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縁あって人は人と繫がっている。一期一会、人との関りも大事にする京都の和菓子屋の四季の御菓子と人情噺が心に響く。「であいもん」

日本に住んでいる人々にとって四季を感じることが出来るのは当たり前ではありますが、ある意味、とても贅沢なことかと思っています。一年の中でしっかりとした変化によって四季を目で耳で体で感じることが出来るのは、日本人に与えられた特権じゃないでしょうか。外国で暮らしたことがない私には日本と外国の四季の違いがよくわかりませんが、よく聞く話で、日本の四季は季節の違いが外国よりはっきりしていて季節ごとの趣きをより感じることができるらしいですね。

日本の文化も昔からこの季節に寄り添って生まれ、親しまれてきたんだと思います。短歌や俳句の楽しさはまさにこの季節を上手に取り入れてなんぼなんだと。食べ物も日本では四季に応じたおいしいものがたくさん登場しますよね。夏の風物詩なんて言い方でもその季節のおいしいものが取り上げられますね。そんな中で、気になるのは和菓子。あまりにも身近すぎて灯台下暗しだったのがこのジャンルです。季節に応じて日本人はそれぞれの和菓子を食べてきました。春には桜餅、夏には水ようかん・わらび餅、秋には月見団子・栗饅頭、冬にはじょうよ饅頭・花びら餅などいろいろありますね。

とても身近なジャンルですが、確実に皆さんも日ごろからこういった和菓子を無意識のうちに思わず購入して口にしていることでしょう。和菓子は私たちが季節を愛でながら味わうことを前提に、職人さんが丹精込めて季節を表現して作られています。今更ですが、この当たり前の文化が日本には昔からあって、世界に誇れるクールジャパンとも言えますし、こうしたものを常日頃から体験できるのは日本人ならではの贅沢の極みなんじゃないかと思います。

今回紹介します作品は、こうした四季折々の和菓子がたくさん出てくる京都の和菓子さんを舞台にしたお話しで、そこでつながった人々の群像劇を垣間見るアニメ「であいもん」です。

やはり、伝統の和菓子は京都でしょうし、本場の和菓子と四季の変化を感じながら、その中で繰り広げられる人間模様はとってもあったかくて、人との関りの心地よさを存分に感じることが出来るアニメです。人との関りがうざったいと思っていらっしゃる人もいるかも知れませんが、表面的にはうざくとも関わり合いを持とうとするその本意は案外違ったものであることも気づかせてくれる作品です。

「であいもん」という言葉は、食材の取り合わせの良さを言う言葉らしく、おそらく、人と人との出会いの良さ・すばらしさにもかけているじゃないかと思います。京都弁のはんなりとしつつも割とストレートな物言いの裏にやさしがいっぱいに詰まったお話にほろりとさせられる、そんな人情噺をぜひ、和菓子と一緒に味わってください。

であいもん1

先輩に教えてもらったギター。一足先にミュージシャンとして上京していった先輩を追いかけ、自らもミュージシャンを目指すため上京した”納野 和(いりの なごむ)”。バンド結成、10年が過ぎても鳴かず飛ばずで解散の危機目前のそんなある日、実家の母より和菓子が届く。実家は京都の和菓子屋”緑松”。へこんだ気持ちが吹き飛ぶほど、実家から送られてきたさくら饅頭は和の心を癒した。その和菓子の包みの中には手紙も入っており、父が入院したとの内容が書かれていた。

実家を継ぐ決心で和は10年ぶりに帰省、京都駅に着く。そこで見知らぬ小学生の女の子から服をつかまれ「パパ」と呼ばれてしまう。振り返ると「だれ?」と反対に女の子に言われてしまい、焦る和をよそに女の子は急いで立ち去ってしまう。どうや人違いのようだった。バスに乗って実家に到着した和は元気に挨拶して、10年ぶりに家の敷居をまたごうとするが、次の瞬間、父からの鉄槌を受け、おもいっきり外に飛ばされてしまう。

