広響プレミアムコンサートin倉敷 広上淳一 指揮 ヴァイオリン:神尾真由子 [コンサート感想]
岩代太郎/東風慈音ノ章(ローム・ミュージック・ファンデーション設立30周年委嘱作品)
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調
ムソルグスキー(ラヴェル編)/組曲「展覧会の絵」
指揮:広上淳一
ヴァイオリン独奏:神尾真由子
コンサートマスター:扇谷泰朋
2024年5月26日 倉敷市民会館
・新進若手音楽家へ莫大な資金援助を継続して行っているローム・ミュージック・ファンデーション(RMF)の30周年を記念したシリーズの一つとして企画されたコンサート。ロームはパワー半導体世界シェア9位を誇る。ロームの100%子会社のローム・ワコー(旧ワコー電機)が岡山県内(笠岡)にある関係で、この備中地域で開催された模様。
・5月25,26日の岡山県下はオケ・コン特異日で、25日には岡山フィル定期(岡山シンフォニーH)と角野隼斗&佐渡裕・新日本フィル(倉敷市民会館)がもろ被り。翌日26日は岡山フィル津山定期(津山文化センター)と広上淳一指揮・広響プレミアムコンサート(倉敷市民会館)がもろ被りだった。岡山フィルの両公演は少なからず影響を受けていた。普段はプロのオーケストラのコンサートなんて月に1回あるかないかの頻度なのに。もう一週間ズレてくれてれば、と思う。
・で、私は当然岡山フィル津山定期に行くのかと思いきや、広上&広響の方を選択してしまった。何せこの日のソリストは神尾真由子さん、彼女もRMFファミリーの一人だが、津山が気になりつつもこれを聞き逃す選択は無かった。
・会場の入りは6割程度。日曜日としてはやや寂しい。前日の角野隼斗&佐渡裕・新日本フィルは完売満席だったようだから、このコンサートも4公演集中の影響を受けたようだ。それにしても他の要素もあるとは言え、神尾真由子より角野隼斗の方が、今現在は集客力があるというのは・・・ちょっと驚き。
・配置は岩代太郎、展覧会の絵は1stVn12→2ndVn10→Vc8→Va8、上手奥にCb6の12型2管編成。協奏曲は1stVn12→2ndVn10→Vc8→Va6、上手奥にCb4で12型だがチェロバスは2減。
岩代太郎/東風慈音ノ章(ローム・ミュージック・ファンデーション設立30周年委嘱作品)
ローム・ミュージック・ファンデーション設立30周年委嘱作品。プログラムには岩代さん自身による解説が書かれており、「難解かつコンテンポラリーなアプローチてはなく万人にとって親しみやすい曲調とする」との解説のとおり難解さは皆無。「義経」「葵〜徳川三代」「白線流し」で親しんだ岩代サウンドを感じつつ、重厚さや未来への希望を感じさせる名作。
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調
・冒頭から心を鷲掴みにされる。耳にタコができるほど聴き込んだド名曲だけに少々の演奏では驚かないが、これほどまでに自分の心を撃った事にまず自分でも驚いた。ストラディバリウスってこんな音が鳴るのか!という特別な体験が出来た。名器から万華鏡の様に表現を引き出し、ダイナミクスは極めて広く、弱音部は極限迄小さく絞る。それはホールの大きさなど関係ない、ピアニッシモはピアニッシモなのよ、と言わんばかり。強音は舞台に君臨する女王の様に濃厚で強い音で聴衆を圧倒。
・第2楽章で涙腺崩壊。これ以上のメンコンはそうそうは聴けないかも、そう思いながら一音一音を噛み締めながら聴いた、彼女が10代の頃から実演に接し、毎回「前回の体験」を凌駕していく。こんなヴァイオリニストを他に知らない。どこまで高みに登っていくのか?次の機会を楽しみにしたい。
・実は、以前は神尾さんのヴァイオリンの音そのものは自分の好みとは外れていた。シャープであまりにも切れ味鋭い音は凡人を寄せ付けないというか、温かみが薄い印象を持っていた。圧倒的なテクニックと表現力の前にはひれ伏すしかなく、力付くで最後は納得させられる。そんな感じだった。
・ところが今回の演奏はとてもまろやかで温かみがあって、すぅぅっと心の中に入ってくる感覚があった。初めて彼女の奥底の温かい人間性に触れたような感動があった。
