図書館で見掛けたので、読んでみた。 まず、とても引き込まれる筆致で、ライトノベルばりに読み易い。しかし、表現の豊かさや内容、構成などを見ると、明らかに純文学だ。主人公がイカれたヒモくずれで、砕けた饒舌体で書かれるためもあって、難解な表現がなく長音記号の頻出するナンパな文章なのに、そこそこ文学的であり、ぐいぐい引き込まれる筆致だ。襟を正して正座して読むような、堅苦しさは皆無だが、純文学としての芸術性がある。一言で言って、面白い。 場面は、広島、東京、新潟、富山、広島、と移り変わるが、ところどころフランスやイタリアなどの海外の回想も入り、そこは旅情を誘う大衆文学的要素もあるのだが、富山在..