父の怒りも収まり家に入れた和。父が入院と聞いて、これからのことを考え、自分がこの店を継ぐために帰ってきたと和は話す。「ろくに修行もしてないもんに跡は継がれへんし、もう跡継ぎはおるさかい」と父が話していると、「ただいま。」と言って一人の女の子が家に入ってきた。その女の子は、先程、駅前で勘違いされた女の子だった。「世の中に似ている人は3人はいるってゆうし、それよりこの方、誰ですか?」女の子は慌てながら恥ずかしそうにそう答えた。

「息子の和や。悪いけど挨拶したってくれるか?」父がそう言うと「息子さんって、この店捨てて出てったきりで、ろくに便りもよこさないっていう・・・。”雪平 一果(ゆきひら いつか)”です。一年ぐらい前から居候させてもらってます。中途半端にお店を捨てて行った人にはお店は任せられません。」とそう答えた。そういうと、敵対心のまなざしを和に浴びせながら一果は席を立った。

着替えてお店に出てきた一果はてきぱきと仕事をこなしており、父が言う通り、まさにお店の看板娘だった。しかし、子供らしくない、大人を頼ろうとしない一果を観て、和は何か釈然としなかった。母が言うには、一果はすでに母親とは生き別れになっていて、一年前に父親と一緒にこの店を訪ねて来た翌日、父親が手紙を置いていなくなってしまい、一人になってしまった一果をうちで引き取ることにしたらしい。そういうことがあってか、一果は他人に頼ることをしないでなんでも一人で背負ってしまうと。何のあとくされもない和に一果の父親代わりになってあげてほしい、と母は和に話す。和はその言葉をかみしめ、一果の父親代わりになることを決意する。  

和菓子屋の朝は早い。修行の身を許された和も翌朝から5時に起床。体力もままならない和は父の監視のもと筋トレからスタート。和は仕事の合間に一果に時折、声をかけるが返答がなく、なかなか打ち解けない日々が続いた。そんなある日、一果あてに1本の注文の電話が入る。電話に出た一果は饅頭100個の注文を受け、満足な表情を浮かべていた。翌朝に饅頭は出来上がり、一果は注文客が来るのを楽しみに待っていた。しかし、閉店間際になってもそのお客さんは来ない。和の母が相手先に確認の電話を入れると、現在使われていません、のアナウンスが流れた。

「一果は気にせんとき。子供だと思ってからかわれたんだろう。しゃあない。」和の父はそう言った。しかし一果はその饅頭の入った手提げ袋をつかんで「私が何とかします!」と言い放った。「子供一人で何が出来るねん。そんなとこ意地張るとこやない。」和がそう言うと「意地やない、責任や!責任果たすのに大人も子供も関係あらへん!」そう言って一果は袋を持って飛び出して行った。連れ戻しに行こうとするみんなを制止して和は言った。「あとは任せとき。」

駅前で必死に饅頭を売ろうと声を張り上げる一果。しかし、誰一人として足を止めるものはいない。時間だけがだた過ぎ去ってゆく。「またいらん子になってしまう。」一果は自分の居場がなくなると思い始めたそんな時「待たせたな。よう一人で頑張った!後は任せとき!」栗饅頭の被り物をかぶった和はギター片手に現れ、そう言った。「ライブの始まりや!」和は軽快にギターを弾きながら饅頭の歌を歌い始めた。 突然の音楽とコミックソングに行きかう人々の足が止まる。相手に合わせたセールストークも手伝って次々と饅頭が売れ始めて行く。

であいもん5

ようやく、全部売り切った和は一果に言葉をかける。「何とかさばけたなあ~。失敗したっていいねん、うちの子やろ。オレからしたらまだひよっこやん。そうや、2個だけ、くすねておいてんねん。」そう言って饅頭1個を一果へ渡した。「720円です。」「しっかりした跡継ぎやなあ。うわあ、うまいなあ。人はうまいもん食べると元気になるんや!」それを聞いた一果は一瞬はっとした表情を浮かべた。「いやあ、最高にうまいよな、うちの饅頭。」「はい。」和と一果が初めて心通わせた瞬間だった。この先、和は一果の父親代わりになっていけるのだろうか?一果はみんなと気持ちを分かち合って過ごしていけるのだろうか?そしていつの日か一果の父は彼女を迎えに来てくれるのだろうか?(第一話)

