日銀の金融政策に対する政府の口先介入は厳に慎まなければならない。ただし期待を申し上げることはありうる」--石破首相は先週12日に行なわれた日本記者クラブ主催の7党首討論会で、こんな弁明をした。石破氏は首相に選出された直後に植田日銀総裁を官邸に呼んで会談、そこで「金利の引き上げは慎重にしてほしい」と圧力をかけたのではないかと推測されている。ちなみに赤沢経済再生相は記者会...
◇ 日米ともに選挙が次のカベに = ダウ平均は先週511ドルの値上がり。5週間の連騰で、終り値は4万2844ドル。またまた史上最高値を更新した。9月の雇用統計が予想より強く、消費者物価が予想より弱かったことから、経済の‟軟着陸”に対する期待がより高まっている。このため利益確定売りや中東情勢の緊迫があっても、株価は崩れない。長期金利は4%台に上昇、ドル高・円安が進んだ。日経平均は先週970円の大幅な値上がり。終り値は...
◇ 経済政策の独自色をすべて消去 = 石破新首相は7日の国会答弁で、金融所得課税について「現時点で具体的に検討することは考えていない」と言明した。またアベノミックスについても「GDPを高め、雇用を増大した」と、前向きに評価する発言を行っている。これまでの「金融所得課税を検討する」「アベノミックスには副作用も多い」という主張を、公式の場で改めて修正したことになる。石破茂氏が自民党総裁に選出された9月27日...
◇ 毎年89円の賃上げはとても出来ない = 「2020年代に全国平均1500円という高い目標に向かって努力を続けます」--石破新首相は所信表明演説のなかで、最低賃金についてさらりとこう言ってのけた。岸田前首相は「30年代の半ばまでに1500円にする」と公約していたが、それを5-6年早めることになる。最低賃金というのは、パートやバイトを含むあらゆる労働者に対して、使用者が支払わなければならない最低の時給額。その引き上...
◇ 予算1000億円が2000億円に増えるだけ = 石破新首相の所信表明演説を報じた新聞の紙面に「地方交付金を倍増」という大見出しが踊っていた。一瞬「これはすごい。でも財源はどうするのだろう」と心配してしまう。地方交付税交付金は政府が国税の一部を原資として、都道府県や市町村の財政を支援する制度。24年度予算でも17兆7863億円が計上されている。だから倍増するには17兆円が必要。そこで心配したわけだが、誤解はすぐに解...
◇ 反発力が弱くなった日本株 = ダウ平均は先週40ドルの小幅な値上がり。それでも終り値は4万2353ドルで、最高値をまた更新した。9月16日以来、実に8回も史上最高値を更新している。市場がアメリカ経済の‟軟着陸”を確信しているためで、高値警戒の売り物をこなしながら緩やかな上昇を続けた。金曜日には9月の雇用統計が発表され、非農業雇用者の増加数が予想をはるかに上回った。これでFRBによる次の利下げは遠のいたという見...
◇ 日本は巨大な恩恵を受けるだろう = OPECプラスは9月5日「主要8か国が続けてきた日量220万バレルの減産を11月末まで延長する」と発表した。これを受けてWTIの先物相場は、1バレル=70ドル台に戻している。しかしその直後の10日に、世界の原油需要がやや減少するという予測が発表されると相場は65ドル台、1年4か月ぶりの安値に落ち込んだ。これはウクライナ戦争が始まる前の水準である。またイスラエルがレバノンに攻め...
◇ 減産ではなく増産で失地回復へ = ロイター通信は先週26日「OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどの産油国が、12月から原油の増産を始める」と報道した。またフィナンシャル・タイムズ紙も同じ日「サウジアラビアが12月から増産を始めるための準備を開始した」と報じた。こうした報道を受けて、ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)の先物相場は1バレル=66ドル台にまで下落した。本当なら日本経済も非常に大きな好影響を...
◇ 減税の評判が悪いのは、なぜ? = マスコミ各社の世論調査で、岸田内閣の支持率がガタ落ちとなった。トップを切った日経新聞の調査では、支持率が33%で政権発足以来の最低。またNHKの調査では36%だったが、テレビ朝日の調査では26.9%にまで落ち込んでいる。与党内では「これでは解散はムリ」の声も出始める始末。岸田首相は「減税までやるというのに、どうしてなんだろう」と、頭を抱えているに違いない。調査によると、...
◇ 次の焦点はゼロ金利の解除 = 日銀は31日に開いた金融政策決定会合で「長期金利が1%を超えて上昇すること」を容認した。これまでは上限としてきた1%をメドに改め、一定限度なら超えてもいいというように修正している。ただ短期金利をゼロに抑える政策やETF(上場投資信託)の買い入れなど、金融緩和の姿勢は崩さない。このように形としては政策のわずかな修正に過ぎないが、これが金融引き締め政策への第1歩となる可能性...