・神尾さんはオーケストラとの協奏曲の時はアンコールを滅多にやらないと思うが、それは中途半端な事はやらないというポリシーだと理解している。その貴重な入魂のアンコールに痺れた。バッハの無伴奏パルティータ第3番のプレリュード。
ムソルグスキー(ラヴェル編)/組曲「展覧会の絵」
・コンサート・ソムリエの朝岡聡さんと、広響生演奏による楽曲解説が面白く、実演でも結構聴いている筈のこの曲への理解が深まった。ラヴェルの見事な管絃楽技法に耳を奪われがちなこの曲てはあるが、帝政ロシアの鬱屈した社会に焦点を充てた解説の端々から、造詣の深さが感じられた。朝岡さんはニュースステーションのスポーツコーナーで、久米宏さんからの意地悪なツッコミを軽くいなす(笑)軽妙なアナウンスが印象に残っているが、実はクラシックが好きだったというのは意外だった。
・プロムナードからして金井さんのトランペットが素晴らしい。広上さんは髭を蓄えられて、それが威厳というより可愛らしさに拍車をかけて、まるで七人の小人に居そう(失礼極まりない!)。「殻をつけた雛の踊り」での、コミカルな指揮(というか、踊り)に木管の皆さん、よく吹き出さないよなあ(笑)と
・広上さんのタクトは、外連味あふれる緩急自在のテンポ。古城などでは、指揮・・というより身悶えするようなボディランゲージで情感たっぷりに歌わせる。
・ビドロのソロは音の感じはユーフォニウムではなくチューバのように思ったが、フィナーレで使っていたチューバとは違うもの。
・大好きな「リモージュの市場」や「テュイルリー」での洒脱かつ柔軟な表現の一方で「バーバ・ヤーガの小屋」「キーウの大門」の大迫力たるや・・・。純コンサートホールではない倉敷市民会館ゆえ、倍音が乱反射して(2階席では)音が割れていたが、そんなものもお構い無しに迫力で押し切った。
・アンコールは能登半島地震の犠牲者追悼として演奏されたグリーグ/過ぎにし春。すすり泣く声が客席から響き、終演後広上さん、朝岡さん、お二人が持つ透明の募金箱にみるみるお札が入っていく。朝岡さんが「硬貨でも大丈夫です〜」と叫ぶほど。流石は気風の良い倉敷人。
・プロムナードからして金井さんのトランペットが素晴らしい。広上さんは髭を蓄えられて、それが威厳というより可愛らしさに拍車をかけて、まるで七人の小人に居そう(失礼極まりない!)。「殻をつけた雛の踊り」での、コミカルな指揮(というか、踊り)に木管の皆さん、よく吹き出さないよなあ(笑)と
・広上さんのタクトは、外連味あふれる緩急自在のテンポ。古城などでは、指揮・・というより身悶えするようなボディランゲージで情感たっぷりに歌わせる。
・ビドロのソロは音の感じはユーフォニウムではなくチューバのように思ったが、フィナーレで使っていたチューバとは違うもの。
・大好きな「リモージュの市場」や「テュイルリー」での洒脱かつ柔軟な表現の一方で「バーバ・ヤーガの小屋」「キーウの大門」の大迫力たるや・・・。純コンサートホールではない倉敷市民会館ゆえ、倍音が乱反射して(2階席では)音が割れていたが、そんなものもお構い無しに迫力で押し切った。
・アンコールは能登半島地震の犠牲者追悼として演奏されたグリーグ/過ぎにし春。すすり泣く声が客席から響き、終演後広上さん、朝岡さん、お二人が持つ透明の募金箱にみるみるお札が入っていく。朝岡さんが「硬貨でも大丈夫です〜」と叫ぶほど。流石は気風の良い倉敷人。
・それに加えて先ほどまで熱演を繰り広げた広響団員さんも降りて来て観客と交流していた。広響、ホントに雰囲気のいいオケで、終演後は舞台上で和気藹々と互いの労を労い、着替えもせぬままロビーまで来て見送ってくれる。また福山定期で皆さんの演奏を聴きにに行くぞ!という気にさせてくれる。
・最後に、この2日間で岡山フィルと広響という2つのオケを聴く機会に恵まれ、自分の中で「おっ」と思う発見があったので、記事を改めて書きたいと思う。
広上淳一....マレーシア・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督に...
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Orchestras
Norman Lebrecht
November 04, 2024
by サンフランシスコ人 (2024-11-07 03:01)