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人間はこれまで考えられていたより高温多湿に弱い

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 気候変動による地球温暖化が着実に進行している現在、人間が耐えられる気温の限界について関心が高まっている。

 これまで、人間が耐えられる気温の上限は、「湿球温度」で35度(湿度100%で35度、50%で46度)とされてきた。

 ところが、ペンシルベニア州立大学の研究グループが新たに行った研究によると、これまで考えられていたより、人間は暑さや湿度に弱いことがわかったようだ。

人間は何度まで耐えられるのか?

 従来、人間が耐えられる気温の上限は、「湿球温度」で35度(湿度100%で35度、50%で46度)とされてきた。

 この温度になると、人体は適切な体温調節ができなくなり、長時間その状態でいれば心臓発作などが起きる恐れが出てくる。

 湿球温度とは、温度を感じる部分を湿った布でおおった温度計による計測値のことだ。それは空気が保持できる最大の水蒸気を含んだときの温度を表しているため、皮膚から汗が蒸発しない温度であるとも言える。

 そして若者を対象にした新たな研究では、人間が耐えられる実際の気温は従来の想定よりも4~7度低いことが確かめられている。体力のない高齢者ならさらに低い温度にしか耐えられないだろうという。

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photo by iStock

温暖化で猛暑が進む世界に備えるために

 ペンシルベニア州立大学のW・ラリー・ケニー教授は、今後温暖化が進めばますます頻発するだろう猛暑に備える上で、人間が耐えられる温度(湿度)を知ることは役に立つと話す。

人間が耐えられる温度と湿度の上限がわかれば、熱波にうまく備えられるようになります。これは弱い立場にある人にとっては特に大切なことです。

つまり病人ほど優先的なケアが必要だということです。熱波到来時には外出に関する警告を発し、さまざまな温度湿度をカバーするガイダンスなどを提供する必要もあるでしょう

 同じ気温でも、湿度が低く乾燥していれば、汗が蒸発するので体温調節できる。そうした環境で人体が耐えられる上限は、湿度よりも、むしろ温度や発汗に大きく左右される。

 ケニー教授によると、これまで人体が適応できる上限温度35度(湿度100%)は、あくまで理論とモデルから導き出されたもので、実測値ではないという。

 そこで「PSU H.E.A.T」というプロジェクトの一環として、理論値を実際に確かめてみようと思ったのだという。

 「熱波の記録からは、それによって亡くなるのはより高い年齢層の人たちであることがわかります」とケニー教授は説明する。

 「今、気候は変わり続けており、今後ますます深刻な熱波が増えることでしょう。また社会も変わっており、高齢者がますます増えています。だからこそ、こうした変化を念頭においた研究が大切なのです」

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photo by Pixabay

健康な若者でも湿度が高い地域では31度までが限界

 このように高齢者について危惧するケニー教授だが、今回の研究では手始めに24名の若者(18~24歳)の限界が調査されている。

 「健康な若者は熱に強く、耐えられる気温も高いでしょう。その数値は最良な状況における基準になります。より高い年齢層や病人などが耐えられる上限は、それより低くなるはずです」

 実験開始にあたり、被験者は温度計入りの小さなカプセルを飲み込んでいる。これは実験中に体の中心温度を測定し続けるためのものだ。

 それから実験室に入り、エアロバイクやトレッドミルなどで軽く体を動かす。そして、この間、徐々に温度や湿度が上昇し、体の中心温度を維持できなくるポイントが探られた。

 この測定データの分析からは、低湿度高温下なら湿球温度25~28度、温暖湿潤環境下なら30~31度が耐えられる暑さの限界であることが判明。

 これ以上の温度になると、被験者が体の中心温度を適切に維持できなくなった。

この結果からは、湿度が高い地域では、たとえ健康な若者であっても、31度以上になれば懸念しなければならないことがわかります

今後も研究を続け、より高い年齢層についても調べるつもりです。おそらく若者よりも低いでしょう

 と、ケニー教授は話す。

 なお、耐えられる気温は湿度によって左右されるので、地球上あらゆる地域に通用するたった1つの限界値はないだろうとのことだ。

 湿度が高い場所では、例え気温が30度以下であっても、熱中症や脱水症状に気を付けた方がよさそうだ。

 この研究は、『Journal of Applied Physiology(1)(2)(3)』に掲載された。

References:Humans can’t endure temperatures and humidities as high as previously thought | Penn State University / written by hiroching / edited by parumo

追記(2022/03/12)本文の一部を訂正して再送します。

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この記事へのコメント、55件

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    1. >>2
      ていうか日本よりもうちょい暑くてもイケるんじゃねって思われてたんだよ
      日本でもぶっちゃけギリなんと違うかって感じだし、今更だよな

      1. ※13
        熊谷市在住だけれど、夏の間は夜明け前の犬の散歩を済ませたら、昼間は一歩も外には出ないよ。夕方の散歩はトイレだけ。大型犬の散歩は暑すぎて無理。
        人間よりも高温多湿に弱いからね。

    2. >>2
      なんなら東南アジアだのインドだの日本よりキツい高温多湿の国だってある訳だしな
      …ただそれらの国の中で先進国やってんの日本くらい?
      先進国として成長するにはやっぱ過酷な環境なのかなぁ高温多湿は

