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2024年高尾山昆虫観察記5 68.2mm巨大ミヤマと小さなネブトクワガタ。高い場所にいるミヤマたち。

8月上旬の高尾山へGO!

ワクワク感が高まる瞬間。毎度違う楽しみがある高尾。

つい先日高尾山を訪れたばかりですが、7月中の天気の悪さもあり、昆虫欲が満たされていないので数日後に再度高尾の夜に訪れました。

前日は記録的な大雨があり、樹液流出が盛んになるであろうという仮説と、昨年得られていた8月には樹液を探すべきという個人的な視点があるためです。

加えて当日は天気もよく、月齢も良いと判断したため早急の再訪となりました。

思わぬ出会いが待ち受けているとは知らず。

8月上旬の高尾事情

この日の天気は午後から曇りでした。

中腹は前回よりさらに涼しい。外灯周りはやや静か。

高尾麓の時点で動かなければちょうどいい気温で、ケーブルカーで中腹へ登ってみると湿度も低く過ごしやすい気候でしたね。

先日大雨が降ったために樹液流出が盛んになっているだろうと予想していました。

また、昨年の傾向から7月下旬以降は樹液のほうがクワガタを観察しやすかったので、樹液偏重型の観察にすることにしていました。
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(昨年のこの記事です)
今回は昨年の自身の検証を再現することを目的に、ヨコヤマやアカエゾゼミなどのいい虫などを狙っていきます。

早速ネブトクワガタに遭遇

今季調子の良いエリアを訪れて樹液を観察していきます。

この場所でも新たな樹液の流出が確認され、そしてやはり樹液自体もよく出ていました。

日没直後くらいの頃合いなのでまだクワガタは多くはありませんが、コクワガタなどはいつもどおり発酵した樹液に来ています。

発酵樹液は昨年に比べかなり多い。空梅雨の去年と大雨直後の違いか。

早速スジクワガタのペアを発見。撮影だけしてスルーです。

周辺エリアのイヌブナの地際をルッキングしてヨコヤマヒゲナガカミキリを探していきます。

ウスバカミキリはやはりよく目につきますね。

地際にウスバカミキリ。ウスバ3~40程度にヨコヤマが1と教えてもらったので、ウスバ貯金と呼んでいる。

珍しくイヌブナの樹液にクワガタがついているのを発見しました。

サイズ感的にスジクワの小型サイズ程度の虫なのですが、翅に入る縦スジがかなり深いです。これはまさか!

ネブトの♂!これでネブトの累計は4匹に。

ネブトクワガタの♂です。

前回ネブトの♀の死骸を発見しましたが、立て続けにネブトに遭遇してしまいました。

ネブトクワガタは大きいものでも3cm程度のクワガタなのですが、針葉樹のモミを利用するクワガタであり、高尾のクワガタの中でもダントツで珍しいクワガタです。

今回の個体は小歯型と思われますが、ネブト特有の顎の形は楽しめますね。

記事化していませんが、昨年ネブトの大歯を取っていたりします。

早々に高尾の良い虫に遭遇してしまいもうこれだけでホクホクです。

外灯のミヤマ

外灯エリアではミヤマクワガタやアカエゾゼミ、ヨコヤマヒゲナガカミキリなどを探していきます。

高尾の外灯エリア(昨年のライトアップシーズン)

21:15分までの最終ケーブルカーまでは親子層も見られ、すべての親子がミヤマクワガタを求めているようです。(私がお話したグループたちです。)

外灯なので巡り合わせ次第で出会えるのが良い点なのですが、やはり採集の基礎部分が抜け落ちているのでチャンスを逃している方が多いという印象を受けますね。

枝たたきで落とした個体。長竿網ならではの取り方。

外灯周りの木にてミヤマクワガタの♂を早々に発見。ここ3回ほど♀しか見れていなかったので立派な顎を見て良いものだなぁと思いました。

今回私の装備は長竿網にolightのハンドライト1本とヘッドライト1本の組み合わせですが、ライト層との装備の差は大きいと感じます。

ヘッドライトのハンドフリー+サーチライト。広く見て怪しい木はしっかり見るコンビネーション!

