今日も暑くて

あと十分で家を出るという時に、ラインの通知音が鳴った。

「自転車でもいい?」

遥子ちゃんからの要望をすぐに承諾して、時間通りに家を出た。

暑さを心配しつつも、ウォーキングへ行こうと約束をしていた。
普段は土手の往復だが、年に何回かはウォーキングの途中にカフェを挟み、ゆっくりおしゃべりをする。通称コメダコースで、今日もそのつもりだったが、やはり暑いと判断した遥子ちゃんから、先程のラインが来た。そう、決して無理をしてはいけない。ウォーキングを中止し、自転車でコメダへ向かう。

六月に入り、段々と暑さを感じるようになった頃、ウォーキングの時間帯を朝から夕方に変更した。”夕方はいいね”と会話を交わしたのも束の間、七月に入り、私からしばらくウォーキングは休むと申し出た。その間、暑さは増していた。

 

「一人暮らしはどうだった?」

娘が一人暮らしを解消することになり、退去する前の最後の七日間を娘の家で過ごしたのは、つい先日のこと。初めてのプチ一人暮らしを体験した。
一人暮らしはどうだったかの遥子ちゃんの問いに、ワクワクを感じさせる、期待するような回答は持ち合わせていなかった。
普段できないことに没頭しようと決めていたのだが、なかなかそうもいかなかったのだ。ただいろいろとゆっくり考えることはできた。

一人暮らしを語る資格はないものの、一人暮らしから見える景色を感じ取ることはできた。一人の快適さと静けさ、家族の役割分担と賑やかさ、どちらもメリットデメリットがあって、欲張っていいとこ取りをした生活がしたいものだと感じた。

ベッドに横たわると、見上げる天井が高かった。
窓から入る明るい陽射しのおかげで、朝から照明をつける必要もない。湿気とは無縁の部屋なのもいい。

一人暮らしとはまた別の視点から、”住まい”について考えたりもした。
転勤族で育った遥子ちゃんのように、やむを得なく引越を何度も経験することはあっても、自分の意志でころころと住まいを変えることなど、そう簡単にできることではない。

私にとって、家族にとっての快適さを追求した家に住みたいし、その快適さは、タイミングによっては内容が異なったりするのだろうか、住まいの費用は何にせよ、随分と負担になるな、などと妄想にふけりながら、この先の生活を想像した。

 

とにかく、一人暮らしならぬ一人部屋の、この狭い空間に詰め込まれた荷物を、今日も汗だくになりながら減らしていく。

 

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