◇ 量的引き締めはまだ1兆ドル = パウエルFRB議長が「経済は金利の影響を受けにくくなっているのかもしれない」と嘆き節。珍しいことである。FRBは昨年3月からインフレ退治のために金融政策を引き締めに転換、政策金利をゼロから5.25%まで引き上げた。しかしアメリカ経済は堅調を維持し、物価はなかなか下がらない。パウエル議長の嘆きは、まだまだ続きそうである。金利がこれだけ上昇すると、ふつう経済には強いブレー...
◇ あさって1日のパウエル会見待ち = ダウ平均は先週710ドルの値下がり。2週間の続落で、この間の下げ幅は1200ドルを超えた。長期金利の上昇、中東情勢の緊迫、それに長引く自動車ストなど、株式市場には次々と逆風が吹き込む。7-9月期の実質GDP成長率が4.9%と予想をはるかに上回ったことも、金融引き締めを止められない原因になるという理由で悪材料視された。いまはあさって1日に行なわれる、パウエルFRB議長の記者会...
◇ 高利回りにはリスクが伴う = アメリカの長期金利が16年ぶりの高さに上昇している。10年もの国債の利回りは先週5%台に乗せた。雇用や物価などが予想以上に堅調で、FRBの引き締め政策が長続きするという見方。政府の財政支出増加で、国債発行額が急増。そして議会が空転し予算成立のメドが立たないことが、長期金利を引き上げる原因となっている。最も信用度が高い国債でさえ、年5%の金利が付かないと売れない。その他の公...
◇ 日本はこの50年間なにをやったのか = ちょうど50年前の1973年10月6日、エジプトとシリアが共謀してイスラエルを奇襲。いわゆる第4次中東戦争が始まった。結果はイスラエルの勝利に終わったが、OPEC(石油輸出国機構)はイスラエル寄りの先進国を牽制するため、突如として原油の輸出価格を4倍に引き上げた。これが石油ショック。各国の物価は急騰、景気は下降を余儀なくされた。日本でもトイレット・ペーパーの買い占め騒...
◇ ガザ戦争で高まる危険性 = 原油の国際価格は、いま高止まりしている。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物相場は、このところ1バレル=90ドルを前に足踏み状態。しかしイスラエルのガザ地上作戦が、本格的に始まったらどうなるか。ごく短期で決着すればともかく、もし長引いてレバノンやイランなどの近隣アラブ諸国が巻き込まれれば、価格は確実に100ドルを突破するに違いない。それが世界経済に及ぼす悪影響は...
◇ 国民の知りたい点をすっぽかした = 「経済、経済、経済」と連呼した岸田首相の所信表明演説。経済を‟一丁目一番地”にしようという意欲は、よく伝わった。だが結論から言うと、残念ながら落第点を付けるしかない。というのも、その結果として日本経済はどんな姿になるのか。国民の生活は、どうなるのか。みんなが知りたいと考えている点に全く触れなかったからである。だから演説は空回り、岸田首相の独りよがりになってしまっ...
◇ 期限付き減税の危うさ = 岸田首相は20日、自民・公明党の幹部に対して「所得税の期限付き減税と低所得者への給付金支給」を検討するよう指示した。これを受けて政府・与党は、政策懇談会を26日に開いて議論を始める。税制改正法案を通常国会に提出、年度内の成立を図る方針だ。減税については与党内からも疑問の声が出ているが、岸田首相は所信表明演説でも明言。強行突破する姿勢を見せている。減税の規模はまだ不明だが、5...
◇ 長期金利の上昇が波乱要因に = ダウ平均は先週543ドルの値下がり。週の前半は9月の雇用・消費者物価・小売り売上高がそろって予想を上回ったにもかかわらず、株価は上昇。ところが水曜日になると、長期金利が4.9%にまで上昇し株式市場には警戒感が走った。そこへパウエルFRB議長が講演で「さらなる引き締めが正当化されることもありうる」と言明、木曜日には金利が5%と16年ぶりの水準に到達した。イスラエル情勢なども悪...
◇ 現状判断では「きわめて微妙」 = 中国統計局の発表によると、7-9月期の実質成長率は前年同期比の年率で4.9%だった。前4-6月期の6.3%から大きく減速。不動産不況に改善の兆しが見られず、個人消費や輸出も伸び悩んだ。地方政府は財源難で景気対策を打ち出せず、北京政府はもっぱら金融緩和で需要を喚起しようとしている。だが今後の見通しは厳しく、習近平政権が目標としている「23年の5%成長」を達成できるかどうか。微...
