レンタル終焉時代に成長続ける「ゲオ」。ユニクロに並ぶ、中古販売のセカンドストリートが好調なワケ

トータルリユース

セカンドストリートの「トータルリユース」業態の店舗。

撮影:荒幡温子

NetflixやAmazonプライムなどの動画配信サービスの台頭により、かつてのようにレンタルビデオ店へ頻繁に足を運ぶことも少なくなった。

そんな時流にのまれることなく成長を続けるのが、レンタルビデオ大手・ゲオのゲオホールディングス(以下、ゲオHD)だ。

2023年3月期の売上高は前期比12.7%増の3773億円と4期連続の増収。売上高の半分にあたる約1996億円は中古品販売の「リユース事業」が占める。

ゲオグループのリユース事業を牽引するのが、衣料品を中心に取り扱う「2nd Street(以下、セカンドストリート)」だ。

2023年5月末の段階で国内店舗数は800店舗を超えユニクロと並んでいる。なぜセカンドストリートはここまで好調なのか?その理由を探った。

地産地消のビジネスモデル

アウトドア専門店

セカンドストリートのアウトドア専門店「セカンドアウトドア」(船橋14号店)。

撮影:荒幡温子

セカンドストリートの最大の特徴は、「9種類にも及ぶ店舗フォーマットの幅広さ」にあるとセカンドストリート事業・ゼネラルマネージャーの越塚隆行氏は語る。

あらゆる分野の商品を買取・販売する「フルスペックリユース」「トータルリユース」をはじめ、アパレルに特化した「アパレルリユース」、都心型セレクトショップ「ユーズドセレクト」、ラグジュアリーブランドに特化した「ブランド専門店」。さらに、「アウトドア専門店」、「楽器専門店」、おもちゃやフィギュアを扱う「ホビー専門店」、加えて「買取専門店」と、出店地の顧客ニーズを見極めて店舗フォーマットを検討しているという。

販売サイクルもいたってシンプルだ。オープン時を除き、基本的には店舗で買い取ったものは店舗で販売し切る、地産地消のシステムを採用する。

店舗によって商品ラインナップが異なる特性から、古着好きの一部のZ世代の間では、郊外の大型店を巡る「セカストディグ」「セカスト巡り」といった“ブーム”が自然発生。TikTokに投稿された中には、120万回再生を超えたものもある。

2000年代から新たな事業の柱を模索

ゲオHD事業別売上高

2023年3月期商品別売上高。リユース事業の売り上げのうち、衣料品などのリユース系が過半数を占める。スマホ・タブレット等の中古通信機器のメディア系(688億円)の約2倍の規模だ。

出典:ゲオホールディングス

ゲオHDでは、セカンドストリート単体の売り上げデータは公表していない。

ただ、リユース事業全体のうち、セカンドストリートが強みを持っている衣料品などが含まれるリユース系の2023年3月期の売り上げは、前期比17.2%増の1308億円。過去数年分の決算資料を見ても、安定して同レベルの成長を続けてきた。

アウトドア用品

国道沿いの郊外店舗。店頭には、アウトドアアイテムを置く。

撮影:荒幡温子

今やゲオHDの主力事業の一つにまで登り詰めたと言っても過言ではないセカンドストリートだが、かつてはゲオとは別の会社だった。2008年にゲオの連結子会社となり、2010年に完全子会社化して傘下に加わったという経緯がある。

「(ゲオでは)2000年代からレンタル事業に変わる新業態を模索していました」 (広報担当者)

そこで目をつけたのが「リユース」市場だった。

もともとゲオでは、ゲーム機やゲームカセット、CDなどの中古商品(メディア系のリユース商品)を販売していた。親和性の高いリユース事業を拡大する流れで、2002年に家電リサイクルショップ・Oki-Dokiなどを経営する「そうご電器」を買収している。

2005年3月期の有価証券報告書を見ると、リサイクル事業(今のリユース事業全体:メディア系含む)の販売実績は約420億円と、当時からレンタル事業(約400億)と同規模の事業だった。ゲオと言えば「レンタル大手」としての印象が強いが、昔からメディア系を中心としたリユース事業は主力事業だったわけだ。

その後、セカンドストリート(当時:フォーユー)を連結子会社化した2009年3月期からは、事業セグメントにメディア系を「除く」リサイクル事業(その後リユース事業に改称)を新設。初年度の販売実績、約142億円から5年後の2014年3月期には衣料品・雑貨・家電製品などを中心に取り扱うリユースショップ(メディア系除く)※の販売実績だけで約284億円と2倍にまで拡大。その後成長は加速し、2023年3月期には1300億円を超える売り上げを叩き出す、新たな主力事業となったのだ。

※有価証券報告書上での事業区分の名称が変わっています。

店舗拡大の最大の理由は「タッチポイントを増やすこと」

店内の様子。

セカンドストリートの店内。中古商品のマイナスなイメージを払拭するべく、明るく清潔な店舗設計を意識している。

撮影:荒幡温子

2023年5月末現在、全国に805店舗展開しているセカンドストリートは、2018年に発表した「2023年800店舗構想」に沿って毎年50店舗前後の出店を進めてきた。

越塚氏は「タッチポイントを増やすことで、顧客が持ち込みやすい環境を作る」と、店舗数を増やすことに注力する理由を説明する。

越塚氏・話しているところ。

セカンドストリート事業部・ゼネラルマネージャーの越塚隆行氏。

撮影:荒幡温子

この間、2010年代には、メルカリなどのフリマアプリも台頭してきた。当時は、セカンドストリートのようなリサイクルショップとフリマアプリは、ライバル関係になり得るとも言われていたという。

ただ越塚氏は、「(フリマアプリは)リユース事業の裾野を広げてくれた存在」と認識していると語る。

「(リサイクルショップは)カウンターに持っていけば、交渉もなくストレスなく手続きが済みます。フリマアプリを利用されてる方も、我々のようなリサイクルショップを利用されていて、今は上手に使い分けをされているのではないかなと思います」

ここ最近では、物価高によるリユース需要の高まりや、古着ブームも追い風になっているという。

矢野経済研究所の発表によると、2019年の国内のファッションアイテムのリユース市場は7200億円。2016年の市場規模が4600億円だったのに比べると3年で1.5倍になった。

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