      1. ※22
        シンガポールぐらい限られた範囲を独立国化してれば、
        冷房ガンガン入れて富裕層で成り立っていられはするが…。
        環境負荷は半端ないんだろうな。

    1. ※4
      まあ夏の気温さんの方が30℃程度では許してくれないわけだが。

    2. >>4
      江戸時代はちょっとした氷河期だったので夏場30℃を例年越えるようになったのは明治末期から
      バシバシ人が亡くなった記録がある

  1. 高温多湿の日本の夏は地獄という事だね。とかく、日本の湿度に外国人驚くもんな…。コロナでここ2年間はリモートワークだけど、もう夏に通勤なんて考えられない。コロナが終息しても夏は基本リモートにしてほしい。

  2. 知ってた
    ウチのじーちゃん熱中症でお仕舞いになったし、高温多湿は絶対にナメちゃダメ

  3. 🌎「人間はホンマに文句が多いな、暑けりゃ暑い、寒けりゃ寒い、腹減った、あれもこれも欲しい」

  4. 暑さは自分ではどうにもならないのが辛いところ
    寒さはちょっと運動するだけで気にならなくなるのに

  5. 日本人はその過酷な環境下でどうにか生きる術を色々構築して来た訳だな
    塩辛い食べ物が多いのはその一端だ

  6. 高温多湿な日本の夏が辛いって言う人は多いしな。明治時代に日本へやって来た西洋人なんか暑さからの逃げ場を探して軽井沢を開拓した位やし

  7. 見た目の話題になっちゃうが、温暖化したらますます高温多湿になる危険があるわけで、そうなるとシベリア渡ったえら張り細目、ちっちゃい鼻の顔って不利になるんじゃないの?熱が逃げにくい構造だから

    1. >>20
      最近じゃ暑さでバタバタ倒れて死人が出続けた結果、そんな風潮なくなりつつあると思う

  8. 知ってた。
    真夏のジョギングは夜明け前まで
    ミニスカート1枚だけで走るオッサン
    夜道なので短パンに見える(らしい)

  9. 限界は知らないけど確実に疲れるのはわかってるから夏場4ヶ月くらいはエアコンつけっぱなしだわ

  10. エアコンの28度設定がクソすぎる。
    暑過ぎてたまらん。23度くらいでいいわ。

    1. ※28
      28度設定で多人数が集まる部屋だと、実際の室温は
      30度超えてたりもするから(しかも人いきれで蒸れて高湿)、
      それを強いるぐらいなら、むしろエアコン無しで窓開け放って
      扇風機 数台を最強で回した方がマシとも感じる。

      でも、今時の建物だと、それはそれで
      避難口以外は嵌め殺しで開かないガラスだったり、
      ほとんどが壁な中で申し訳程度の小さな窓だったりする…。

    2. ※28
      勘違いしてますな。環境省のクールビズのサイトに『「クールビズ」で呼び掛けている適正な室温「28℃(目安)」は冷房の設定温度のことではありません』って書いてあるぞ。

  11. 真夏にも行動、近畿在住アウトドア好き
    高温多湿、直射日光にあたる場所で作業し過去に軽い熱中症に何度も経験
    40℃近くまで気温上昇する事もありました
    ので高温多湿に耐えうる身体になる為に
    止むを得ず日々訓練?していました
    (安全に遊ぶ為にですが)
    そこで予防策として編み出した技が
    1.睡眠を多く取っておく
    2.朝から味を濃くした牛丼を多い目に
    喰らうです!笑(水分補給は必須ですが)
    私はこれだけで限界値が上がりました
    熱中症でお困り方は今年の夏に試してみて下さい、ご参考までにどうぞ~

    1. >>32
      しっかり寝てしっかり食べるは熱中症対策の基本だもんね
      熱中症対策というか健康管理としても

  12. 最後のケニー教授のコメントの直前、「高温乾燥下なら30~31度」とありますが誤訳です。
    原文では
    from 30°C to 31°C in warm-humid environments
    となっています。
    「温暖湿潤環境下なら30~31度」が正しいです。

  13. 夏に働くの大変って証明されたんだから、夏はお給料2倍にして~
    めちゃめちゃビールのんでスイカ食べて消費に貢献するから~

    1. >>44
      とは言え日本でも夏場は熱中症で連日人が他バタバタ倒れてるじゃないか。
      若者でさえ。

  14. 海外からの観光客あるある
    気温の数字だけ見て日本の夏をナメてかかり、湿度とのダブルパンチでダウン。

    これ以上温暖化が進むなら、日本の生活様式も「夏季の日中はあくせく動かない。だらだら過ごす」「なんなら、昼寝タイムを本格導入する」などの南国化へ抜本的改革が必要になるかもね。

  15. 熱中症の死亡例で室温26℃で熱中症発症して
    死亡した方がいたからな。90代だったが。

  16. 移住したいねん
    東北とかの人は冬が大変なんだろうけど関西は冬以外灼熱地獄や

    1. >>51
      いやだなあ、最近の東北なんて「冬は寒いまま、夏は年々暑くなる」ですよ。
      夏場の山形の気温見てびっくりしたよ。
      北海道も近年の夏は酷いらしい。

  17. なるほど、どうりで夏コミで熱さにやられて倒れる人が続出するわけだ
    つまり夏コミのあの熱さに耐えてきた猛者達は耐性を得てたわけか

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