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buffnurf


格闘ゲームの弱体化と強化について分析したCore-A Gamingの動画『格ゲー分析:なぜ弱体化よりも強化調整をしたほうが良いのか』の動画が、日本語字幕付きで公開されています。
4年ほど前の動画ですが、LiT|翻訳キュレーターさんが日本語字幕を提供したようです。





この動画では、ルールを変えるほどの影響をもたらしたNBAの殿堂入り選手”ジョージ・マイカン”と、格闘ゲームのバランス調整を対比して以下のようなことが述べられています。


・バスケットボールという競技の根幹を破壊したジョージ・マイカンという選手がいた。
・マイカンは208cmの身長を生かして、ゴールの前に立つとどんなシュートも止めてしまった。
・現在はゴールテンディングとして反則になるが、マイカンが登場するまでそれが出来る選手は前代未聞だった。
・マイカンという最強キャラに対抗して、フォートウェイン・ピストンズ(現デトロイト・ピストンズ)は早めにリードして時間切れまでパスを回すという戦略で適応した。そして19-18というNBA史上最低得点記録の試合をして、24秒ルールの制定につながった。
・ゴールテンディングでマイカンは弱体化されたが、24秒ルールで強化された。
・マイカンに有利なルール変更をした理由は、強化と弱体化の目的が、バランスではなくプレイと観戦を楽しくすることだから。
・マイカンは弱体化の対象になり続けたが、自分が得しない強化案を提案していた。3ポイントシュートを導入して、小柄な選手にチャンスを与えて守備が散らばることで観戦を面白くしたかった。

過度なバランス重視は競技を損なう
経済学者ラジ・ラフナサンは、”達成したい最終目標を完全に忘れてしまい、その手段と媒体のみを追い求めてしまうこと”を「手段の最大化」と呼んでいる。
・お金という紙や金属が単体では無価値なように、バランス自体も無価値。
・ストリートファイター1のバランスは完璧だが、同じ動きをする2キャラしか使えないから退屈。みんなが求めているのは、多彩なキャラと技。

調整の目的は、弱キャラの使用率を上げて強キャラの使用率を下げること
・その方法の1つが、弱キャラの強化。
・スト2ダッシュの改造版「スト2レインボー」は、全キャラが理不尽に強化されたバカゲーだが、現代格ゲーの基礎を革新した。スト2ターボ誕生のきっかけになり、SFC版が400万本売り上げた。
・スト2レインボーは、キャラの能力と選択肢が増えたことに影響力があった。
・弱体化は調整の良い手段だが、歓迎されない。カプコンの内部資料にも書かれている。
・弱体化が嫌われるのは、「損失回避」という、損失は利得の喜びの2倍痛く感じる心理が働くから。
・弱体化は、同程度の強化の2倍痛く感じる。
・弱体化はゲームが壊れないための必要悪だが、ゲームを改良する工夫も出来る。

・スト4では昇龍拳が何度も調整され、強昇龍がセビキャン出来なくなったことで、安全だが弱い昇龍と高リスクだが強い昇龍の選択肢が出来た。
・セビキャンできる状況で強昇龍を出せば、相手を読み切っているアピールができるようになり、ダメージと安全を天秤にかけることで戦いの幅が広がった。
・スト5ではシーズン2で昇龍拳の無敵が削除される弱体化があったが、これによってゲームの楽しさや面白さに影響があったのか?戦略の幅が広がったか?新しい戦い方が出来るようになったのか?
・全キャラを似せてバランスは取れても、バランス自体は無価値。Infiltration選手もゲームがつまらなくなると反対していた。
・格ゲーがバージョンアップするにつれて、キャラの選択肢や能力が増えることはあっても減ることはない。必殺技やシステムの選択肢が増えればきつい組み合わせにも対応できる。
・厳しい弱体化と能力の削除は面白さが半減する。極端な場合にのみ行うか、ゲームが面白くなる弱体化をすべき。
・バランスが悪くてアップデートのないゲームでも、プレイヤーが自主的にルールを作る。


ジョージ・マイカン


賢明な人ほど不幸になる理由とは



ウメハラが語るゲーム作りとバランス調整の深い話『最も重視すべきなのは、操作していて気持ちいい部分があること』『ストVシーズン2は強キャラを据え置くべきだった』