「この年収で本当にちゃんとした人材が来てくれると思っているのか」――。6月下旬から7月上旬にかけて、SNS上にはIT(情報技術)エンジニアたちのため息があふれていた。

 やり玉に挙がったのは、システム関連のトラブルを抱えている江崎グリコとKADOKAWAの求人だ。江崎グリコは4月、基幹システムの切り替え作業時にトラブルが発生し、主力商品を出荷できない状況に陥った。KADOKAWAは6月にサイバー攻撃を受け、「ニコニコ動画」などの主要サービスを停止している。

 江崎グリコは6月、転職サイトで「社内SE(PLM領域)」の求人を掲載していた。PLMとは製品のライフサイクル管理のこと。グループのIT戦略を担う先鋭部隊としてデジタル変革を進める仕事だ。

 現在、その求人は非公表になっているが、必須条件として生産システムの企画やプロジェクトマネジャーの経験を求めていた。江崎グリコが提示していた想定年収は500万~850万円。マイナビの調査などによると、プロジェクトマネジャークラスの平均年収は650万~670万円程度。江崎グリコの想定年収が相場から大きく外れているわけではない。

 それでも基幹システムトラブルで出荷停止が長引いていたこともあり、「仮に後始末を担当するポジションだとしたら最低でも1000万円は提示しないと応募が来ないのではないか」「年収の下限が500万円というのは技術者を軽視している」といった指摘がSNSで相次いだ。

ネット上ではシステム関連人材への報酬が低いとの指摘が相次いだ(写真=PIXTA)
ネット上ではシステム関連人材への報酬が低いとの指摘が相次いだ(写真=PIXTA)

 サイバー攻撃にいまだ頭を悩ませているKADOKAWAもエンジニアの求人情報がネット上で拡散され、同様の流れをたどった。

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