最近「後輩の育て方がわからない」という先輩側の声を見かけます。厳しくすると辛いと辞めてしまうけれど、かといって「ゆるい職場」でもモチベーションが保てず退職を考える。育て方の「ちょうどいい塩梅」は、どうやって見つけていけばいいのでしょうか?
この「あるある」なお悩みを解決する方法について、「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーに活躍する「ラフドクター」、精神科医・産業医の井上智介先生にうかがいました。
井上智介先生
精神科医&産業医
「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーにした「ラフドクター」として活躍中。書籍多数。近著に『がんじがらめの心がラクになる 「呪いの言葉」の処方箋 』など。
「後輩の育て方」が難しい
Q.後輩を育てるときの「上手な負荷のかけかた」が知りたいです。負荷をかけすぎて後輩のメンタルを病ませてしまうのは本意ではありません、かといって最近は「ゆるすぎて成長できないからやめる」という話も聞きます。どうしたら「ちょうどいい負荷」の塩梅が見極められるものなのでしょうか?
最近、上司・先輩側の方からのこのような悩みが増えてきました。
上司世代は「この職業になったんならこうなりたいんだろうな、この会社ならこれを身につけたいんだろうな」という自分たち世代の価値観で接してしまいがちですが、そうとは限らないパターンが山ほど出てきています。
「単に生活費を稼ぐため」「残業はしたくない」という若手もいれば「いやいや、自分はスキルアップしたいからもっと働きたい」という人もいます。人によって求めるキャリアプランの多様性が出てきて、「ちょうどいい負荷」があまりに人によって異なるため、「部下が何を求めて仕事をしているのか」を確認するのが必要な時代になってきました。
このときに重要なのは「部下が本音を言える関係性を作れているか」ということです。
しんどいときにしんどいと言えるか、頑張りたいときに頑張りたいと言えるか。仕事に求めるものは何か。本当は仕事はそこそこに、趣味に時間をかけたいのか。そんな、部下の仕事へのスタンスが見えるような関係性を作ることです。
まず土台として必要なのは、「上司がちゃんと挨拶をしてきてくれる」「柔らかい表情で部下にも話かけてくれる」など、不用意に攻撃されない、傷つけられない安心感です。そこからもう一歩進むには、実は「仕事以外の話をいかに頻繁にできているか」が大事です。仕事の話ばかりしていると、本音を言いづらくなるものです。
「週3回くらい×たった数分」の雑談でも、関係性が深まっていきます。「半年に一度の飲み会」よりも、ちょっとした雑談が大事です。
部下たちは、自分に興味関心があるとわかってもらえれば、自然と仕事への向き合い方も本音を見せていくようになります。「最近スポーツ盛り上がってるけど、あんまり見れてないんだよね、●●さんは何か見てる?」など、自己開示しながら聞いていく。そんなちょっとしたことでOKです。
リモートワークが基本なら、会議の後に「ちょっとだけ話せる?」と雑談してみたり、週に一度は同じ日に出社しておしゃべりしたり。そんな日々の積み重ねは、どのくらいの負荷がいいのか、相手の本音を知るための大きな助けとなってくれるはずです。
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