(この記事は、FIJの無料メールマガジン「ファクトチェック通信」6月1日号を再編集したものです。メールマガジンのご登録はこちらから)
▼InFact、JFCが相次ぎIFCN加盟承認
InFactが5月18日、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)への加盟を認められ、加盟団体リストに掲載されました。日本の団体としては初めてです。また、日本ファクトチェックセンター(JFC)も5月末に加盟が認められました。
InFactの発表によると、5月25日にIFCNのオンライン会議に招待され、加盟承認を伝えられたとのことです。立岩陽一郎編集長は「InFactとしては日本を含め世界のファクトチェッカーと協力して事実の確認に努めて行きたい」とコメントしています。
InFactは、前身の「ニュースのタネ」時代からファクトチェック活動を開始。2017年の衆議院議員総選挙以来、FIJが主宰したファクトチェックプロジェクトにはすべて参加し、これまでに約170本のファクトチェック記事を発表しています。
一方、昨年10月から正式に発足したばかりのJFCも、サイトでIFCN加盟を発表し、「IFCN加盟をきっかけに、国境を超えて拡散する誤情報/偽情報に対抗する国際的な連携を強化していく予定です」とコメントしています。
IFCNには6月1日現在、134団体が加盟(更新審査中の14団体を含む)。加盟団体や関係事業者・団体が一同に会する第10回世界ファクトチェック会議(Global Fact 10)が6月28日からソウルで開催されます(オンライン視聴も可)。
▼IFCNがファクトチェック講座を公開
このほど、IFCNがファクトチェック入門コースのオンライン講座を公開しました。Meta社の支援を受けて日本語版も作成されており、ファクトチェックの基本的な概念や手法について無料で学べるようになっています(アカウント登録が必要)。
また、日本ファクトチェックセンター(古田大輔編集長)も、ファクトチェック講座シリーズとして9本の記事を公開しました。こちらは主に画像や動画を検証するときに便利なツールの使い方を中心に解説しています。
これらファクトチェック講座コンテンツは、ファクトチェック・ナビでまとめて紹介しています。
▼NHK地方局が異例のファクトチェック
NHKの津放送局が地元の伝統行事「上げ馬神事」をめぐる疑義言説の真偽についてのファクトチェックを行い、5月12日、ウェブ版で公開しました。
NHKはこれまでも誤情報に関するニュースを配信してきましたが、自ら情報の真偽を調べ「ファクトチェック」という形で報道するのは異例のことです。この記事はネット上でも話題となりました。
▼ファクトチェック記事を避ける傾向についての研究成果を発表
ファクトチェックに対するユーザーの行動の特徴を解明するため、名古屋工業大学大学院の田中優子准教授、東北大学大学院の乾健太郎教授(FIJ理事)らの研究チームが、独自に考案した指標を用いてクリック行動を分析する実験を行い、研究論文を発表しました。それによると、誤情報の記事を「正確」だと答えた人に、ファクトチェックの記事へのリンクを示したところ、43%がクリックを避ける傾向を示したとのことです。
この研究はNHKも報道し、田中准教授の「『これから読む記事はあなたの間違いをただすものだ』と伝えると読まない人たちがいる。どんな理由によるか研究を進めることで、より多くの人に届く発信の方法を見いだすことにつながると思う」とのコメントを伝えています。(参考=産経新聞の解説記事)
▼ファクトチェック認知度は低迷 GLOCOMなどが調査結果を発表
日本国内でファクトチェックを知っている人は30%で、2020年9月実施の前回調査からほぼ変わっていないことが、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)が5月19日発表した報告書「偽・誤情報、陰謀論の実態と求められる対策」で明らかとなりました。
報告書は「この数年、ファクトチェック記事の数は急増したが、学ぶ意欲の高い一部の人が接しているだけで、すそ野が広がっていない可能性がある」と指摘しています。認知度向上に向けては、マスメディアが積極的にファクトチェック記事を取り上げて報道することやプラットフォーム事業者が優先的に配信することが望まれると提言しています。
また、アメリカ、イギリス、フランス、韓国を含む意識調査で、ファクトチェックを見て誤情報だと認識した人や、真偽を確かめるためにファクトチェックの結果を確認した人の割合は、調査した5カ国で日本が最も低く、10%に満たなかったことが、総務省が5月25日に公表した調査結果で明らかとなりました(プラットフォームサービスに関する研究会の資料4「国内外における偽・誤情報に関する意識調査」)。
この調査では、50%超が「SNSやポータルサイトでファクトチェックの結果をもっと表示させるべき」と回答しており、ファクトチェックの周知に課題があることが浮き彫りになっています。
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