クワガタは目視(まず見つけること)した後に捕まえる訳ですが、ライトの性能差で見つけられず、網の性能差で捕まえられていないケースも多々あるだろうなと感じました。

そして私自身今回はミヤマ採集における装備の性能差を痛感することとなりました。


今回の外灯ミヤマは♂1匹です。

外灯周りは最近の傾向通り1~2匹程度に落ち着く印象

移動しつつカブトムシやクワカミキリ、ウスバカミキリなどの昆虫は度々見つかりましたね。

自分の昨年記事の検証<樹液周り>

昨年7月下旬以降あまりにも外灯でミヤマを見つけられなくなってしまったので、実力差が出る樹液探しに切り替えて人のいない場所を発掘する王道の方法でミヤマに9匹遭遇できました。
(前述の記事です)
高尾ミヤマは今季少ないようですが、あれが偶然だったのか非常に気になっていました。

相模湖の花火を山頂から見つつ、下見していたポイントへ

ソロで人のいない場所に進んでいくのはかなり勇気が必要ですが、人と違うことをしなければ成果を挙げられないというのは昆虫採集における1つのルールです。

気合を入れてソロで下見していた樹液たちを見ていくことにします。

この辺は夜高尾計15回目程になるためか夜の山にも慣れてきており、多少の余裕がありました。

樹液周りをしているとクワガタを発見! やはり人気の少ない場所のほうが樹液性の昆虫たちは賑わっています。

残念ながらノコ。

ライトで照らしつつ拡大してみると?

ノコギリクワガタでした。今季はノコギリクワガタが増えているように感じます。

ナラ枯れの影響で樹液が出ている木は多く、今回見つけた良さげな木を巡回するだけでもそれなりに成果を挙げられそうです。

しばらく時間が立ちまたノコギリの木に戻ってくると?

樹液のミヤマを久々に捕獲。ワクワク感が高くて嬉しい。

ミヤマクワガタがついています!(夢中で写真がない)

しかしついている位置が高く、かつ葉が茂っています。ミヤマの付く木はこんなのばかりです。

こうした入り組んだ場所は人に見つかりにくく安心できるのでしょうね。

うまく木々をすり抜けて落とすと...?

ペアミヤマ。木の上にいると小さく見えて初心者は見逃しがち。

やはりミヤマでした。高尾でよく目にする小粒サイズです。ペアでついており、♀は地面に落下し♂は下草の低木の何処かについてしまいました。

音を頼りに当たりをつけて拾えてよかったです。

1ペア見つけられたので他にもいないかとみていくと、別角度にもミヤマがいました。

これも慎重に落として確保。先程の♂よりやや大きい個体でした。(単独写真がないので最後のまとめ写真に乗っています)

過去の高所ミヤマ。多分かなり大きかったと思われる。

過去の経験含めて樹液に来るミヤマは高いところについています。行きに見ていた木もより一層丁寧に上まで照らせるライトのサーチライトモードで観察していくと...?

ミヤマがいました。(やはり夢中で写真はない)

このミヤマなのですが、地上からはおおよそ8~9mでしょうか。網+身長では届きませんでした。

5mの所にいるミヤマクワガタ。この個体ではないがイメージとして。

どうしようかとこんな時のために夏のカブクワイベントなどで鍛えた蹴りを活用することにしました。

気合を入れてダメ元で蹴ってみると

ボトリ。

かなり大きな音がしました。

慣れてくると落下したときの音でサイズ感がわかるのはクワガタあるあるだと思いますが、明らかに大きい音をしていました。落ちた個体に目を向けると...!

明らかにでかい。一瞬で60後半は確信。

で、でかい!少なくともここ2年見た高尾の個体では一番大きいです!

耳状突起の膨らみ具合が過去のものと全く違います!

めちゃくちゃ大きい! ジャンボミヤマを求める人の気持がよく分かってしまう迫力!

