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  • MUSIC TOMORROW 2024

    N響恒例のMUSICTOMORROW2024。今年度の尾高賞受賞作品は湯浅譲二(1929-)の「哀歌(エレジィ)-formywife,Reiko-」(2023)。コンサートに先立ち授賞式が行われた。94歳の湯浅譲二。体調不良の噂もきく。はたして授賞式に出席できるのかと危ぶんだが、車椅子にのって現れた。数年前までは元気に演奏会に来ていた。だいぶ弱ったようだ。わたしはそっと敬慕の念を抱いた。「哀歌(エレジィ)」は2曲目に演奏されたが、まず「哀歌(エレジィ)」から書き始めると、わたしもこの曲は傑作だと思う。奥様を亡くした悲しみから生まれた曲だ。その慟哭の想いがあふれる。音の密度(物理的な密度ではなく、音に込めた感情の濃さ)が半端ではない。わたしは杉山洋一指揮都響の初演も聴いた。そのときも感動したが、今回のペータ...MUSICTOMORROW2024

  • マーク=アンソニー・ターネジの音楽

    東京オペラシティ恒例の「コンポ―ジアム2024」。今年の審査員はマーク=アンソニー・ターネジ(1960‐)。演奏会の「マーク=アンソニー・ターネジの音楽」はポール・ダニエル指揮都響の演奏で開かれた。1曲目はストラヴィンスキーの「管楽器のためのサンフォニー」(1920年版)。この曲はドビュッシーの追悼のために作曲されたらしい(向井大策氏のプログラムノーツより)。管楽アンサンブルのための曲だ。木管13、金管11、合計24とかなり大きい。そのアンサンブルが一糸乱れずに演奏した。目の覚めるようなシャープな演奏だ。都響のメンバーの他に在京オーケストラの首席奏者も加わっていた。それらの演奏者の力量はもちろんだが、ポール・ダニエルの統率力にも目をみはった。2曲目はシベリウスの劇音楽「クオレマ」から「カンツォネッタ」。シ...マーク=アンソニー・ターネジの音楽

  • ヴァルチュハ/読響

    今年4月に読響の首席客演指揮者に就任したユライ・ヴァルチュハ。読響を振ったのは昨年8月が初めてだ。わたしはそのときは都合で聴けなかった。今回が初めてのヴァルチュハ体験。曲目はマーラーの交響曲第3番。ちなみに昨年8月の曲目はマーラーの交響曲第9番だった。長大な第1楽章では、トロンボーンがオーケストラ全体に君臨するように轟きわたった。底光りするような音色だ。トロンボーンが古代ギリシャの神ディオニュソスを象徴するのだとしたら、わたしは初めてそれを実感したように思う。トロンボーンにかぎらず、第1楽章全体にわたって、音の陰影が濃い。明るく輝くような音から暗くくぐもるような音まで、明暗のコントラストがはっきり付けられている。音のイメージが徹底され、音楽が深く彫琢されている。ヴァルチュハは、心地よさよりも、音楽の骨格を...ヴァルチュハ/読響

  • 井上道義/日本フィル(横浜定期)

    井上道義が振る日本フィルの横浜定期。今年12月末での指揮活動からの引退を表明する井上道義。日本フィルを振る最後の演奏会だ。プログラムはオール・ショスタコーヴィチ・プロ。1曲目はチェロ協奏曲第2番。めったに実演を聴く機会のない曲だが、今まで聴いた実演の中では、抜群のおもしろさだった。ショスタコーヴィチ晩年の様式が顕著な曲だ。晦渋とも、暗いとも、謎とも、いろいろなイメージで語られるが、演奏前にマイクをもって現れた井上道義は「ユーモア」といった。「心に余裕がないとユーモアは生まれない」と。そのような解釈が関係するのかどうか、ともかく長大な第3楽章が驚くほどおもしろく聴けた。延々に続くチェロのモノローグが、少しも重くなく、むしろ軽やかだった。チェロ独奏は佐藤晴真だが、その独特の豊かな音と丸みをおびた表現、そして日...井上道義/日本フィル(横浜定期)

  • ノット/東響

    昨日も書いたが、定期会員になっている5つのオーケストラのうち4つの演奏会が土日に重なり、2つを振り替えて聴いた4つの演奏会。最後はノット指揮の東響。ともかくこの演奏会を聴けて良かった。2年後の退任が発表されたノットが、東響であげた数々の成果のうち、この演奏会は忘れられないもののひとつになりそうだ。1曲目は武満徹の「鳥は星形の庭に降りる」。何度も聴いた曲だが、ノット指揮東響の演奏は細部まできっちりして、音楽の区切りが明確で、しかも呼吸感のある演奏だった。武満トーンといわれる音が、過度に柔らかくなく、芯のある音で鳴った。2曲目はベルクの演奏会用アリア「ぶどう酒」。武満徹の音楽にはベルクの影響を感じることがあるが、並べて聴くと、武満徹の、音がまばらで隙間の多い書法にたいして、ベルクの場合は高音域から低音域まで音...ノット/東響

