5日から、沖縄県のかねひで喜瀬カントリークラブで、ソニー 日本女子プロゴルフ選手権大会が開催される。
今季海外メジャー初制覇を飾った古江彩佳、稲見萌寧、勝みなみ、吉田優利といった、米ツアー主戦場組も出場する中、注目したいのが、8月22日から開催された今季の海外メジャー最終戦、全英女子オープンで日本人選手最上位となる7位タイに入った岩井明愛。
日本ツアー出場は、8月初旬のNEC軽井沢72ゴルフトーナメント以来となる。今季海外メジャーで積んだ経験を力に変えて、初の国内メジャー制覇を狙う。
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■日本ツアー最近8戦で2勝、トップ10が6回
岩井は5月のブリヂストンレディスオープンから好調を維持。NEC軽井沢までの日本ツアー8戦で2勝をあげ、トップ10に6回入っている。
さらに、5月の全米女子オープンと6月の全米女子プロで予選を通過。7月の海外メジャー、エビアン選手権では、優勝した古江彩佳に次ぐ日本人選手2番手となる10位タイ。
全英女子オープンの7位タイと合わせると、海外メジャー4戦を含めた最近12戦でトップ10が8回となる。
昨季は3勝の内2勝が9月の大会。住友生命Vitalityレディス東海クラシック、ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンと連勝した。2021年のステップアップツアー初優勝も9月の大会だった。
相性が良い9月。岩井の安定感に陰りが見える心配は、不要かもしれない。
■全英女子OP SG:アプローチ1位
岩井はショットメーカー。飛距離が出て、高確率でアイアンショットがグリーンをとらえる。昨季のパーオン率は75.3363%で1位だ。
全英女子オープンの、グリーンを狙うショットのスコア貢献度を示すSG:アプローチは堂々1位。世界のトップが集う大会で、グリーンを狙うショットの精度1位、という結果を残した。全米女子オープンでも高い精度を披露。SG:アプローチが4位だった。
昨季出場した米ツアーのSG:アプローチ最上位は、日本開催のTOTOジャパンクラシックで44位。全英女子オープンは予選を通過し、スコアでは11位タイに入ったが、同スタッツは128位だった。
米ツアーで、昨季よりもショットが進化しているといえる結果を残している岩井。
昨季の水準が今季ほどではなかったとして、それでも日本ツアーでパーオン率1位だったということは、その順位は岩井の‟定位置”と言っていいかもしれない。
今季現時点では73.9087%で2位。1位の竹田麗央とは0.9251%差。この差はこれから縮まっていくのではないだろうか。
■3年シードで広がる選択肢
国内メジャーの日本女子プロは、優勝者には3年シードが与えられる。この権利は、条件に該当した翌年度より10年間のうち、任意の年から開始できる。
それは、選択肢が広がることを意味する。国内メジャーを制し、任意の年から開始できる3年のシードがあれば、米ツアーに挑戦しやすくなるのだ。
米ツアーを主戦場にしている、渋野日向子、西村優菜、勝、吉田、稲見(※)は、日本を主戦場にしていた時に国内メジャーを制し、任意の年から開始できる3年シードがある。
今季、原英莉花は、らしさを発揮できていないにも関わらず、米ツアー予選会に挑戦する予定。これは、2020年の国内メジャー優勝によるシード獲得が背中を押していることがあげられるだろう。
岩井は米ツアー志向。近い将来、米ツアー出場資格獲得を目指して予選会に挑戦することを検討している。
自身のゴルフが挑戦するべき段階にきている自負はあるだろう。挑戦をためらっている理由として、米ツアーで戦う経験を積んでから撤退する時のことを考えた時、スムーズに日本ツアーに復帰できるのか、という問題が挙げられるのではないだろうか。
日本女子プロを制して任意の年から開始できる3年シードを獲得すれば、話は一気に進むかもしれない。
かねひで喜瀬カントリークラブでは、07年と17年に男子の日本プロが開催された。優勝したのは、07年が伊澤利光で、17年が宮里優作。両者とも希代のショットメーカーだ。
5日からの4日間が、女子ゴルフ界で希代のショットメーカーと言われる存在になりつつある岩井の、米ツアー挑戦を加速させる時間になる可能性は十分にある。
(※)稲見萌寧は2021年の日本女子プロ優勝者だが、同年の東京五輪銀メダル獲得による5年シードが優先。
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。