賃貸オーナーの約4割が「高齢者の入居お断り」と回答 調査で判明した高齢者の住居問題の実態
高齢者の単身世帯増加や持ち家率の低下などにより、物件が借りられない「住宅難民」になる高齢者が急増すると見込まれている。しかし、老後に家を借りることは本当に難しいのだろうか。高齢者向け賃貸に関する実態調査で分かった、オーナー側の本音と今後の展望を解説する。
高齢者は物件が借りづらい?賃貸オーナーの約4割が受け入れていないと回答
世界で最も高齢化率が高い日本。内閣府が発表した令和5年版高齢社会白書によると、2024年10月1日時点で65才以上の人口は3624万人となり、総人口に占める割合は29%となった。一人暮らしをしている高齢者も増え、孤独死による事故物件化の懸念などから高齢者がアパートやマンションを借りにくい状況が続いている。
65才以上の部屋探しを専門に支援しているR65(以下、R65不動産)の調査によると、高齢者の入居を受け入れていない賃貸オーナーは41.8%にのぼった。また、どちらかといえば受け入れている場合が39%いた一方で、積極的に受け入れているケースは19%にとどまった。
年金以外に仕事をして収入があったり、たとえ保証人がいる高齢者であっても、年齢が障壁となって賃貸物件を見つけるには時間がかかると考えた方が良いだろう。巡り合わせが悪ければ、いくら時間をかけても物件が見つからない可能性すらある。
では、物件を管理する不動産会社は高齢者の入居に対してどう考えているのだろうか。R65不動産によれば、4社に1社(25.7%)が「高齢者が入居できる賃貸物件は全くない」と回答したという。賃貸オーナーだけでなく、不動産会社側も受け入れに否定的な様子がうかがえる。
賃貸住宅法一部改正へ。体調管理や食事、洗濯などをサポートするサービスが充実
高齢者に厳しい状況ではあるが、光明もある。
2024年3月には国土交通省による「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定された。
これにより、賃貸経営を行うオーナーが高齢者に対して賃貸物件を提供しやすくしたり、物件へ円滑に入居できる環境の整備、見守り機能が付いた「居住サポート住宅」の創設などの対策が盛り込まれており、一定の効果が期待できるという。
最近ではICT(情報通信技術)の発展で、離れた場所に住む家族が高齢の親の様子をカメラなどで見守ることも可能になった。
また、訪問介護員(ホームヘルパー)や看護師が高齢者の自宅を定期的に訪問し、体調を確認したり、食事や洗濯などのサポートのほか、生活の質を向上させるアドバイスをするサービスも充実している。
万が一高齢者が孤独死した場合でも、現場の清掃や片付けを速やかに行う特殊清掃サービスがあったり、残置物処理や賃貸借契約の解除を円滑に行う契約や物件が汚損した際の家賃損失や原状回復などに対する保険なども存在する。