  • 藤岡幸夫/東京シティ・フィル~ルイージ/N響

    昨日は午後は東京シティ・フィルへ、夜はN響へ行った。連チャンは苦手だが、わたしが定期会員になっている5つのオーケストラのうち4つのオーケストラの演奏会が、昨日と今日に重なったため、2つのオーケストラを振り替えたからだ。東京シティ・フィルは藤岡幸夫の指揮。1曲目はディーリアスの「夜明け前の歌」。藤岡幸夫がプレトークで「ディーリアスはイギリス音楽の代表のように思われているかもしれないけれど、ディーリアス自身はフランスに住んでいて、フランスが好きだった」(大意)といっていた。なるほど、そういわれてみると、「夜明け前の歌」はフランス近代の音楽のように聴こえた。2曲目はリストのピアノ協奏曲第2番。ピアノ独奏は福間洸太朗。緩急のメリハリをつけた演奏だ。演奏によっては捉えどころがなくなりがちなこの曲だが、福間洸太朗の演...藤岡幸夫/東京シティ・フィル~ルイージ/N響

  • カーチュン・ウォン/日本フィル

    カーチュン・ウォンが日本フィルを振ってマーラーの交響曲第9番を演奏した。それは予想もできない演奏だった。第1楽章は音の断片が飛び交うマーラーの音楽の、その断片が鋭角的に発音される。ニュアンスが際立ち、パッチワーク風とも、コラージュ風ともいえるが、その言葉には収まりきらない、全体が崩壊の寸前でとどまっている感覚があった。わたしは現代音楽が好きなのだが、まるで現代音楽を聴くようだった。第2楽章はのどかなレントラーやワルツといった舞曲よりも、軋み(きしみ)とか、歪み(ゆがみ)とか、何かそんなものを感じさせた。主体(マーラー)と客体(舞曲)とのかい離といったらいいか。素直には喜べない感覚があった。第3楽章は闘争的な音楽だが、その音楽と演奏の間に齟齬がなかった。全4楽章の中でもっとも普通に聴くことができた。終盤に入...カーチュン・ウォン/日本フィル

  • 国立西洋美術館:ゴヤ「戦争の惨禍」

    国立西洋美術館でゴヤ(1746‐1828)の版画集「戦争の惨禍」が展示中だ(5月26日まで)。全82点。スペイン独立戦争(1808‐1814)の悲惨な状況と、(戦争には勝利したものの)戦後の反動政治による抑圧を、ゴヤならではのリアルな目で描いたものだ。同美術館は「戦争の惨禍」の初版を所蔵する。これまでもその数点を展示することはあったが、全点の展示は初めてだ。初版はゴヤの死後35年もたった1863年に出た。そのときには80点にとどまった。残りの2点の原版が見つからなかったからだ。その後2点の原版が発見された。同美術館は2点の第2版を所蔵する。82点すべての画像は同美術館のHPで見ることができるが、実物のほうが、細かい描写や繊細なニュアンスがよくわかる。本展の解説によると、全体は三部に分けられる。第一部は戦争...国立西洋美術館:ゴヤ「戦争の惨禍」

  • SOMPO美術館「北欧の神秘」展

    SOMPO美術館で「北欧の神秘」展が開かれている(6月9日まで。その後、松本市、守山市、静岡市に巡回)。北欧絵画の展覧会は珍しいので、新鮮だ。手つかずの自然や素朴な人々を描いた作品が多い。北欧とはいっても、本展はノルウェー、スウェーデン、フィンランドの3か国の画家の作品で構成される。デンマークとアイスランドの画家は含まれない。実質的にはスカンジナビア半島の文化圏の展覧会だ。北欧絵画はあまり馴染みがないが、近年、国立西洋美術館がデンマークのハンマースホイ(1864‐1916)の作品を収蔵し、その記念に2008年にハンマースホイ展が開かれた(2020年にも開かれた)。最近はフィンランドのガッレン=カッレラ(1865‐1931)の作品を収蔵し、またスウェーデンの劇作家で小説家のストリンドベリ(1849‐1912...SOMPO美術館「北欧の神秘」展

  • 国立新美術館「遠距離現在 Universal Remote」展

    国立新美術館で「遠距離現在UniversalRemote」展が開かれている(6月3日まで)。8人と1組の現代美術家の作品の展覧会だ。「遠距離現在」という言葉はあまり聞きなれない言葉だが、開催趣旨は、世界規模に広がる人間活動にあって、人と人との距離、人と社会との距離は近くなったのか、それとも遠くなったのか、ということらしい。本展のキーワードはインターネットの普及とパンデミックの経験だ。作品はすべてパンデミック以前に制作されたものだ。それらの作品をパンデミック以後のいま見るとどう見えるか、と本展は問う。8人と1組は国も年齢も、そして関心のありようもさまざまだ。わたしがもっとも面白かった作品は、北京とニューヨークを拠点とするシュ・ビン(1955‐)のヴィデオ作品「とんぼの眼」だ。本作品はインターネット上で公開さ...国立新美術館「遠距離現在UniversalRemote」展

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