2.5Dの地下世界を駆けろ!隠れた快作アクション『Fallback』
人間VSシンギュラリティ!埋もれているのが不思議なくらいに出来がいい1本
近未来。人類は地下で暮らしていた。度重なる激しい自然開発は環境災害を引き起こし、地表は破壊し尽くされてしまったのだ。人類は、地下都市「エデン」にて、知性を与えられたロボットたちを労働力としながら、虫のように静かに暮らしていた。そして数世紀。機械たちは反乱を起こした。人間たちは片っ端からロボットたちによって投獄されていった……。
『Fallback』は近未来のポストアポカリプス世界を舞台にした、2.5Dローグライクアクションである。プレイヤーは地下に追放された人間たちを操り、地下の迷宮のような施設や機械兵士たちを剣やジェットパックを活用しながら攻略していき、地下の奪還を、そして地上の奪還を目指す。
開発はフランスのEndroad。元Ubisoft(「アサシンクリード」シリーズ)やAmplitude Studios(『Endless Legend』など)の開発者ら5人からなる小規模スタジオである。
本作は、ひとことで言ってしまえば『Dead Cells』タイプのゲームである。「ローグライク」「ローグライト」「ローグヴァニア」などの言葉を出せば、だいたい説明は足りてしまう感じのやつである。
プレイヤーはまず操作キャラとなる「ボランティア」を選ぶ。彼らはそれぞれにジョブが設定されており、それによって体力や攻撃力、攻撃方法などが変わる。そして選んだボランティアと共に地下都市エデンの攻略を開始する。
マップは自動生成だ。半ランダムのマップを探索し、敵の機械兵士たちを倒し、捕らえられた人間たちを救出し、ボス部屋を目指し、ボスを倒して次の階層へと進む。道中で力尽きた場合、キャラクターはロスト。プレイヤーはまた新たなボランティアを選び、次のランへ。
地上奪還のカギとなるのは、道中に配置されている端末にて購入できる「モジュール」。これはボランティアにパッシブスキルを付与する装備品である。「攻撃クリティカル率増加」「体力最大値アップ」などのちょっとしたものから、ピーキーで強力なものまで、様々なものが存在する。
実はこのゲーム、この手のジャンルでは珍しく、単純な体力回復アイテムや武器防具の変化、敵を倒してのレベルアップなどの要素は存在しない。よってプレイヤーは、このモジュールの組み合わせで自己を補助、強化していかねばならない。
そしてもうひとつ。モジュールによるキャラクターごとの強化とは別に、全てのラン、全てのキャラクターに適用される、永続的な強化が存在する。道中で人間を救出してもらえるポイントを消費することで開放するアップグレードである。
こいつで得られる強化は「体力二倍」など、モジュールよりも強力でストレートなものが多い。こちらを開放していくことで、攻略をグッと楽にすることができる。
なかなかイイ感じなのが、ゲームプレイの中心となるアクション・コンバット部分。
本作の戦闘はかなりシンプル。ローリングで回避して剣戟を叩き込む。基本的にそのバリエーションの積み重ねのゲームなのだが、操作感や斬撃感がかなりいいので、飽きやストレスを感じることは殆どない。ローリング、二段ジャンプ、空中ダッシュ……。ボランティアたちの機動性がかなり高めに設定されていることも大きいだろう。跳ねて転がって切って走って、という基本の動作が楽しければゲーム全体も楽しくなる、というのを実感させてくれるゲームである。
戦闘のいちばん楽しい瞬間は、モジュールと永続アップグレードをうまく組み合わせて「敵ロボット即ブチ壊すマン」的なビルドを完成させたときである。閃く剣光!ロボット兵は即死亡!爆発!いろいろなモジュール効果を発動させながらザコ敵を瞬殺していく感じは『Risk of Rain』なんかを想起させるかもしれない。
ジャンルの基本をしっかりと抑えた質実剛健な作品である『Fallback』だが、本作にしかないユニークで尖った要素も持ち合わせている。それが2.5Dのマップである。
gif画像などを見てもらえばわかると思うが、本作のマップはかなり独特だ。プレイヤーが動くのは二次元方向――縦軸と横軸方向だけなのだが、マップとカメラのほうがグルグルとダイナミックに回転することで、擬似3D移動を実現させているのである。「エッシャー風」な画面を売りにしたゲームはいくつか見たことがあるが、本作のような純アクションゲームでこういう空間表現をしているのは見たことがない。
本作の素晴らしいのはこの仕様がしっかりとゲームプレイの楽しさに繋がっている点である。この2.5Dのマップには、探索する楽しさ、動き回る楽しさが詰まっている。はっきりとした色分けがされているので、道に迷っただとかわかりにくいだとかもない。奥行きと回転を活かしたトラップやギミックなども楽しい。正しく2.5Dな本作のゲームプレイはアクションゲームのカメラ表現の可能性を感じさせてくれるものである。
ゲーム全体のビジュアルのデザインもカッコいい。地下に生きる人間の不健康な感じ、地下という環境の閉鎖的な感じ、地下施設の工業的で無機質な感じ。本作のマップはそれらの雰囲気がうまく組み合わさっているんではないだろうか。回転カメラのための奥行きのあるマップというのも大きい。繰り返しの探索を重ねても飽きがきにくいマップ、というのは大事だよなぁ、なんて思ったりした。
『Fallback』は完璧なゲームではない。ジャンル外の人間を引きずり込むほどの何かがあるわけでもないし、問答無用で人の時間を奪い去るような中毒性があるわけでもない。しかしジャンルのファンに向けた名作フォロワーとしては花マルをあげたい出来である。
そんなわけでスゲーおすすめなのである。『Fallback』。なんか出来の良いゲームがやりたいあなた、変わった要素のあるアクションがやりたいあなた。『Dead Cells』みたいなのやりたいあなた。どうだろうか。値段も安い!