◇ 政府は鈍感すぎる = 機械化・ロボット化・AI化、女性と高齢者の活用、外国人の招聘、それに生産性の向上。--人手不足を解消するための方策は、これしかない。だから政府・自治体・企業・個人は、これらが進展するように地道な努力を重ねるしかない。たとえばロボット・AI化減税、リスキリング、年収のカベの撤廃、外国人労働者に対する優遇策、週休3日制の推進・・・。しかし、こうした努力を重ねたとしても、今後に予...
◇ 「働き方改革」で働く時間が減少 = 「人口が減っているのだから、人手不足はやむをえない」と考える人が多い。だが、これは間違い。たしかに日本の人口は減り始めたが、働く人は増えている。つまり遊んでいる人が少なくなったわけだ。たとえば労働力調査で就業者数をみると、13年には平均6311万人だったのが直近の4-6月期には6747万人に増えている。実に430万人以上も増加した。この10年間、日本のGDPはあまり大きくなっ...
◇ 35年には最大1190万人が不足 = これまで運輸・建設・介護・サービス業について人手不足の実情をみてきたが、他の多くの業種も人手が集まらずに苦しんでいる。たとえば医師・看護師、学校の先生や技師、消防士から官僚に至るまで。人が余っているのは、一部の事務系の職場と国会議員ぐらいなものではないか。しかも今後の見通しも、非常に厳しい。三菱UFGコンサル&リサーチ社の推計。少子・高齢化の進行で、労働力人口は...
◇ ユダヤ的な視点が強いNY市場 = イスラエル地上部隊のガザ進攻は、どんな結果をもたらすのだろうか。一般的な見方は、3つの可能性に集約できるだろう。①イスラエル軍は短期決戦に成功。1か月以内にハマスを完全排除する②ハマスがゲリラ戦で抵抗、レバノンのイスラム教シーア派ヒズボラが参戦して長期化する③イラクやイランが参戦、第5次中東戦争になる--このうち①の可能性が大きく、②もありうる。③は可能性が小さい。と...
◇ 東京市場ははしゃぎ過ぎ? = ダウ平均は先週263ドルの値上がり。4週間ぶりの上昇となった。雇用や物価が予想より強く、イスラエルの緊迫も加わって金利が上昇。環境は芳しくなかったが、FRBが発表した9月のFOMC議事録で「利上げに慎重な意見が多かったこと」が判明。市場はこれを頼りに買い進んだ。その根底には、過去3週間で1200ドル下げたことへの反動がある。押し目買いの力は、まだまだ強い。日経平均は先週1321円...
◇ 倒産に直結してしまう業種 = サービス業は基本的に、人手がなければ成り立たない業種だ。だから人手不足は命取り。倒産してしまう企業も多い。なかでも人手不足に苦しんでいるのは、飲食業と宿泊業。コロナ規制で離れて行った従業員が帰ってこない。高齢化が進む一方で、新規参入が少ない。この業種は季節や時間で繁忙期が異なるから、バイトやパートなどの非正規従業員は必要不可欠。その人たちも集まりにくくなっている。総...
◇ 要介護者の増加に追い付かない = 介護保険制度は2000年に発足した。当時の介護職員は55万人。それが現在は230万人に増えている。常に不足気味だが、なんとか伸びてきた。ところが、これからが大変。25年には団塊の世代が、全員75歳以上に達する。このため厚労省によると、介護職員は32万人も不足する。これが介護の「2025年問題」だ。さらに40年には69万人が不足する見通しだが、それが埋まる見込みはほとんどない。労働条件...
◇ 大阪万博は象徴的な出来事 = 建設業界の人手不足も深刻だ。総務省によると、建設業の従業員数は22年で479万人。ピークだった97年に比べると、3割以上も減少した。人手が足りないと、工期が遅れる。人手を増やせば、人件費が増える。どっちにしてもコストは上がってしまう。そこへ来年4月からは、残業時間が年720時間に制限される。いま大阪万博の建築契約が進まず問題となっているが、この傾向は全国に広がり始めている。昔は...
◇ 減税論が飛び交う永田町 = コトの発端は9月26日の閣議。岸田首相は新経済対策の作成を指示したが、この席で「税や社会負担の軽減など、あらゆる手法を動員する」「成長の成果である税収増を国民に適切に還元すべきだ」と強調した。所得税か法人税か消費税か? 永田町ではその日から、減税論が飛び交っている。自民・公明党が減税に傾いたため、野党はお株を盗られた形で意気消沈することとなった。岸田首相はしばしば「賃上...