この作品の主な見どころは大きく二つあります。一つは和菓子と和菓子職人についてです。季節が移り行くにあたり、様々な季節ごとの和菓子が登場しますが、おなじみの和菓子やまだ知らなかった和菓子など色々と出てきて、あらためて和菓子の奥深さを知ることが出来ます。関東と関西での和菓子の違いがあるなんてことも私は知りませんでしたので、ただただ感心させられました。

また、お菓子を作るための様々な材料の段取りや工程など、作り手の裏側もでてきて本当にためになります。こうやって、こんな苦労があって日ごろ何気なく食べている和菓子が出来上がっているのか、「和菓子&職人さんリスペクト!」な気持ちでいっぱいになります。主人公・和がお店で丹精込められて作られた和菓子が売れてゆく様を観て、思わず涙ぐんでしまうという気持ちがちょっとわかるような気もしました。

職人が和菓子を作るシーンを観ていると思わずその手さばきを追って観てしまい、カッコイイと思ってしまいましたね。きれいでおいしい和菓子を量産するためには、自ずと職人さんの繊細で熟練な技が必要であることも納得できるのと同時に、このような仕事もしてみたいなあ、なんて和菓子職人に憧れを持ちたくなる、そんな作品でもあります。

そして、もう一つはここ緑松で働く人たちとこのお店に関わる人々に焦点が当てられた人間模様・群像劇です。日常の中で様々な人々の関りが出てきますが、ストーリーの中で自然な形でさりげなく、ドラマチックなお話が流れていきます。ここがポイントです。自然で・さりげなく・ドラマチックに!なんです。だからいつの間にか知らないうちに感情移入して泣いてしまうんですね。脚本が「のんのんのんびより」シリーズや「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の脚本・シリーズ構成を担当した”吉田 玲子”さんってこともあってのことかとは思います。

オープニングテーマの歌詞にも出ては来るのですが、夢を追いかけている人や恋心を持っている人、恋愛を壊してしまった人、その他にも親子の関係を作り直したい人、大好きな人を待ち続けている人などそれぞれの想いを抱えている人がたくさん登場します。人によって抱えている問題はひとそれぞれで、本人にしかわからないこともたくさんあります。ただ、みんな何かしらの悩みを抱えて生きているんだという事を理解して、つながりを持つ相手に対しては様々な形で寄り添うことはできるのかも知れません。そんなところもぜひ、感じながら観ていただきたいですね。

であいもん2

この作品は、KADOKAWA発行の青年向け月刊漫画誌「ヤングエース」にて2016年5月号より連載中の漫画家・”浅野 りん”さんの同タイトル漫画が原作です。既刊14巻。アニメ化されて2022年4月~6月に全12話が”BS11”にて全国放送されました。インターネットでは”dアニメストア”・”ニコニコチャンネル”・”ABEMA”・”Amazon Prime Video”・”U-NEXT”他で配信されました。監督は”追崎 史郎”さん、シリーズ構成・脚本は「たまこまーけっと」「たまこラブストーリー」「たまゆら」シリーズ、「のんのんびより」シリーズ、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」、映画「聲の形」のシリーズ構成・脚本を手掛けた”吉田 玲子”さん、キャラクターデザインは”渋谷 秀”さん、アニメーション制作は”エンカレッジフィルムズ”。

声優さんは、主人公・納野 和役は”島﨑 信長”(しまざき のぶなが)さん、ヒロイン・雪平 一果役は”結木 梢”(ゆうき こずえ)さんです。島﨑さんが今まで演じてきた代表キャラは、「あの夏で待っている」霧島 海人、「Free!」七瀬 遙、「俺物語!!」砂川 誠、「はんだくん」半田 清、「ソードアート・オンライン アリシゼーション」ユージオなどです。今回の作品はお調子もんで人あたりが良く誰からも好かれるタイプの青年役ですが、京言葉も加えて見事に演じきっております。すがすがしいくらいのこの役柄は彼しかいないのでは?と思わせてくれるぐらいピッタリな印象でした。

