マダガスカルと言えば、花キリンなどの固有のユーフォルビア、固有種のアロエ、パキポディウム、DidiereaやAlluaudia、着生ランなど、とにかく珍しい植物の宝庫というイメージです。しかし、一般的にマダガスカルと言えばキツネザルをイメージするかも知れません。私もDidierea-Alluaudia林に住むキツネザルは、果たしてあのトゲトゲの幹に掴まって平気なんだろうかと、余計な心配をしたりもしました。さて、そんな中、キツネザルと植物の関係について書かれた興味深い論文を見つけましたのでご紹介します。それは、Jen Tinsmanらの2017年の論文、『Scent marking preferences of ring-tailed lemurs (Lemur catta) in spiny forest at Berexty Reserve』です。

キツネザルのマーキング行動
キツネザルはすべての霊長類の中で、最も複雑なマーキング行動を行います。群れのナワバリや、配偶者へのアピール、同じ性別の中での順位など、様々な社会状況に香りを使用します。過去にワオキツネザルで実施された研究では、マーキングをする際の特定の植物に対する選好は見られませんでしたが、垂直な茎に対する強い選好が見られました。しかし、観察されたのは雨季の森林内で、樹上での行動でした。ワオキツネザルは乾季には、乾燥しトゲだらけのDidierea-Alluaudia林に移動します。乾季ではマーキングする植物に選好はあるのでしょうか? 

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ワオキツネザル  Lemur catta
『Histoire phyrique: naturelle et politique de Madagascar』(1890年)より


ワオキツネザルに好みあり
ワオキツネザルが出産する乾季に、Berenty保護区で観察されました。雌6頭、雄7頭、若い雄2頭の計15頭の群れを追跡しました。著者らはマーキングの跡の調査と、100例の実際のマーキング行動を観察しました。
調査では1534属の植物を確認しましたが、最も頻繁にマーキングしたのはUncarinaでした。Uncarinaは調査地域の植物の6%を占めるに過ぎませんが、マーキングされた植物の65%を占めました。Albizia、Azadiractha、Catharanthus、Celtis、Fernandoa、Moringaも、よりマーキングされました。逆に、Alluaudia、Commiphora、Euphorbiaは個体数に比較してマーキングされませんでした。

選ばれる理由・選ばれない理由
実際のマーキング行動の観察では、その65%が分岐した植物を選んでいました。Uncarinaの85%は二股に分岐しているため、ワオキツネザルに好まれているのかも知れません。
AlluaudiaやCommiphoraはトゲがあるため、避けているのかも知れません。また、ユーフォルビアはトゲがない滑らかな外見上はマーキングに適した植物でも、ワオキツネザルは避けました。ユーフォルビアの刺激のある乳液を嫌がっているのかも知れません。
興味深いことにUncarinaはの樹液は独特の臭気があります。Uncarinaの臭気がマーキングの効果に影響を与えている可能性もあります。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
乾季のワオキツネザルは、マーキングする植物に好みがあることが明らかになりました。また、著者らは、ワオキツネザルが片手で枝を掴んでバランスを取りながらマーキングする行動を観察しており、それが二股の植物が選ばれる理由かも知れないと述べています。しかし、なぜUncarinaなのかは、化学的な研究と、ワオキツネザルに対する行動試験をして、確かめる必要がありそうです。



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