このエントリーをはてなブックマークに追加
2022-07-07


侮辱罪の法定刑の上限引き上げ きょう施行 背景にネットの中傷

侮辱罪の法定刑の引上げ Q&A

2022年6月13日に成立した「刑法等の一部を改正する法律」(令和4年法律第67号)による、侮辱罪の法定刑の引き上げが7月7日から施行されました。
今回の改正により、刑法231条・侮辱罪の法定刑が「拘留又は科料」から「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げられられています。
また、法定刑が引き上げられた事で、公訴時効も1年から3年に自動的に延長されています。(刑事訴訟法250条2項6号・7号)
刑法231条
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

法定刑引き上げの必要性について、法務省は以下のような見解を示しています。
インターネット上の誹謗中傷が特に社会問題となっていることを契機として、誹謗中傷全般に対する非難が高まるとともに、こうした誹謗中傷を抑止すべきとの国民の意識が高まっている。
・近時の誹謗中傷の実態への対処として、侮辱罪の法定刑を引き上げ、厳正に対処すべきとの法的評価を示し、これを抑止するとともに、悪質な侮辱行為に対して厳正に対処することが必要


今回の法改正については、憲法21条が保障する「表現の自由」が脅かされるといった懸念の声も上がっており、日本弁護士連合会は以下のような意見書を出しています。
侮辱罪について、法定刑を引き上げ、懲役刑を導入することは、正当な論評を萎縮させ、表現の自由を脅かすものとして不適切であり、また、インターネット上の誹謗中傷への対策として的確なものとは言えないので、これに反対する。

インターネット上の誹謗中傷による権利侵害への対策としては、プロバイダ責任制限法を改正して発信者情報開示の要件を緩和し、損害賠償額を適正化するなど、民事上の救済手段の一層の充実を図るべきである。

憲法21条 
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

そのため、施行から3年後に表現の自由を不当に制約していないか検証を行うことになっています。

侮辱罪厳罰化、「3年後の検証」明記 衆院法務委で可決


過去に侮辱罪が適用された判例によると、配信やクチコミで「ブタ」「ブス」「詐欺師」などと書き込んだり、口頭で複数の相手に「発達障害」と言った事で略式命令が下っているケースがあるようで、より一層の注意が必要となりそうです。

侮辱罪の法定刑が引き上げられたことで、正当な批判や論評が制約される事はないと信じたいですが、ネット上の誹謗中傷に対し一定の抑止力が働き、配信や掲示板のコメントで他人を傷つける行為に一定の歯止めがかかることが期待されます。


なお、当サイトにおいても全てのコメントのIPが保存されているため、批評や論評の枠を越えた誹謗中傷には十分注意して頂けると幸いです。