一果役の結木さんはメインキャラは今回が初めてのようですが、子供ながらにして1本筋の通った京都の女の子を堂々と演じています。背伸びしている一果、時に見せる子供らしい部分の一果の両方をきちんと魅せてくれています。今後の活躍が非常に期待できる若手声優さんじゃないでしょうか。

他の役柄も皆さん、地に足がついた方ばかりで固められ、キャストの良さが感じられる作品です。京都が舞台の物語なので当然、京都弁必須ですが、皆さんお上手で、脚本以外でもそうした配役の良さが手伝って観る側が作品にきちんと集中でき、作品の完成度の高さがうかがえます。

また、絵がとてもやさしいタッチで良いですね。京都の鴨川をはじめ、神社や京都のお祭りの時期にも訪れて観たいという気にさせてくれます。そしてオープニングとエンディングの作品を包括するようなメロディと歌詞がジャストフィットしていて最高ですね。どこをとっても京都の良さ、そこに住まう人の好さがにじみ出てくる作品です。

オープニングテーマ「菫(すみれ)/坂本 真綾」
エンディングテーマ「ここにある約束/ayahoと曽我 淳一」

人にはそれぞれの人生があってそれらは千差万別ですが、表に見える見えないに関わらず、それぞれの人たちのいろんな人生が交差して人間関係や人とのつながりが出来ていることをこの作品は感じさせてくれます。それぞれの決して薄っぺらくない人生を考えたらその関りを今以上に大切に・大事にしていかないといけませんよね。

偶然ではないお互いの交わりを感じたら、お互いの関りを今日以上、明日以上にもっと楽しくしていきませんか?

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No title

今回は『であいもん』なのですね~。
和菓子屋が舞台というのもなかなかに珍しいところですが、
職場が固定されているからこそ、
様々な視点の人間模様が描かれていて面白かったですね(´∀`)
店舗内だからこそ描ける事、
そして外の人間が関わるから描ける事もあったりして、
その辺りの匙加減もなかなかに良い塩梅だったと思います。

和と一果の関係も良かったですし、
親子になる事はなくても、
お互いに大切な関係というのが伝わってきて、
ああいう関係というのもいいものですね^^

Re: ツバサさん、コメントありがとうございます。

ツバサさん、こんばんは。

ツバサさんも「であいもん」は観ていたんですね。

和菓子限定でスイーツが出てくるアニメは私は知らないですが、
ツバサさんの記憶の中でもそうそうないのですね。

和菓子だけでも観る価値がありましたが(とはいえ
それだけだとJKあたりが主人公でないと持たないかもし
れませんよね)、いろんな人間にスポットを当てて物語が
進行して行くのは良かったと私も思います。

確かにそうですね。職場の人たちばかりではなく、その周りの人たちの
人間模様も描かれていてバランスが良い作品になっていましたね。
小梅さんの話も私的にはすごく良かったです。若かりし頃の恋愛、
その想いを今もお互いが忘れずにいる、素敵な話でした。

和と一果は決して親子にはなれないものの、言い表せられない関係が
そこにありましたね。
ツバサさんが言うように、お互いに大切な関係である事が伝わってきて
心がほっこりと和む良いアニメだったかなって思います。
娘じゃないけど娘みたいな子が身近にいたらいいですね。
面倒見の良いまめなツバサさんなら、絶対「あまえた」にするでしょうね。

それではまた(o^―^o)ニコ

プロフィール

takapon46

Author:takapon46
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
マジンガーZにパイルダ~オン!ヤマトと999の主人公達と一緒に旅していたアニメ世代の私も今は40歳。嘘です。年齢だけは立派な50歳になりました、てへぺろ。40歳を過ぎた頃から再び、アニメの世界へ戻って来まして、今は専ら深夜帯アニメに夢中です。私なりに選りすぐりだと思うアニメを紹介しておりますので、良かったら覗いていって下さいね。

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