今日捕まえたネブトと比べてもこの通り、かなりの威圧感があります。このときの目視では67mmを予想していました。

はるばる道を戻り、本日は実は前回の記事でお会いしたカミキリ屋さんと偶然再開していましたので、サイズを図ってもらうことにしました。

デジタルノギスで計測。

これにより68mm程度であることが分かり、自身で測定したところこのメモリよりもさらに大きい68.2mmと高尾にしてはかなり大きい個体を取ることができました。

いずれの個体も最初の移動中にはいなかったと思うのですが、40分後くらいに再度見た時に出現していましたね。

茂みで見落としていたのか高すぎて見逃していたのか、飛来してきたのかは不明です。

下山中にさらなるミヤマ

外灯エリアに合流した時点で最終ケーブルカー時刻は過ぎていました。

21:15を境目にガラリと人は少なくなる。この日はそれでも4グループほどがいた。

親子層や多くの方がこれで下山するため、外灯周りの樹液なども見ていきます。終電近くまで滞在する人の強みとなる時間帯です。

移動しつつ樹液の出ていた木を見て回ると、ミヤマがやはり高いところについているのを見つけました。

ミヤマを発見。手前の枝と幹の分岐が網を拒む

地上からはおよそ6m程度で慎重+網を使えば届きそうです。うまくつついて落とすと網から外れました。

そして、木の隙間にジャストで入ってしまいました。この位置が微妙に高く、取れません。

まさかのジャストフィット。これは取れない可能性が浮上。

網を取り外し長い網のお尻側を隙間に向けて降ることでなんとか足に引っ掛けて捕まえられました。

知恵比べの末なんとか捕獲。良さげなサイズ感。

54mm程の大歯型で高尾ミヤマでは立派な方です。

この日はミヤマを計6匹見つけられ、内訳は外灯が1樹液が5
♂5♀1でした。

滞在時間19時~22時過ぎまでで6匹はかなり上々。ネブトもgood。

最初のミヤマは途中遭遇した親子に上げたので写真では5匹しかいません。

この内68mmと54mmの個体だけ頂いて、残りは逃がしました。

ヨコヤマやエゾゼミなどには遭遇できませんでしたがミヤマ6にネブト1、加えて68.2mmに出会えましたからそれはもう楽しい時間となりました。

暗闇に一人で行くイメージ。山の闇は深く怖いだけでなく獣などのリスクが有る。

暗闇に行くのは怖いですが、他の人がいかない場所+他の人が使っていない装備が生み出す差はありますね。 この時期は樹液が強いという1説がまた自身の中で強まりました。

今回感じたこと

68.2mmのミヤマは運良く捕まえられましたが、本来は捕まえられなかった可能性が高いです。

落ちてこなければ取れなかった。その場合かなり悔しかったでしょう。

5mの長竿網を使って数年立ちますが、高尾のミヤマ採集では5mの網では全然足りないという場面がかなり多いです。

柄も枠も採集方法や採集対象に合わせてカスタマイズする必要はあるのかもしれない

前回の記録で人の手が届かない場所にはクワガタが潜伏していることが明らかとなりましたが、樹液の場合には目視できても高ければ手が打てません。

思えば樹液ミヤマは低いところで見たことはないかも

8m近い網があれば少なくとも目視の範囲は届くかなという印象がありますね。私自身より長い網を検討しようかと考えています。

実は第1回目の夜高尾でも同様の経験をしており、あのミヤマも9~10m程度の場所についていましたが体と顎の突起を見るに60後半~70mmサイズであったと思われます。

9m付近にいるノコギリクワガタ。この木の上にはクワガタが多数いた。

巡り合わせは時の運なのでこの傾向が当てはまらないケースも多いとは思いますが、最近樹液で見かけるミヤマは少なくとも5m程度の場所にいることが多いので親子層などでは取ることも難しいと考えられます。

また、ライトの性能差もかなりあります。

perun2と相棒marauder mini。perun2も今回で必需品入りした。

前述の通りクワガタは目視→捕まえるという段階を踏みますが、そもそも目視できない方が多いと考えられます。

それは外灯や樹液などの知識や経験ももちろんありますが、暗く範囲の狭いライトを使っているからという可能性も全然あります。

頭を向けた方向がある程度見られる強力なヘッドライトは強かった

今回はいつもと違い強力なヘッドライトperun2と最強ハンドライトのmarauder miniのダブルで挑みましたがmarauder miniのサーチラーチモードを利用してもヘッドライトで拡散光がカバーできたりハンズフリーで探索ができたり、樹液のシミやクワガタをはっきり確認できたりと単独でも有用なライトのコンビを使うことも成果につながったと思います。

夏に昆虫採集をするならばやはり網の性能とライトは良いものを使うべきだと感じましたね。
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次回執筆しました。

高尾山昆虫関連記事

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前回はこの記事です。主に外灯周りで見られるミヤマ以外の昆虫を紹介しています。
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去年建てた仮説に関する記事です。昨年も65mmの個体を捕まえていたりします。
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主に親子層向けですが、高尾で1匹も遭遇できなかったというご家族は多いようです。
高尾に限らずクワガタ採集における出会える人と出会えない人は何が違うのか?という点を考察しています。
カブクワイベントなどで家族と対話する経験が多いのでそれらをベースに記事化しています。参考になるかと思いますし課題は明確です。

夜高尾おすすめアイテム

ミヤマ目当てで100網は外灯に落ちている個体を拾うことしかできません。見逃す機会がかなり多いので可能ならば長竿網の利用をおすすめします。
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面倒な作り方などもまとめて紹介してありますので楽に作れますよ。perun2である必要はありませんが、ヘッドライトで長期間高光量が使えるライトは多くありません。
帽子などに取り付けないと重いのでずり落ちてきますが、採取においてはかなり有用です。

昆虫採集においても結論ライトですね。これを使うと他のライトは使う気になりません。
夜高尾の過去全ての記事にて利用しています。
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これらライトを含めたおすすめライトはこちらより。良いライトは本当に差がつきます。
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