ロールス・ロイスのSUV 押し出し強く、乗り心地はすーっと「カリナン・シリーズⅡ」
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世界中にロールス・ロイスがどれだけあるのか。乳母車のロールス・ロイス、ゴルフクラブのロールス・ロイス、ネクタイのロールス・ロイス、さらにオーガニックコットンのロールス・ロイスにいたるまで、ネット検索すると、じつにおもしろい。
それだけ多くのひとが、ロールス・ロイスという英国の高級車ブランドの価値を認めているってことだろう。で、私はこのあいだ、SUVのロールス・ロイス、いやちがった、ロールス・ロイスのSUV「カリナン・シリーズⅡ」に乗る機会に恵まれた。
若返りに寄与したSUVシリーズ
カリナンは、ロールス・ロイスが初めて手がけたSUVとして2018年に登場。聞くところによると、カリナンは、ロールス・ロイスのオーナーの平均年齢を、それまでの56歳から43歳へと若返らせるのに、おおいに寄与したんだそうだ。
ロールス・ロイスには、ショーファー・ドリブンといって、運転手つきで乗るモデルもあるけれど、カリナンの場合、9割を超える割合で、オーナーが自分でハンドルを握っているという。
それ、よくわかる。と、私は、イビサ島でカリナン・シリーズⅡをドライブして感じたのだった。
カリナンのシリーズⅡはどこが変わったのか。具体的には、フロントマスクとリアの一部のデザインが変更されたことをはじめ、23インチと大型化したロードホイールを装着し、内装のダッシュボードまわりのデザインと機能のアップデート、そして、シート地など室内装備が豊富になったことなどが、特徴としてあげられる。
「フロントマスクには縦に長いデザインのLEDによるシグネチャーライトを設けて、大きなフロントグリルとともに、建築物のようにそそり立っているイメージを強調しています」
ロールス・ロイス・モーター・カーズで、エクステリアデザインを担当したヘンリー・クローク氏は説明する。たしかにグリルの呼称は「パンテオン」(ローマの万神殿)であるな。今回これによって、重厚感が増した印象だ。べつの言葉でいうと、押し出しが強くなっている。「モーターウェーで後ろから迫ってこられると先行車のドライバーは焦るかもしれませんね」と、ちょっと笑いながら同氏。
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420kWの最高出力と850Nmの最大トルクを発生する6.75リッターV型12気筒エンジンは、従来のシリーズⅠとおなじ。でも私は、2018年のデビューのときに米国で乗ったときと比べると、さらに印象がよい。きっと毎年のように改良を重ねた結果ではないか。運転してより楽しいクルマになっていると感じたのだ。
「魔法のじゅうたん」の乗り心地
エフォートレスというのがロールス・ロイスが自社製品のモットーとして使う用語。クルマに乗っているとき、無理なく、たいていのことが出来る、という意味だ。ハンドルを動かす操舵(そうだ)は軽く、アクセルペダルを軽く踏み込めば力強く走り、ドアやトランクリッドの開閉もボタンで行える。
大型ボートがいつも引き合いに出されるのも、ロールス・ロイス車の特徴だ。デザインしかり、乗り味しかり。すーっと走り、すーっと曲がり、すーっと止まる。イビサのハイウェーでちょっと速度を上げてみたところ、同乗者から「え? いまそんな速度」と驚かれた。それぐらい、静かなのだ。
ロールス・ロイスがよく使う単語が「マジック・カーペットライド」。ふわりと走るという意味なので、空飛ぶじゅうたん、と私は訳していたら、魔法のじゅうたんでよいのでは、とドラクエ世代の知人から指摘された(意味わかりますか)。
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それはともかく、カリナン・シリーズⅡのサスペンションシステムは、じっさい、路面の突き上げをていねいに吸収してくれる。車体の重さも乗り心地のよさに貢献。やっぱり、すーっとというかんじで、走っていけるのだった。
ロールス・ロイスのオーナーの若返りについて先に触れたが、もうひとつの立役者が「ブラックバッジ」。2016年にラインアップに設定されたスポーティー仕様だ。カリナンではシリーズⅠにも設定されていた。
イビサでも、ブラックバッジ・カリナン・シリーズⅡに乗るチャンスがあった。たしかに、標準モデルに対してよりしっかりしている印象だ。足まわりがすこし固められて、ハンドルを切ったときの操舵力も少々重め。一般的なクルマの操縦感覚からすると、ブラックバッジモデルのほうがしっくりくるかもしれない。
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ロールス・ロイスは12気筒エンジンにこだわる。力がたっぷりあって、加速していくときに“品”のようなものを感じさせて、とてもよい。でも、このご時勢なので、気筒数を減らしてモーターでカバー、という可能性もあるのだろうか。
「ハイブリッド(を出す可能性)はないですね」。ロールス・ロイス本社でプロダクトスペシャリストとしてカリナン・シリーズⅡにかかわっているケンザ・サーディ氏は言う。「次はいっきにピュアEVになるでしょう」。
じっさい、この連載でも以前とりあげたとおり、スペクターというピュアEVがすでに走り出している。好むと好まざるとにかかわらず、新しい時代がそこまで来ているのだ。
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目立つという点でも、カリナン・シリーズⅡはなかなか興味深い。英語だとアンダーステーテッド、控え目であることをよしとして、少なくとも外板色は目立たない色を選ぶオーナーがいる。いっぽうで、目立ちたいひとがいる。今回はそこにもしっかり目配りがされている。へー、ロールス・ロイスがねえと、私などは妙に感心してしまった。そんな仕様があるのだ。
日本での価格は、「カリナン・シリーズⅡ」が46,454,040円、「ブラックバッジ・カリナン・シリーズⅡ」が54,154,040円(ともに税込み)。たいていのユーザーは、内外装に特別注文を入れてくるそうで、そうなると、価格はさらに上がる。ぜいたくな世界は健在なのだ。
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【スペックス】
Rolls-Royce Cullinan SeriesⅡ(Black Badge Cullinan SeriesⅡ)
全長×全幅×全長=5355×2000×1835mm
ホイールベース:3295mm
車重:2725kg
6750ccV型12気筒 全輪駆動
最高出力:420kW(441kW)、最大トルク:850Nm(900Nm)
写真=Rolls-Royce Motor Cars
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