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三条通り 戦前の欧風ビル取り壊しへ築80―90年、老朽化で維持困難銀行から公民館、飲食店へ 役目変え親しまれる
奈良市の三条通りにある戦前の欧風ビルが、近く取り壊される見通しとなった。老朽化で将来、倒壊の恐れがあるなど維持が困難になったためという。大正の後半から昭和の初めごろの建築とみられ、銀行から生命保険会社、公民館、飲食店へと、時代とともに役目を変えながら市民に親しまれてきた。 同市角振町の3階建てビル。建築面積は100平方メートルほど。石造り風の外壁やアーチ型の窓、外壁の幾何学模様のレリーフなどが特徴の近代建築だ。現在は空き家になっている。 ビルを所有する酒造会社今西清兵衛商店(同市福智院町)の今西清悟会長(79)によると、祖父の代に購入したもので、記憶ではそれまで銀行として使われていたという。記録がなく正確な建築時期は分からないが、登記簿によると、土地は1920(大正9)年に帝国実業貯蓄銀行の所有に、そして1929(昭和4)年に今西家の所有になっていることから、少なくとも80―90年は経過しているとみられる。 同会長によると、祖父は自分で商売に使うつもりだったが、その後の戦争の影響などで果たせず、生命保険会社に貸した。戦後は、1960(昭和35)年から1973(同48)年まで市に貸し、市で最初の公民館となる三条公民館として使用された。その後は、飲食店などに貸してきたが、老朽化が進み、使用を続けるのは危険として、おととし退去してもらった。 市中心街の三条通りに残る戦前の近代建築のビルは、ほかに南都銀行本店(大正15年、登録有形文化財)ぐらいで、同ビルは当時の三条通りの面影を残す希少な建物になっている。市教育委員会文化財課職員の山口勇さんは個人の見解として「この時代の建物一般にあてはまることだが、一定の価値はあるだろう」と話す。 今西会長は修理について建築業者に相談したこともあるが、採算が合わないと説明されたといい、「古いビルへの郷愁の思いや、祖父が縁あって求めたものを地域の人たちの役に立つような方法で生かしたいとの思いで大事にしてきた。しかし、建物にも寿命がある」と話している。 ビルを取り壊した後、約400平方メートルある敷地(一部は駐車場に貸している)の用途は未定という。続報へ |
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