対訳
登場人物
- 皇帝オーバーオール(テノール)
- ラウドスピーカー(バリトン)
- ひとりの兵士(テノール)
- 男の子のような髪をした少女(ソプラノ)
- 死神(バリトン)
- ハルレキン(テノール)
- 鼓手(メゾソプラノ)
あらすじ
- ラウドスピーカーの語るプロローグ、何年も戦争が続き、それを指揮する皇帝は宮殿に閉じこもり、誰も姿を見たことがない。人々が人生を楽しむことも、ちゃんと死ぬこともなくなってしまい、「生」の象徴のハルレキンも、「死」の象徴の死神も仕事を放棄する。
第1場
- ハルレキンと死神は「生」と「死」があった時代を懐かしむ。ラウドスピーカーが、皇帝が万人の戦争を布告したと伝えると、死神はもう自分の出番はないと剣を折る。
第2場
- 処刑したはずの人間が死なないので、皇帝は、永遠に死なない秘薬を与えたのだと宣言する。
第3場
- 戦場で、少年兵(実は少女)とひとりの兵士が出会い、戦うが、どちらも死なない。二人は武器を放棄して、抱き合い、戦争のない世界を夢見る。
第4場
- 終わらない戦争で、国じゅう大混乱に陥り、皇帝は気が変になる。死ぬことができたら、苦しみから逃れられるのに。死神は、皇帝が最初に死を受け入れるなら戻って来てもいいと言い、皇帝はそれを受け入れる。皇帝は別れを告げ、死神に手を引かれていく。
- 最後の「皇帝の告別」はⅠとⅡの二つのバージョンがある。
訳者より
- 「アトランティスの皇帝」はいわゆる頽廃音楽のひとつとして知られている。頽廃音楽とはナチスの時代に、ユダヤ人の手によるとか、時代に挑戦的とかの理由で演奏を禁じられた音楽のことである。1970年代以降、復活して演奏されるようになっている。
- 作曲者のヴィクトル・ウルマンも台本を書いたペーター・キーンもユダヤ人で、テレージェンシュタットの収容所でこの作品を作った。テレージェンシュタットはナチスがプロパガンダのために作った収容所で、囚人労働の代わりに芸術家として活動することができた。が、後に二人ともアウシュヴィッツにおくられ、亡くなっている。
- 台本からは、当時の政治に対する批判がいろいろ読み取れる。音楽はジャズやブルースの影響を受け、クルト・ワイルを思わせるところがある。
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最終更新:2021年02月27日 09:50