ここでは長野県で起きた飼い熊による事件と、ペットの熊害事件について解説しています。
11月28日、長野県松本市で、男性が飼っていたクマに襲われるという大変ショッキングな事件が起こりました。
男性は山で拾ったコグマを家に連れ帰り、長きに渡って育ててきて「ペッペ」と名付けていたそうです。
檻を設けて、熊の世話をしていたそうですが、その日、熊の檻の中で倒れている所を発見されました。体には噛み傷や引っかき傷がいくつもあったそう。
ペッペは体長1メートルほどのツキノワグマでした。
警察は男性(75歳)が熊に襲われて亡くなったものとみています。
熊は地元の猟友会によって射殺されました。
というわけで今日は猛獣をペットにすることの危険性について。
無くならない熊害。
野生の熊がいる日本では昔から熊による事故は起きてきましたが、飼育していた熊による死傷事件というのは稀です。
待ってよ、日本で熊は飼えないんじゃなかったの?
何の話だ?
以前ロシアの熊害事件の時に言っていたじゃないか。
日本でも許可があれば飼えます。
昔は個人でも飼えていました。熊だけでなく虎なども。
42年ほど前に起きた神野寺虎脱走事件により、法律が見直され、現在では行政の許可がなければ飼育はできません。
大型生物の飼育には、檻などの環境、管理体制や人員の確保など、越えるべきいくつものハードルがあります。
被害者が熊を飼育するに至った経緯や生活環境については明らかになっていませんが、以下の2点はハッキリしています。
- 松本市保健所の許可を得て飼育していた
- 前回の監査では飼育環境に問題はなかった
問題はなかったと。
問題があるから死亡事故が起こったんじゃないかな。
1件の重大災害には300件のヒヤリハットがひそんでいるという。
ロシアの事件では日に日に凶暴化していく熊を飼い主が恐れ、鎖で繋いだり対策を強化したが、惨劇は起きてしまった。
なぜ悲劇は繰り返されるのか?
なぜクマは飼い主を殺すのか?
詳しく解説していきます。
なぜ悲劇は繰り返される?
まずは過去に起きたペットによる熊害事件を紹介しよう。
ロシアのメンブラー。
ロシアのある町に暮らす男性が、山で拾ったコグマを家に連れ帰りペットにした。
最初は飼い犬とも仲良く、じゃれついて遊んでいたコグマ。男性により「メンブラー」と名付けられ、可愛がられて育った。
しかし大きくなるにつれ次第に凶暴になり、最後は犬と飼い主をペロリと食べてしまった…。
コグマを連れて帰るというのがフラグになってるな…
フラグかどうかは分かりませんが、この事件、とてもよく似ています。
- 拾ったコグマを飼育
- 許可は得ていた
- 成獣の熊に襲われた
- 熊は雄
コグマは子犬みたいに可愛いらしいね。
可愛いから、親熊とはぐれて震えているのを放っておけない。
熊の愛くるしい姿も元凶のひとつなのかもしれませんね。
オス熊は成長すると変わる
次に注目すべきポイントは、成獣のオス熊に襲われたこと。
メンブラーでも特筆しましたが、オス熊は成長するとある時を境に急に攻撃的になります。
これは熊の習性なので野生もペットも関係ありません。
メンブラー事件では凶暴になった熊の檻を強化しましたが、当該の熊はそれを破って逃亡しました。
熊はパワフルだ。体格は種類により差があるが全身が筋肉でできているのは共通している。
オス熊を飼うのは危険だな。
そうですね。
動物園や生態研究のため、というのでなければ飼わないのが最善ではあります。
許可は能力とは別である
もうひとつ、原因について言及しておきたい。
行政が与える「飼育許可」と言うのはあくまで許可であり「絶対安全」と言う保証ではないと言うこと。
運転免許証に置き換えてみると、分かりやすいかもしれません。
公道で車を操作することは許可されていても、安全については個々の責任ですよね。
ペットに関しても同様です。
まわりの人々への安全に関しては飼い主に全責任があります。猫や犬でも狂犬病予防ワクチンを打ったりリードでつないだり安全対策を施しますよね。
長野の事件では、飼育していた男性がひとりで熊の世話をしており、周囲に「自分が死んだら熊の行く末が心配」と話していたと言います。
それは…。
これ以上飼えない、自分一人ではどうにもならない、そう感じたらまわりに相談することが肝要です。
もちろん最期まで責任をもつことが大前提ではありますが、食生活や医療の発達によってペットの寿命はのびています。
長い人生、何があるか分かりません。
もうこれ以上飼えないと感じたら行政なり保護団体なり相談することが大事。
自分では思いもつかない方法を提示してくれるかもしれません。
ペットに対する責任について、一度考える機会にして頂ければと思う。
今回は熊をペットにすることについて解説しました。クマの動物研究では多数の猛獣事件を扱っています。