当たり前のことを言語化していく。
反復練習の効用はサチる
前動続行という言葉があります。これは軍事の用語ですが、従来通りの行動を繰り返すことを意味します。
同じ行動を繰り返す行為、反復練習はナレッジベースで都度都度思考を介していた行動を無意識的に反射で行えるスキルベースへと発展させることができるため、動作の速度と精度を高める効果が見込めます。
例えば兵隊さんが同じ動作をひたすら訓練するのはいざという時に反射的に必要な行動を行えるよう身体に叩き込むためですし、学生が練習問題を何度も解くのは学んだ内容を身に付けるためです。脳の構造上、反復練習は学びを心身に取り込むため不可欠なものだと言えます。
しかしながら、前動続行を継続していれば無制限に成長し続けるかと言えば、そうはなりません。経済学で言うところの限界効用逓減の法則、理工系で言うサチレーションに至ります。前動続行によって得られる効用は必ず逓減していき、所定の値に漸近したところでそれ以上の成果が見込めなくなることは必然です。
これは考えるまでもなく当たり前のことで、前動続行は所定の成果へ到達するための動作だからです。小学生が算数ドリルを繰り返し練習していればそのドリルの範囲内の問題は解けるようになりますが、どれだけ繰り返したとしても中学生の問題が解けるようになるわけではありません。
成長の意味
成長とは大きく言えば自己変革です。学習によって自らを作り変えていく行為だと言えます。少しずつ変化があるからこそ伸び続けていくのであって、ただ同じことを繰り返せばいいわけではありません。変化を観察し、出力をフィードバックし、常に入力を変化させ、目指すべき成果のポイントを高めて前進していく必要があります。
つまるところ、辞書的な意味での継続とは「前から行っていることをそのまま続けること」であり、「継続は力なり」を単純に解釈すると「前動続行を続けていれば成果が得られる」と誤解しかねないものですが、継続すべきは前動続行ではなく連綿と続く自己変革そのものです。
継続は力なりとは、足を動かし続けることではなく、足を前に出して歩き続けることを意味します。その場で足踏みをしていても前には進んでいきません。
結言
反復訓練を否定しているわけではありません。武道の達人が初歩的な技こそを大切にして訓練を継続しているように、土台となる重要な行動を継続することは大切なことです。
ただ、その武道の達人が初歩的な技だけを学び続けたから達人になったわけではないことは考慮する必要があります。初歩的な技の上に高度な技術をさらに学んで積んできたからこその達人であり、同じことだけを繰り返してきたわけではありません。
つまり、成長の継続、変化の継続こそが本質的に見習うべきところであり、それこそが「継続は力なり」だと考えます。