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香川 マンUでの2年は空白か収穫か
香川真司がもがき苦しんでいる。夏の移籍ウインドーが閉じる直前の8月31日に、古巣ドルトムントへ2シーズンぶりに復帰。慣れ親しんだトップ下でコンスタントに先発出場を続けているが、ブンデスリーガ連覇の原動力となったときに放った存在感にはほど遠いプレーに終始している。

ハビエル・アギーレ監督体制に変わった日本代表でも、「4‐3‐3」のインサイドハーフとして3試合に先発。年内最後の国際親善試合となった18日のオーストラリア代表戦では、前半途中のシステム変更とともに「4‐2‐3‐1」のトップ下へスイッチしたが、ゴールを奪えずに終わっている。

試合後には唇をかみながら、反省の弁を残している。
「攻撃で起点を作れなかったし、その意味では物足りなかった」

 2シーズンにわたるドルトムントでの活躍が評価され、プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドへ完全移籍したのが2012年6月。さらに大きな期待と注目を集めたが、1シーズン目はけがによる長期離脱もあってなかなか波に乗れず、監督がアレックス・ファーガソンからデイビッド・モイーズへ代わった2シーズン目は開幕直後からベンチ外となる試合が続いた。
 後半戦は徐々に出場機会を得るようになったものの、ドルトムント時代にヨーロッパを驚かせたスピードと得点感覚は戻らない。最終的にはセレッソ大阪でプロデビューを果たした2007年以来、初めてノーゴールのままシーズンを終えている。

そして、ワールドカップ・ブラジル大会でオランダ代表を3位に導いた実績を手土産にマンチェスター・ユナイテッドの新監督に就任したルイス・ファン・ハール氏は、開幕前の親善試合で香川のボランチとしての適性を試した上で厳しい評価を下していた。

「彼は私の望みと哲学を満たさなかった」

 こうした流れもあって、契約を2シーズン残した上での古巣への復帰が加速した。それでもかつての輝きを取り戻せないのは、マンチェスター・ユナイテッドでの特に2シーズン目で試合勘が大きく失われたからなのか。だとすれば、世界的な名門チームの一員に名前を連ねた2年あまりは、香川にとって失敗であり、無意味な時間だったのか。
 こうした見方に元日本代表MFで現在は解説者を務める水沼貴史氏は異を唱え、「メンタル面で非常にタフになった」とマンチェスター・ユナイテッドでの日々で得た収穫を指摘する。
「セレッソ大阪から移籍したドルトムントで成功を収め、世界を代表するビッグクラブの一員となった。順風満帆のサッカー人生を送ってきたが、誰でも必ず一回は停滞する時期に直面する。それでも、サッカー人生においては無駄なシーズン、あるいは無駄な時間というものは存在しない。ユナイテッドのプレー環境やチームメイトは最高のレベルにあったし、日々のトレーニングの中でも得るものが多かったはずだ。それらをピッチの上で発揮するのが真のプロフェッショナル。シーズン開幕後に復帰したドルトムントで試合に出場するチャンスを得ているのは、香川が力を持っている証拠に他ならない」

 もがき苦しんでいるという現実は変わりないものの、ワールドカップ・ブラジル大会の前と後とでは、自身を悩ませている原因が違っていると香川も言う。 「精神的な問題ですね。いまはドルトムントで試合に出ているということが一番大きいですし、監督の信頼を得られていることは、選手としてすごく幸せなことだと思っている。もちろん、すっきりした状態でプレーできているとは言えない。自分身は結果を残していかなければいけない立場だし、チームでも代表でも、結果という点では他の選手と比べて明らかに劣っている。ギリギリの世界だけど、試合に出れば必ず得るものがあるし、試合で結果を残すことで前に進むことができると思っている」

 マンチェスター・ユナイテッド時代の特に後半は、指揮官との「戦い」だった。どうして自分が使われないのか。自分のプレーに何が足りないのか。答えの出ない自問自答を悶々と繰り返すうちにメンタルが袋小路に入り込み、プレーから躍動感までもが失われる悪循環が繰り返される。昨シーズンは日本代表に招集されるたびに、表情が沈んでいく香川の痛々しい姿があった。

 翻って、いま現在はどうなのか。結果が伴わない状況が続いても香川は下を向かずに、務めて自分に足りない部分を見出そうとしている。 「代表とドルトムントのサッカーは違うけど、それでも自分はゴール前へ入っていってゴールを決める選手だと思っているし、フィニッシュのところで絡んでいく選手だと思っているから、そうした良さをもっと結果で証明していきたい。できるかどうかは本当に自分次第だし、そういった作業を毎試合、毎日の練習からしっかりと意識してやっていくしか方法はないと思っている。ドルトムントでの結果は自分を強くしてくれるし、まだまだ上手くなる、絶対にできるんだと信じてやってきたい」

 香川が戦っている相手は自分自身、もっと厳密に言えばドルトムントで眩い輝きを放っていた「過去の香川真司」となる。セレッソ時代から常に試合に出場し続けてきた男が、一転してリザーブやベンチ外というどん底を味わわされたからこそポジティブな姿勢を保ち、目の前の壁を乗り越えるためのプロセスを見失わずにいられる。  マンチェスター・ユナイテッドでの日々から得た貴重な財産と言えるが、だからと言って現実に甘え続けることもできない。チャンピオンズリーグでは予選リーグを突破しているドルトムントだが、優勝候補に挙げられたブンデスリーガではまさかの不振にあえぎ、降格圏となる16位に低迷している。  先週末に再開されたリーグ戦でも、今シーズンから昇格してきたパーダーボルンに2点のリードを追いつかれてドローに終わった。ドイツから日本を往復した疲れが残っていたのか。香川も精彩を欠いたまま後半13分にベンチに下がっている。

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